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10月19日(金)
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疾患

  • 定義・概念
  • 特発性心筋症は原因不明の心筋疾患です。心筋が著しく肥大をする肥大型心筋症、心臓が風船のように拡がって高度な収縮不全が起こる拡張型心筋症、心臓の大きさや心筋の厚さは変化せずに心筋が硬化してしまう拘束型心筋症に大別されます。
    2006年のアメリカ心臓協会(AHA)の新分類では、心筋症はまず、主な病変が心臓にある「特発性心筋症」と全身疾患の心筋病変である「二次性心筋症」に分けられます。
    原発性心筋症は、更に遺伝性のもの、後発性のもの、それらの混合型の3つに分類することができるようです。肥大型心筋症は遺伝性の、拡張型心筋症や拘束型心筋症は混合型の疾患と考えられています。
    2005年に厚生労働省難治性疾患克服事業特発性心筋症調査研究班が提示した、肥大型心筋症の基本病態は次の通りです。

    肥大型心筋症は、明らかな心肥大をきたす原因なく左室ないしは右室心筋の心肥大を起こす疾患であり、不均一な心肥大を呈するのが特徴である。また、通常、左室内腔の拡大はなく、左室収縮は正常か過大である。心肥大に基づく左室拡張能低下が、本症の基本的な病態である。
    ・左室流出路に狭窄が存在する場合、特に「閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy; HOCM)」とよぶ。
    ・肥大部位が特殊なものとして、「心室中部閉塞性心筋症(midventricular obstruction; 肥大に伴う心室中部での内腔狭窄がある場合)」、「心尖部肥大型心筋症(apical hypertrophic cardiomyopathy; 心尖部に肥大が限局する場合)」がある。
    ・肥大型心筋症の経過中に、肥大した心室壁厚が減少し菲薄化し、心室内腔の拡大を伴う左室収縮力低下をきたし、拡張型心筋症様病態を呈した場合、「拡張相肥大型心筋症(dilated phase of hypertrophic cardiomyopathy; D-HCM)」とされる。その診断は経過観察されていれば確実であるが、経過観察されていなくても、以前に肥大型心筋症との確かな診断がされている場合も含まれる。
    (参照:『難病の診断と治療方針2改訂版』疾病対策研究会 2001、P.387、『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.5、P.16-19)

    ※心筋……心臓の筋肉。心臓は全身に血液を送るポンプです。心筋が収縮・拡張することで血液が送られます。

    ※特発性……病変の最初の発生がその臓器そのものにあることです。他の病気の結果として引き起こされるのではなく第一次に起こることです。対義語は「続発性」、「二次性」です。

    ※左室・右室など心臓の構造……心臓は2対の心房(右心房・左心房)と、2対の心室(右心室・左心室=右室・左室)で構成されています。心房は、心室の上流にあり、心室に入る血液を貯めておき、心室へ血液を送り込みます。心室は収縮して血液を大動脈と大静脈を通じて全身に送り出します。からだに酸素を供給し終えた血液は、大静脈から右心房へ戻ってきます。

    ※心肥大……なんらかの原因で心臓に負荷が増え、心臓が大きくなった状態です。心肥大には心臓の壁が厚くなってしまったもの(高血圧などが原因)、心室・心房が拡張して大きくなったもの(肺動脈弁の閉鎖不全症などが原因)があります。心筋症では心筋自体の異常で肥大や拡張が起こります。

    ※菲薄化……薄くなることです。
  • 疫学
  • 1998年に我が国で実施された医療施設受診者に基づいた全国調査によると、人口10万人に対して、肥大型心筋症の有病率は17.3人でした。
    1975~84年の米国においては19.7人でした。また心エコー検診に基づく報告では、日本170~374人、米国(23~35歳の若年者で)170人と、調査によってかなりばらつきがあります。
    また、1998年の調査では、患者の男女比は2.3:1と男性優位で、年齢別分布は男女共60歳代がピークでした。

