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6月24日(日)
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疾患

  • 定義・概念
  • 突発性難聴は、「原因がない(わからない)」「突然起こる」「高度な難聴」の3つを主な特徴としています。1855年、Barr Tの論文で初めて報告されたもので、それから半世紀が経過した現在においても、未だに病態は不明で、特効的な治療法も確立されていないのが現状です。
    2週間を過ぎると治療効果が低くなることがわかっているため、治療は、発症してから2週間以内に開始することが必要と言われています。しかし、初診時に突発性難聴の確定診断をすることは難しく、「突発性難聴疑い」をもとに治療を行うことになります。
  • 疫学
  • 厚生省(現・厚生労働省)の特定疾患調査研究班(現・急性高度難聴調査研究班)が10年毎に行っている疫学調査によると全国の受療患者数は1993年には年間24,000人、2001年では年間35,000人と増加傾向にあります。
    男女による差はなく、50歳から60歳代の患者が全体の6割を占めています。

    (参照:「耳鼻咽喉科・頭頸部外科特集」「急性感音難聴の取り扱い」~急性感音難聴の鑑別診断~小川郁2010年1月20日)
  • 自立率
  • 突発性難聴では、自立率の概念を適応することはありません。
  • 成因
  • 明らかな原因は分かっていませんが、最も有力な病因としては、「ウィルス感染説」と「内耳循環障害説」の二つがあります。
    ウィルス感染説は、病気を発症した時に風邪に罹っていることが多いことや再発がほとんどないことなどから有力な説として位置づけられています。
    また、内耳循環説に関しては、血管のけいれんや出血、血栓や塞栓などが考えられていますが、再発がないことなどから、一次的な原因としては問題がある点も指摘されています。
  • 臨床症状
  • 突発性難聴の主な症状は、朝、目覚めた時などに起こる突然の難聴と高度な感音難聴で、ほとんどの場合、片方の耳だけに発症します。
    外耳や中耳、鼓膜に原因がある伝音難聴と違って、感音難聴である突発性難聴は、内耳に障害が起きていると考えられています。
    「難聴」の他の 主な症状としては「耳鳴り」「耳閉塞感」「めまい」があり、耳鳴りはほぼ全例に起こり、耳閉塞感は3分の2の症例で、まためまいは患者さんの約半数に認められます。めまいの発作は繰り返すことはありません。その他、吐き気や嘔吐、などを伴うこともあります。
    また、難聴は突然、高度な難聴として発生するため、その時刻やその時何をしていたかなどを患者さん本人が覚えている場合が多く、これらが診断の時に非常に役に立ちます。
  • 臨床検査所見
  • 純音聴力検査
    オージオメータ を使った聴力検査を行います。125ヘルツから8,000ヘルツまで7種類の純音を用いて通常の人がぎりぎり聞こえるか聞こえないかの大きさを0デシベルとして検査を受ける人がこれと比較して何デシベルの聴力レベルなのかを調べる検査です。
  • 診断
  • 厚生省(現・厚生労働省)による診断基準(診断の手引き)は以下の通りです。

    Ⅰ主症状
    (1)突然の難聴(朝、目が覚めた時や即時的な難聴としてあらわれる難聴)
    (2)高度な感音難聴(必ずしも高度な必要はありませんが、高度でなければ難聴になったことに気づかないことが多い)
    (3)原因が不明または不確実

    Ⅱ副症状としてあらわれるものには次のようなものがあります。
    (1)耳鳴り(難聴が発生した前後に耳鳴りが起こることがあります)
    (2)めまい・吐き気や嘔吐(難聴が発生した前後に、めまい、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。しかし、めまい発作を繰り返すことはありません)

