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4月27日(金)
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疾患

  • 拡張型心筋症とは<定義>
  • 特発性心筋症は原因不明の心筋疾患であり、心筋が著しく肥大をする肥大型心筋症、心臓が風船のように拡がって高度な収縮不全が起こる拡張型心筋症、心臓の大きさや心筋の厚さは変化せずに心筋が硬化してしまう拘束型心筋症に大別されます。特に拡張型心筋症は、重篤なうっ血性心不全や治療抵抗性の不整脈を起こす予後不良の疾患であり、原因の解明や有効な治療法の確立が急務と考えられてきました。
    2006年のアメリカ心臓協会(AHA)の新分類では、心筋症はまず、主な病変が心臓にある「原発性心筋症」と全身疾患の心筋病変である「二次性心筋症」に分けられ、原発性心筋症は、更に遺伝性のもの、後発性のもの、それらの混合型の3つに分類することができるそうです。肥大型心筋症は遺伝性の、拡張型心筋症や拘束型心筋症は混合型の疾患と考えられています。
    (参照:『難病の診断と治療方針1改定版』疾病対策研究会 2003、P.272、『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.5、P.16-18)
  • 拡張型心筋症とは<疫学>
  • 2002年に我が国で実施された大規模な疫学調査によると、人口10万人に対して拡張型心筋症の有病率は14.0人。欧米においては、1985年にイギリスにおいて8.3人、1986年に米国において11人でした。また、厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班の1998年の統計では男女比は約2.6:1で男性に多く、地理的には全国的に同様に分布していて、特に多発している地域は見つかっていません。
    (参照:『難病の診断と治療方針1改定版』疾病対策研究会 2003、P.272、『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.9-10)

    ◆自立率
    厚生省特定疾患・難病のケア・システム調査研究班『平成7年度特定疾患患者療養生活実態調査報告書』のデータを基に、厚生労働省が特定疾患の患者さんの日常生活における自立状態を推計していますが、それによると、平成10年度の特発性拡張型心筋症の患者10,242人の自立率は90.5%、一部介助率は6.9%、全面介助率は2.6%でした。
  • 拡張型心筋症とは<成因>
  • 従来、心筋症の原因は不明でしたが、現在では少なくとも一部の症例については、遺伝子異常や免疫異常がその原因とされています。肥大型心筋症患者さんの50~70%、拡張型心筋症患者さんの20~35%に家族性の心筋症が認められていますが、これら患者さんの遺伝子を解析することによって、ここ15年間で両心筋症の原因遺伝子の解明が進むようになりました。心筋ミトコンドリア遺伝子の変異によって肥大型心筋症が起きたり、肥大型心筋症から拡張型心筋症へ移行する病態が起こることも明らかにされています。拡張型心筋症では、従来からその有力な病因の1つとして心筋炎あるいはウイルス感染を基礎とした免疫学的機序を介する心筋障害の関与が指摘されてきましたが、現在、少なくとも一部の症例では心筋炎と同様の自己免疫的な心筋障害機序によって拡張型心筋症の病態が形成させることが明らかになっています。
    (参照:『難病の診断と治療方針1改定版』疾病対策研究会 2003、P.272-273、『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.24)
  • 拡張型心筋症とは<臨床症状>
  • 拡張型心筋症の症状は、呼吸困難、易疲労感、動悸、不整脈、胸部圧迫感、胸痛等です。
    (参照:『難病の診断と治療方針1改定版』疾病対策研究会 2003、P.273)
  • 拡張型心筋症とは<治療>
  • 拡張型心筋症の治療は、心不全に対する対症療法が主体となります。その治療目標は、1.心筋リモデリングの進展抑制、2.慢性心不全症状・運動耐容能の改善、3.慢性心不全の急性増悪の予防、4.生命予後の改善の4点です。これらの目標は個々に独立したものではなく、互いに関連しており、その達成のために、一般的な生活指導とともに薬物療法、さらに非薬物療法が行われます。
    1.心筋リモデリングの進展抑制
    心臓に圧負荷、容量負荷などの力学的負荷がかかると心臓は個々の心筋細胞を肥大させるとともに全体としてもその形態を変化させ適応しようとします。しかし過度の負荷が長時間かかるとその適応反応は破綻し心不全となります。この負荷に対する適応から破綻までに起こる一連の形態的・機能的な変化をリモデリングといいます。拡張型心筋症では典型的には左室の壁厚が正常なのに内腔が拡大してより球形に近くなります。壁厚に対する内径の比が大きくなるので壁ストレスが増大し、さらに左室の拡大を招くという悪循環に陥ります。個々の心筋細胞のサイズは肥大から萎縮までさまざまですが、目立つのは心筋細胞の脱落と線維化です。仮に無症状の段階であっても、この心筋リモデリングの進展を抑制しなければなりません。