    (参照:『心筋症を識る・診る・治す』文光堂、2007、P.12、日本循環器学会『肥大型心筋症の治療に関するガイドライン』、2007、P.7)

    ※心エコー…超音波を胸部に当ててその反響を映像化することによって、心臓の状態を非破壊的に調べることができます。
  • 成因
  • 近年、肥大型心筋症の原因遺伝子に関する研究が進み、常染色体性優性様式で遺伝する原因遺伝子が15以上報告されています。また家族性の肥大型心筋症のうち、心筋ベータミオシン重鎖に関連するMYH7遺伝子の異常によるものが19.1%、心筋トロポニンTに関連するTNNT2遺伝子の異常によるものが11.7%、心筋ミオシン結合タンパクCに関連するMYBPC3遺伝子の異常によるものが11.1%と、上位3つの頻度はそんなに高くないことがわかります。このように肥大型心筋症の原因遺伝子は多種多様で、成因の研究はいまだ途上にあるというのが現実です。

    (参照:『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.24-28)

    ※常染色体性優性様式……遺伝形質の情報は遺伝子に書いてあります。遺伝子は染色体上のDNAの塩基配列によって決められています。
    常染色体上(父親由来と母親由来で形態が同じである染色体)にある一対の遺伝子の一方に異常があれば、病気を発症する可能性があります。それを常染色体優性遺伝と呼びます。

    ※心筋ベータミオシン重鎖……ミオシンは筋収縮を担うタンパク質です。
    ※心筋トロポニンT、心筋ミオシン結合タンパクC……筋収縮を調節するタンパク質です。

    【参考】筋肉の収縮のしくみについて……アクチンの分子が集まったアクチンフィラメントと、ミオシンの分子が集まったミオシンフィラメントが、お互いに滑りあうことで筋肉は収縮します。
    筋肉にある小胞体から、カルシウムイオンが放出されると、モータータンパク質のミオシンが、ATPを分解したエネルギーを用いて、アクチンフィラメントを動かします。ATPは、アデノシン三リン酸 adenosine tri-phosphate のことで、生体内のエネルギー受け渡しに関る物質です。
    アクチンフィラメントにはトロポミオシンというフィラメントが巻き付いていて、トロポニンというタンパク質複合体が結合しています。
    トロポニンには3つの成分(トロポニンI、トロポニンC、トロポニンT)があります。トロポニンCがカルシウムと結合してトロポミオシンの構造変化を起こし、アクチンを活性化すると考えられています。

    (参照:高校の教科書である『生物II 改訂版』啓林館、「第4章 生命現象とタンパク質」の「第1節 生体を動かすタンパク質」よりまとめました)
  • 臨床症状
  • 肥大型心筋症の病型分類にはMaron BJ (アメリカ)による組織学的な分類がよく用いられます。
    1型:肥大が心室中隔前部に限局
    2型:肥大が心室中隔全体に存在
    3型:肥大が後壁を除く左室全体に及ぶ
    4型:肥大は左室前側壁や心室中隔後部に存在
    5型:心尖部肥大型(原著にはないが追加して使われることがあります)

    このうち日本人では5型が多く見られます。5型(「心尖部肥大型心筋症」)は、心臓の収縮能が正常で左室容積が正常以下にもかかわらず、左室充満圧が上昇するため、左室の伸び縮みに障害が見られます。自覚症状に乏しく、心機能障害は軽度で比較的予後良好とされていますが、不整脈による突然死の可能性もあります。

    また、左室の流出に狭窄があるものを「閉塞性肥大型心筋症」、狭窄がないものを「非閉塞性肥大型心筋症」ということがあますが、前者の方が心臓に負担がかかることから、両者を比べると閉塞性の方が予後不良となります。

    尚、「拡張相肥大型心筋症」では経過とともに心筋の線維化が進み、左室の拡大と収縮力低下をきたします。この症例は拡張型心筋症と同様に予後は悪化すれば不良で、現在心臓移植しか根本的な治療法はありません。
    (参照:『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.98、111)