    診断の基準として、
    確実例 : 主症状と副症状の全事項をみたすもの
    疑い例 : 主症状の1、2の事項をみたすもの

    また、突発性難聴の重症度は以下のように分類されます。(発症後、2週間までの症例に適用)
    重症度    初診時純音聴力レベル
    グレード1 : 40dB未満
    グレード2 : 40dB以上、60dB未満
    グレード3 : 60dB以上、90dB未満
    グレード4 : 90dB以上

    (参考) 平成23年に厚生労働省の急性高度難聴に関する調査研究班が提示した見直し案(パブリックコメントを受け付け、24年に改訂の予定)

    突発性難聴:診断基準(案)
    主症状
    1.突然発症
    2.高度感音難聴
    3.原因不明

    参考事項
     1.難聴(参考:隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴)
     (1)文字どおり即時的な難聴、または朝、目が覚めて気づくような難聴が多いが、数日をかけて悪化する例もある。
     (2)難聴の改善・悪化の繰り返しはない
     (3)一側性の場合が多いが、両側性に同時罹患する例もある
     2.耳鳴
      難聴の発生と前後して耳鳴を生ずることがある。
     3.めまい、および吐気・嘔吐
      難聴の発生と前後してめまい、および吐気・嘔吐を伴うことがあるが、めまい発作を繰り返すことはない。
     4.第8脳神経以外に顕著な神経症状を伴うことはない
    診断の基準:主症状の全事項をみたすもの

    突発性難聴の重症度分類(案)

    重症度    初診時聴力レベル
    Grade1 : 40dB未満
    Grade2 : 40dB以上、60dB未満
    Grade3 : 60dB以上、90dB未満
    Grade4 : 90dB以上
     注1.聴力は0.25kHz、0.5 kHz、1 kHz、2 kHz、4 kHzの5周波数の閾値の平均とする。
     注2.この分類は発症後2週間までの症例に適用する。
     注3.初診時めまいのあるものではaを、ないものではbを付けて区分する(例:Grade3a、Grade4b)

    突発性難聴と鑑別が必要な疾患としては以下のようなものがあります。
    1. メニエール病や急性低音障害型感音難聴
    2. 急性音響性難聴
    3. 外リンパ瘻
    4. 聴神経腫瘍
    5. ムンプス難聴や梅毒性内耳炎

    これらの疾患は、必ずしも初診時に鑑別ができるわけではないので、突発性難聴の治療を進めながら鑑別を行う必要があります。
  • 治療
  • 突発性難聴の根本的な治療法は確立されていないため、現時点では、可能性のある病態を考慮した治療法が行われています。
    治療としては、内耳循環障害の改善や細胞の保護を目的としたプロスタグランジン薬(PGE1やPG2)と、ウィルス性内耳炎に対する抗炎症作用を有する薬(副腎皮質ステロイド)が併用され、治療の開始時期は、発症から2週間以内に行うのが良いとされています。
    突発性難聴を発症する前には精神的、肉体的な疲労やストレスを感じていることが多いため、急性期の治療では安静が最も重要です。症状の程度によっては、入院が必要な場合もありますが、安静を保つだけでも内耳循環障害の改善は期待され、治療しない場合でも聴力が回復する自然治癒があることも知られています。

    (1)内耳循環改善治療
    内耳循環改善を目的とした治療としては、血管拡張薬が使われます。血栓によって内耳の循環障害が考えられる場合には抗凝固薬が使用されます。その他、代謝の改善を目的とした薬や向神経ビタミン製剤が併用される場合もあります。
    薬以外の治療法としては、血管の拡張を目的として、二酸化炭素によるガス吸入法(95%の酸素と5%の二酸化炭素の混合ガス)が行われています。その他、血液内の酸素濃度を高めるための高圧酸素療法や星状神経節のブロックなどが行われることもあります。