    心筋リモデリングの進展には、(1)過剰な血行動態負荷(前負荷、後負荷、心拍数異常)、(2)神経体液性因子の活性化、が関わっています。そこで、拡張型心筋症の最も早い段階から、「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬」が使われます。この他にACE阻害薬と同様な効果を示す「アンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)」や、心筋線維化に関係しているアルドステロンを抑制する「抗アルドステロン薬」、交感神経の活性化を抑制する「ベータ遮断薬」もリモデリング抑制効果が認められています。
    2.慢性心不全症状・運動耐容能の改善
    拡張型心筋症に伴う慢性心不全の症状としては、左房圧上昇及び低心拍出量に基づく左心不全症状と、右心負荷による末梢浮腫、肝腫大などの右心不全症状が見られます。初期の拡張型心筋症では安静時には無症状ですが、労作時に息切れが起こります。これは心臓の左房圧が上昇して肺がうっ血し、呼吸が困難になるからです。これらの臓器うっ血による症状には利尿薬・血管拡張薬を主体とする治療が行われます。
    3.慢性心不全の急性増悪の予防
    我が国の疫学調査では、入院治療を行った慢性心不全患者のうち35%が1年後までに心不全の増悪によって再入院しているそうですが、欧米で試みに電話や訪問によって症状のモニタリングや服薬・食事に関する患者教育を行ったところ、再入院率が半減したという報告がされています。心不全増悪の誘因を検討すると、塩分・水分制限の不徹底が最も多く、過労、治療薬服用の不徹底、精神的ストレスが上位を占めていました。塩分の制限は、重症心不全においては1日3g以下、軽症心不全では7g以下。水分の制限は、重症心不全で希釈性ナトリウム血症をきたした場合に必要になります。臓器うっ血を有する急性増悪時には安静が必要になりますが、長期の入院や患者自らの運動制限によって運動耐容能が低下することを避けるため、運動負荷試験に基づいた運動処方に則り、体を動かすことが求められます。
    再入院予防効果が確認されている薬剤としては、ACE阻害薬、ARB、ベータ遮断薬、ジギタリス、スピロノラクトンがありますが、これらの再入院減少効果は20~35%であり、患者管理の効果は薬物治療の効果と同等あるいはそれ以上と考えられています。
    4.生命予後の改善
    生命予後の改善には、慢性心不全と致死性不整脈に対する治療が重要になります。近年の大規模臨床試験の結果、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の抑制薬が生命予後を改善することが証明されています。つまり、ACE阻害薬、ARB、抗アルドステロン薬も慢性心不全に有効とされています。短期的には血行動態を悪化させるベータ遮断薬は、長期的には心不全予後改善効果が顕著であるという大規模臨床試験の結果が上がっています。
    慢性心不全の急性増悪時にはうっ血解除のため利尿剤を第一選択に利用し心臓の負荷を減らすべく血管拡張薬を用います。静脈系には硝酸薬・亜硝酸薬が、動脈系にはACE阻害薬が、両者にはニトロプルシッドやカルペリチドが作用します。更に、低血圧やショック時には強心作用を持つカテコールアミン類、強心作用と末梢血管拡張作用を有するホスホジエステラーゼ(PDE)3阻害薬も使われます。
    また、致死性不整脈が発症した際には、直流通電によって心拍のリズムのコントロールを回復させます。心拍数コントロールの第一選択薬はジギタリス製剤で、陰性変力作用のあるベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬は心不全増悪期には避けた方がよいといわれています。心拍のリズムコントロールを維持するために抗不整脈薬として有効性が示されているのはアミオダロンだけです。
    これまでのような一般療法や薬物療法によっても治療効果が上がらず、症状が重症から難治性へと移行する状況下で行われる治療としては、ペースメーカー治療、睡眠時無呼吸に対する夜間酸素療法、免疫吸着療法、左心補助人工心臓、左室形成術(バチスタ手術)、心臓移植などがあります。
    (参照:『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.203-208)