    ※心室中隔……左の心室と右の心室を隔てる筋肉の壁です

    ※心尖……心臓は下向きに尖った形をしていますが、その尖端部を「心尖」といいます。
  • 診断
  • 厚生労働省による診断基準は、以下の通りです。

    [肥大型心筋症の診断基準]
    肥大型心筋症診断における最も有用な検査は、(1)心臓超音波検査などの画像診断よる所見である。(1)の検査結果に加えて、(2)高血圧性心疾患などの鑑別すべき疾患との鑑別診断を行うことは必須である。また、(3)心筋生検による所見、(4)家族性発生の確認、(5)遺伝子診断が確定診断に有用である。
    おのおのの条件を以下に記載する。

    (1)心臓超音波検査などの画像診断よる下記の所見
    a)非閉塞性肥大型心筋症
    心室中隔の肥大所見、非対称性中隔(拡張期の心室中隔厚/後壁厚が1.3以上)など心筋の限局性肥大。
    b)閉塞性肥大型心筋症
    左室流出路狭窄所見、僧帽弁エコーの収縮期前方運動
    c)心室中部閉塞性心筋症
    左室中部狭窄所見
    d)心尖部肥大型心筋症
    心尖部肥大所見
    e)拡張相肥大型心筋症
    心筋収縮不全と左室内腔の拡張を認め、肥大型心筋症からの移行が確認されたもの

    (2)鑑別診断
    高血圧性心疾患、心臓弁膜疾患、先天性心奇形などの除外診断

    鑑別すべき疾患として、
    高血圧性心疾患、心臓弁膜疾患、先天性心疾患、虚血性心疾患、内分泌性心疾患、貧血、肺性心

    さらに、特定心筋疾患(二次性心筋疾患):[1]アルコール性心疾患、産褥心、原発性心内膜線維弾性症、[2]心筋炎、[3]神経・筋疾患に伴う心筋疾患、[4]膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発筋炎、強皮症など)に伴う心筋疾患、[5]栄養性心疾患(脚気心など)、[6]代謝性疾患に伴う心筋疾患(Fabry病、ヘモクロマトーシス、Pompe病、Hurler症候群、Hunter症候群など)、[7]その他(アミロイドーシス、サルコイドーシスなど)

    (3)心筋生検による下記の所見
    肥大心筋細胞の存在、心筋細胞の錯綜配列の存在

    (4)家族歴
    家族性発生を認める

    (5)遺伝子診断
    心筋ベータミオシン重鎖遺伝子、心筋トロポニン遺伝子、心筋ミオシン結合蛋白C遺伝子などの遺伝子異常

    [診断のための参考事項]
    (1)自覚症状
    無症状のことも多いが、動悸、呼吸困難、胸部圧迫感、胸痛、易疲労性、浮腫など。めまい・失神が出現することがある。
    (2)心電図
    ST・T波異常、左室側高電位、異常Q波、脚ブロック、不整脈(上室性、心室性頻脈性不整脈、徐脈性不整脈)など。QRS幅の延長、R波の減高等も伴うことがある。
    (3)聴診
    3音、4音、収縮期雑音
    (4)生化学所見
    心筋逸脱酵素(CKやLDH等)やナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP)が持続的に上昇することがある。
    (5)心エコー図
    心室中隔の肥大、非対称性中隔肥厚(拡張期の心室中隔厚/後壁厚が1.3以上)など心筋の限局性肥大。左室拡張能障害(左室流入血流速波形での拡張障害パターン、僧帽弁輪部拡張早期運動速度の低下)。
    閉塞性肥大型心筋症では、僧帽弁エコーの収縮期前方運動、左室流出路狭窄を認める。
    その他、左室中部狭窄、右室流出路狭窄などを呈する場合がある。
    拡張相肥大型心筋症では、左室径・腔の拡大、左室駆出分画の低下、びまん性左室壁運動の低下を認める。
    ただし、心エコー図での評価が十分に得られない場合は、左室造影やMRI、CT、心筋シンチグラフィなどで代替しても可とする。
    (6)心臓カテーテル検査
    <冠動脈造影>通常冠動脈病変を認めない。
    <左室造影>心室中隔、左室壁の肥厚、心尖部肥大など。
    <圧測定>左室拡張末期圧上昇、左室-大動脈間圧較差(閉塞性)、Brockenbrough現象。
    (7)心筋生検
    心筋細胞肥大、心筋細胞の錯綜配列など。
    (8)家族歴
    しばしば家族性(遺伝性)発生を示す。血液や手術材料による遺伝子診断が、有用である。
    (9)拡張相肥大型心筋症では、拡張相肥大型心筋症の左室壁厚については、減少するもの、肥大を残すもの、非対称性中隔肥大を認めるものなど様々であるが、過去に肥大型心筋症の診断根拠(心エコー所見など)があることが必要である。