    (2)ウィルス性内耳障害の治療
    ウィルス感染に対する治療として用いられているのは副腎皮質ステロイドです。副腎皮質ステロイドの抗炎症作用がウィルス性の内耳炎の症状を軽減させると考えられていますが、その他にも循環系への関与も指摘されています。
    投与の方法としては、一般的には内服や点滴の形で行われますが、糖尿病や胃潰瘍、結核などの合併症を伴う場合には薬の副作用でこれらの合併症が悪化する可能性があるため注意が必要です。ただ、最近では、内服や点滴ではなく、副腎皮質ステロイドを鼓膜を介して中耳(鼓室)に注入する方法(副腎皮質ステロイドの鼓室内投与)が行われるようになりました。この方法はまだ有効性が確立された方法ではありませんが、これらの既往のある方は主治医に相談すると良いでしょう。

    尚、 京都大学で副腎皮質ステロイド全身投与が無効であった患者さんのうち発症から30日未満の方を対象に、細胞の成長を促す「リコンビナント・ヒト・インスリン様細胞成長因子1」(IGF1)という薬剤をしみ込ませたゼラチンを内耳の蝸牛という小器官の膜に置いたところ、25人中56%の方に聴力の改善がみられたとの報告があり関係者の注目を集めています。(参照:『日本経済新聞』2010年12月2日朝刊38頁)
  • 経過・予後
  • 治療で必ずしもすべての難聴が改善するわけではなく、治癒に至るのは全体の約40%、治癒には至らなくても何らかの改善を示す場合が約40%で、残りの約20%は難聴の改善が認められないと言われています。
    突発性難聴は急性の疾患で、治療は発生してから1~2週間以内に開始するのが望ましいと言われています。聴力が固定するのが2~3ヵ月とされているため、発症してから2~3ヵ月以内は薬物療法の他、星状神経節ブロック、高圧酸素療法などが行われますが、それ以降は一般的に難聴の回復は期待できず、耳鳴りなどに対する対症療法が行われます。
    再発はほとんどないのが特徴ですが、予後が悪くなる因子としては以下のようなものがあります。

    1. 発症してから2週間以上が経過した場合
    2. 発症した時の聴力の平均レベルが90dB以上の高度な難聴の場合
    3. 回転性めまいを伴う場合
    4. 高齢者の場合

    (参考) 突発性難聴・聴力回復の判定基準(厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班会議、1984年)
     治癒(全治)
     1.0.25kHz、0.5 kHz、1 kHz、2 kHz、4 kHzの聴力レベルが20dB以内に戻ったもの
     2.健側聴力が安定と考えられれば、患側がそれと同程度まで改善したとき
     著明回復
      上記5周波数の算術平均が30dB以上改善したとき
     回復(軽度回復)
      上記5周波数の算術平均が10~30dB改善したとき
     不変(悪化を含む)
      上記5周波数の算術平均が10dB未満の改善のとき
  • 手術
  • 突発性難聴の場合、ほとんどのケースが片側のみに発生する難聴のため、治療の中心となるのは薬剤ですが、難聴の回復が不十分な場合は補聴器装具が有効な場合があります。また、まれに両側に発生して難聴が高度な場合などには「人工内耳」が使われるケースもあります。
    人工内耳は、手術で埋め込まれた電極に電流を流し、電気的に内耳の聴神経を刺激することで脳の聴覚中枢がことばや音を感じるものです。
  • ケア
  • 突発性難聴の急性期は、とにかく安静にすることです。病気の発生前には精神的、肉体的な疲労感を感じていることが多いため、ストレスを排除することが大切です。安静を保つことで内耳循環障害の改善が期待されます。
    耳が聞こえにくくなることによる不安や生活上での不便を感じないよう家族の協力も必要となります。
    テレビやラジオなどの音量にも注意し、話をする時や電話の受話器を受ける場合にも患側をさけるなど日常生活におけるまわりの人の配慮も大切です。
    自宅療養の場合は、からだに無理のかからない生活を心がけることが重要です。規則正しい食事や十分な睡眠をとることは生活の基本となりますが、その他にもタバコやアルコールなどもひかえるように努めるとよいでしょう。
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