    ペースメーカ治療は、心臓の収縮が不均一な症例に右心室と左心室をそれぞれタイミングよく刺激することによって心臓の働きを効率よくする治療で、心臓再同期治療と呼ばれています。心不全の患者さんは睡眠中に無呼吸を合併することが多く、夜間に酸素投与を行ったり、マスクによる陽圧呼吸を行うことで心不全の改善が得られる事がわかってきました。免疫吸着療法は、拡張型心筋症の患者さんの血液中に心臓を攻撃する抗体が検出されることから開発された治療です。透析と同じ原理でこのような抗体を取り除くべく、「榊原記念病院」などで臨床応用が開始されています。左室形成術は大きくなった心臓を一部切除することによって心臓を小さくするという治療です。細胞シートを用いた再生医療も大阪大学を中心に臨床応用されています。あらゆる手を尽くしてもポンプ機能が維持できなかったときには補助人工心臓の装着が必要となります。一時的な補助で離脱することも可能ですが、通常このような状態になると心臓移植を待機することになります(詳細は非薬物治療・外科治療の項を参照)。
  • 拡張型心筋症とは<予後>
  • 以前、拡張型心筋症は、重篤なうっ血性心不全や治療抵抗性の不整脈を起こす予後不良の疾患と思われていましたが、拡張型心筋症の5年生存率は1980年代の50%台から現在では80%程度になっています。その背景にはACE阻害薬とベータ遮断薬の処方率の向上や、近年の画像診断の進歩によって多くの患者さんが軽症の時点で診断されるようになり、適切な疾患管理が初期から可能になった事があげられます。ただ、拡張型心筋症の予後にはかなりのばらつきがあり、薬剤に反応なく進行性の経過をたどり、補助人工心臓や心臓移植の適応となる予後不良例もあれば、ベータ遮断薬により逆リモデリングが得られ良好な経過をたどる例もあります。ベータ遮断薬による予後改善は左室駆出率低下症例においてより顕著で、家族性の症例は孤発例に比べて予後不良とする報告が多くなっています。
    (参照:『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.10-12)
  • 拡張型心筋症とは<ケア>
  • 拡張型心筋症の予後は著しく改善していますが、重症例での予後はなお不良であり、心臓移植が最終的な治療であることには変わりありません。本症と診断された場合、「病状の進行を遅らせること」が最良の治療となります。そのため、専門医の助言の下、適切な治療と生活のケアが必要になります。塩分を控えた食事をとったり、心臓を酷使することを避けつつ適度な運動をしたりと、生活に様々な制約がつきますが、ストレスを上手に解消しながら、生きていかなければなりません。
  • 診断基準
  • 1.定義
    特発性心筋症とは、原因不明の心筋疾患をいいます。
    以下の疾患は特定心筋疾患specific heart muscle disease(二次性心筋疾患 secondary myocardial disease)として別に扱われます。
    (1)アルコール性心疾患、産褥心、原発性心内膜線維弾性症、(2)心筋炎(原因の明らかなもの、不明のものを含む)、(3)神経・筋疾患に伴う心筋疾患、(4)結合組織病に伴う心筋疾患、(5)栄養性心疾患(脚気心など)、(6)代謝性疾患に伴う心筋疾患(Fabry病、ヘモクロマトーシス、Pompe病、Hurler症候群、Hunter症候群など)、(7)その他(アミロイドーシス、サルコイドーシスなど)
    2.除外疾患
    特発性心筋症の診断に当たっては、以下の疾患による心筋異常を除外しなければなりません。
    リウマチ性心疾患、心奇形、高血圧性心疾患、虚血性心疾患、内分泌性心疾患、貧血、肺性心
    (注)二次性に房室弁閉鎖不全を合併することがあります。高壮年齢者では、虚血性心疾患との鑑別に注意を要しますが、両者の合併例も存在します。
    3.拡張型心筋症の基本病態
    心筋収縮不全と左室内腔の拡張
    4. 拡張型心筋症診断の参考事項
    (1)自覚症状
    呼吸困難、動悸、易疲労感、胸部圧迫感
    (2)他覚所見
    浮腫、不整脈
    (3)聴診
    3音、4音、奔馬調律、汎収縮期雑音(僧帽弁閉鎖不全による雑音)
    (4)胸部X線
    心陰影の拡大
    (5)心電図
    ST-T異常、心室性不整脈、QRS幅の延長、左房負荷、左室側高電位、肢誘導低電位、異常Q波、左軸偏位、心房細動
    (6)心エコー図
    左室径・腔の拡大と駆出率の低下(びまん性の収縮不全)、僧帽弁B-B’step、経僧帽弁血流波形の偽正常化
    (7)冠動脈造影
    びまん性の収縮不全の原因となる冠動脈病変を認めない。
    (8)心筋シンチグラム
    欠損像の出現や心筋灌流低下を高頻度に認める
    (9)MRI
    左室径・腔の拡大と駆出率の低下(びまん性の収縮不全)を認める
    (10)運動耐容能
    最大酸素摂取量および嫌気性代謝閾値(AT)の低下を認める
    (11)心内膜下心筋生検
    特異的な組織所見はないが、種々の変性像や高度の線維化を認める
    (12)家族歴
    家族歴が認められることがある
    5.診断時の注意
    ミトコンドリアDNA、心筋ベータ-ミオシン重鎖遺伝子、ジストロフィン遺伝子などの異常によって、拡張型心筋症の病態を示すことがあります。
    (参照:厚生労働省「特定疾患治療研究事業における認定基準」)
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