    [医療費助成の申請のための留意事項]
    1.新規申請時には、12誘導心電図(図中にキャリブレーションまたはスケールが表示されていること)および心エコー図(実画像またはレポートのコピー)により診断に必要十分な所見が呈示されていること)の提出が必須である。
    2.心エコー図で画像評価が十分に得られない場合は、左室造影やMRI、CT、心筋シンチグラフィなどでの代替も可とする。
    3.新規申請に際しては、心筋炎や特定心筋疾患(二次性心筋疾患)との鑑別のために、心内膜下心筋生検を施行することが望ましい。また、冠動脈疾患の除外が必要な場合には冠動脈造影または冠動脈CTが必須である。
    4.新規・更新申請時は、下記の大項目を一つ以上満たすこととする。
    大項目[1] 心不全や不整脈治療(ICD植込みなど)による入院歴を有する
    大項目[2] 心不全の存在
    心不全症状NYHA2度以上かつ[(推定Mets6以下)or(peak VO2〈20)]
    大項目[3] 突然死もしくは心不全のハイリスク因子を一つ以上有する
    1)致死性不整脈の存在
    2)失神・心停止の既往
    3)肥大型心筋症による突然死もしくは心不全の家族歴を有する
    4)運動負荷*に伴う血圧低下(血圧上昇25mmHg未満;対象は40歳未満)
    5)著明な左室肥大(最大壁厚30mm以上)
    6)左室流出路圧較差が50mmHgを超える場合などの血行動態の高度の異常
    7)遺伝子診断で予後不良とされる変異を有する
    8)拡張相に移行した症例
    *運動負荷を行う場合には危険を伴う症例もあるため注意を要する

    本認定基準は、肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2007年改訂版 日本循環器学会)などをもとに作成している。診断技術の進歩とともに、認定基準が変更されることがある。
  • 治療
  • 肥大型心筋症では多くの症例が良好な経過をたどる一方で、長期的には病状の進行とともに、突然死、心房細動の発症、拡張不全を中心とする心不全、拡張相肥大型心筋症への移行などがあらわれるおそれがあり、これらに対する対策が治療のポイントとなります。

    1.心肥大はないが肥大型心筋症の家族歴を有している人
    現在心肥大でなくとも、将来発症する可能性がないとはいえません。両親、兄弟、子供と世代を越えて心電図検査などを行い、リスクがないか調べるようにしましょう。

    2.突然死高リスク例
    (1)過去に心停止や持続性心室頻拍を起こした例、(2)若年性の心疾患死、特に突然死の家族歴のある例、(3)原因不明の失神を起こしたことのある例、特に若年性、再発性、運動誘発性の場合、(4)Holter心電図で非持続性心室頻拍(レート120/分以上の3連発以上)がみられる場合、(5)トレッドミル運動負荷試験で運動による血圧上昇反応が減弱しているか、血圧低下が起こる例(特に50歳未満)、(6)左室壁肥厚が30mm以上の著明な左室求心性肥大)、これらの因子を複数持つ場合、特に心停止の既往や持続性心室頻拍がある場合には、突然死に対する積極的な予防治療が必要になります。
    薬物療法に関しては研究中(「アミオダロン」)で、目下のところ、植込み型除細動器を体に取り付けるのが最も有効な治療法となっています。

    3.無症状または軽度の症状のみで突然死低リスク例
    無症状の場合は経過観察にとどめます。
    症状がある場合は症状改善を狙って、ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬が投与されます。

    [参考]NYHA(ニューヨーク心臓協会)による心不全の症状の分類(NYHA分類)
    1度・無症候性
    心臓に何らかの病気はあるが、日常生活で疲れ、動悸、息切れなどの症状が出ることはない
    2度・軽症
    安静時および軽労作時には症状がないが、強い労作時に疲れ、動悸、息切れなどが生じる
    3度・中等症~重症
    安静時には症状がないが、ふつう以下の軽い身体活動を行うだけで疲れ、動悸、息切れなどが生じる
    4度・難治性
    安静にしていても心不全の症状があり、安静を守らずに少しでも身体活動を行うと症状が増悪する

    4.中等度以上の心不全症状があり進行性の場合
    この場合、拡張不全による肺うっ血症状改善のためにベータ遮断薬を、徐拍化を促すために「ベラパミル」を投与します。
    閉塞性肥大型心筋症患者さんの左室流出路閉塞の軽減には、抗不整脈薬の「ジソピラミド」や「シベンゾリン」が期待できます。

    5.経過中に心房細動を発生した場合
    薬物治療抵抗性の場合は電気ショックによって、異常な電気信号経路を遮断し、正常の電気信号経路への改善を促します。持続性や永続性心房細動の場合は、カルシウム拮抗薬やベータ遮断薬によって心拍数をコントロールすることが中心になります。
    強心剤の「ジギタリス」は閉塞性肥大型心筋症の狭窄度を高める作用があるので、服用してはいけません。

    6.薬物療法で十分な効果があがらない閉塞性肥大型心筋症
    薬物療法によっても自覚症状が残り生活に支障が出る場合には、DDDペースメーカー(心房と心室にそれぞれリードを入れ、心室の収縮を不均一にすることにより閉塞を軽減する)や経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)が検討されます。

    7.薬物療法で十分な効果があがらない非閉塞性肥大型心筋症
    肥大型心筋症が拡張相へ移行し、左室拡大と収縮力低下がみられる場合には、特発性拡張型心筋症に準じた治療プログラムに切り替える必要が生じます。基本的には、ACE阻害薬とベータ遮断薬による薬物療法とうっ血症状に対する利尿薬が中心となります。これらの薬の利きが悪い時には「心臓再同期療法(CRT)」や「心臓移植」が考慮されます。
    (参照:『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.142-144)
  • 非薬物・外科治療
  • ペースメーカー(DDDペースメーカー)埋め込み
    ペースペーカー刺激により心室の収縮を不均一にし閉塞を軽減するために、鎖骨下静脈からリード(電極がついた導線)を入れ、右心房と右心室に置く手術を施します。

    植込み型除細動器埋め込み
    植込み型除細動器は、心室細動が起こった際に電気ショックを与えて細動を止めます。
    2種類のリードを肩の静脈から入れ、1本(ICDリード)を右心室の奥に、もう1本(心房リード)を右心房の上部に置く手術を施します。

    経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)
    閉塞性肥大型心筋症では、心臓の右心室と左心室を隔てる心室中隔の心筋が厚くなり、左心室にせり出して血液の通り道を狭め、収縮時に生じた圧力が心臓に負担をあたえます。経皮的中隔心筋焼灼術では、足の付け根からカテーテルを入れて心室中隔に導き、心エコーを使って肥大化した心筋を特定、エタノールを注入して当該心筋を壊死させて中隔肥大を縮小させます。
    この治療は薬物治療の効果が十分でない症例が対象となり、入院は2週間程度です。2004年には保険の適用を受けました。治療を受けた全員の症状が改善し、半数は無症状になったという報告もあります。(参照:『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.150-151、『医心伝身50回 閉塞性肥大型心筋症に新しいカテーテル治療』[『週刊ポスト』2007.1.26 P.92])

    心筋切除術
    肥大した心筋を切除する手術で欧米で盛んに行われています。
    (参照:『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.156-159)

    人工弁置換術
    閉塞性肥大型心筋症の合併症として、心臓弁膜症(特に僧帽弁閉鎖不全症)があらわれることがあります。症状が軽微なうちは薬物治療などで対処しますが、心不全が起きたり、病状が進行して将来危険と判断される場合には、胸部を切開して人工心肺装置を付け、当該する弁を取り除き人工弁にする手術が行われます。これを人工弁置換術といいます。
    人工弁置換術に使われる弁には動物の心膜などを材料にした「生体弁」と、金属や特殊なカーボンを材料にした「機械弁」があります。機械弁は長期耐久性に優れていますが、血栓ができやすいため、抗凝血剤の「ワルファリン」を生涯服用しなければなりません。一方、生体弁は劣化しやすく再手術が必要になる場合が多いのですが、高齢者の場合は劣化しにくいため、高齢者には生体弁を使うのが一般的です。また、若年女性で妊娠を希望される患者さんにも生体弁が使われます。
    (参照:山科章『専門医がやさしく教える心臓病』PHP研究所2008、P.148)

    補助人工心臓、心臓移植
    拡張相肥大型心筋症の患者さんが重度の心不全に陥った場合には、特発性拡張型心筋症と同様に、補助人工心臓、心臓移植が検討されます。
    詳細は、当サイトの「特発性拡張型心筋症」のページをご覧ください。
  • 経過・予後
  • 厚生労働省難治性疾患克服事業 特発性心筋症調査研究班による調査によると、1998年に初めて肥大型心筋症と診断された342例の5年生存率は86%でした。予後不良要因をみると、「低い左室駆出率」、「高い心胸比」が目立つ結果になりました。
    また欧米の調査によると、拡張相肥大型心筋症の場合、肥大型心筋症の発症から左室駆出率の低下をきたすまでが14±10年、その後の予後(死亡もしくは心臓移植)までが2.7±2.4年と、いったん拡張相に移行すると症状が急速に悪化することがデータからもわかります。

    ※左室駆出率……左室容積に対する駆出量の比で、1回の駆出によって心室容積の何%が駆出されるかを表わします。

    ※心胸比……胸幅に対する心臓の大きさの割合。肥大や拡張の結果、増加します。

    (参照:松森昭『わが国の特発性心筋症の予後と予後要因:全国疫学調査5年後の予後調査より』(『厚生労働省難治性克服研究事業 特発性心筋症に関する調査研究<友池班>2006年度報告書』に収録)、『心筋症を識る・診る・治す』文光堂 2007、P.12-14)
  • ケア
  • 本症と診断された場合、「病状の進行を遅らせること」が最良の治療となります。そのため、専門医の助言の下、適切な治療と生活のケアが必要になります。心臓を酷使することを避けつつ適度な運動をするなど、生活に様々な制約がつきますが、ストレスを上手に解消しながら、生きていかなければなりません。
  • 検査
  • 心エコー
    心臓の超音波検査の略称。ドプラ効果によって反射する音波の周波数が変化することを利用して、心臓の血流を評価します。ドプラモード(グラフ表示)、並びにカラードプラモード(画像表示)があります。

    心臓カテーテル検査
    カテーテルを心臓の血管に挿入し、造影剤を入れて形態学的異常を検出したり、心臓内腔の圧力、酸素飽和度を測定して、血行動態を把握したりします。

    心内膜下心筋生検
    心臓カテーテル検査の一種。特殊なカテーテル(生検鉗子)で心筋の組織の一部をとり、組織検査で心筋炎や特定心筋疾患との鑑別を行います。肥大型心筋症の典型例では、心筋細胞の肥大と錯綜配列がみられます。
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