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4月26日(木)
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疾患

  • 定義・概念
  • 網膜色素変性(Retinitis Pigmentosa:略称「RP」)は、目の中の、カメラでいえばフィルムの役割を果たしている網膜が、異常をきたす、遺伝性・進行性の病気です。網膜色素変性では網膜にある視細胞が最初に障害を受けます。視細胞には、網膜の中心部「黄斑」に分布して、主に中心の視力や色覚などに関係している「錐体細胞」と、網膜の中心部以外に多く分布して、主に暗いところでの物の見え方や視野の広さなどに関係している「杆体細胞」があります。網膜色素変性では、「杆体細胞」が障害されることが多く、暗いところで物が見えにくくなる「夜盲(とり目)」や視野が狭くなる「視野狭窄」が、まず起こります。その後、次第に視力が低下していきます。しかし視力低下を自覚する時期は患者によって異なり、高齢になってもあるていどの視力を保てるケースが多いようです。この病気は両眼性で、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝等、様々な遺伝形式をとりますが、孤発例(家族の中に発症者がいないケース)もみられます。
  • 疫学
  • 有病率は人口10万人に対して18.7人と推定されており、平成23年度における患者数は特定疾患医療受給者証交付ベースで26,934人と増加傾向にあります。本疾患は日本において先天盲の第一位を占め、中途失明の上位にあります。尚、地域の特殊性はありません。
    ※先天盲…生まれたときあるいは乳幼児の頃に失明して、ものを見た記憶がない状態をいいます。
    ※中途失明…人生の途中、生産年齢(15歳~60歳)で、視力を失うこと。緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性が主な原因となっています。
    (参照:『難病の診断と治療方針1改定版』疾病対策研究会 2003、P.395、難病対策研究会監修『平成19年度版難病対策提要』太陽美術、P.456)
  • 成因
  • 網膜色素変性の原因とされる遺伝子は、全身合併症のない(non-syndromic)網膜色素変性では40余り、全身の合併症がある(syndromic)網膜色素変性が40報告されています。遺伝子異常の違いは臨床症状の違いをもたらすと考えられていますが、同じ遺伝子の異常でも様々な症状が報告されていて、発症のプロセスは未だ十分に解明されておりません。以下に一例を示します。

    (原因遺伝子)…(表現型)
    ・ROM…二遺伝子性網膜色素変性
    ・ABCR…Stargardt病、常染色体劣性停止性夜盲
    ・CRX…常染色体優性錐体杆体ジストロフィー、Leber先天盲
    ・REP65…常染色体劣性網膜色素変性、Leber先天盲
    ・CRALBP…常染色体劣性網膜色素変性
    ・RPGR…X染色体劣性網膜色素変性
    ・RP2…X染色体劣性網膜色素変性
    ・MYOSIN-type7…Usher症候群

    わが国における網膜色素変性の発現頻度は、常染色体優性遺伝が17%、常染色体劣性遺伝が25%、X染色体劣性遺伝が2%、孤発例が54%となっています。孤発例の割合が多いのは、少子化で近親の罹患者が現れにくくなったためです。また、血族結婚が少なくなってきたため、劣性遺伝の割合が減っています。

    ※孤発例…家族の中に発病者がいない例。散発例ともいいます。
  • 臨床症状
  • 進行性の視野狭窄、視力低下、夜盲。
  • 診断(特定疾患の診断基準)
  • 1.自覚症状
    (1)夜盲
    (2)視野狭窄
    (3)視力低下

    2.臨床検査所見
    (1)眼底所見
    網膜血管狭小、粗?胡麻塩状網膜、骨小体様色素沈着、白点状
    (2)網膜電図の振幅低下又は消失
    (3)蛍光眼底造影所見で網膜色素上皮萎縮による過蛍光

    3.診断の判定
    (1)進行性の病変である。
    (2)自覚症状で、上記のいずれか1つ以上がみられる。
    (3)眼底所見で、上記のいずれか2つ以上がみられる。
    (4)網膜電図で、上記の所見がみられる。
    (5)蛍光眼底造影で、上記の所見が見られる。(アレルギーがあり検査不可能な場合は除外)
    (6)炎症性又は続発性でない。
    上記、(1)~(6)のすべてを満たすものを、特定疾患としての網膜色素変性と診断する。
  • 診断のための検査
  • 1.眼底検査
     目薬で瞳を開いて、眼底の状態を調べます。あわせて眼底写真を撮ることもあります。病気のそれぞれの時期ごとに特徴的な眼底の変化、網膜の変性が見られます。

    2.視野検査
     見える範囲を調べるもので、病気の進行状況を調べる重要な検査です。特殊な器械の前に座って、小さな光が見えたらボタンを押します。

    3.蛍光眼底検査
     腕の静脈から造影剤を流しながら眼底写真を撮る検査です。

    4.網膜電図(electroretinogram : ERG)
     正常な網膜に光が当たると電気的な信号が生じて、視神経を通して脳に伝わります。この電気信号を、角膜上に載せた電極で調べる検査です。
  • 網膜色素変性の重症度分類
  • 1度
    矯正視力 0.7 以上、かつ視野狭窄なし
    2度
    矯正視力 0.7 以上、視野狭窄あり
    3度
    矯正視力 0.7 未満、0.2 以上
    4度
    矯正視力 0.2 未満
    (注)矯正視力、視野ともに、良好な方の眼の測定値を用いる。

    特定疾患治療研究事業の対象範囲
    診断基準により網膜色素変性と診断された者のうち、重症度分類の2、3、4度の者を対象とする。
  • 治療
  • 今のところ、治療法は確立されていませんが、網膜色素変性に対する遺伝子治療の臨床研究が2013年3月に開始され、日本発・世界初の網膜色素変性治療の点眼薬が2013年3月に第3相臨床試験が開始されるなど、有効な治療法の確立に向けて、歩み出しています。2013年8月の時点では、一般には患者さんの暗順応障害やビタミンA、羞明を軽減し、視界のコントラストを改善するために遮光眼鏡を装着することや、暗順応改善薬、末梢循環改善剤、末梢神経障害改善剤などの服用が行われています。また網膜神経保護、網膜幹細胞移植、人工網膜などの治療法も現在研究されています。

    ※暗順応障害…明るい所から暗い所へ入った際に、中の暗さに目がなかなか慣れず、ものが見えにくい状態をいいます。
    ※羞明…目に入ってくる光をまぶしく感じ、光を受けることを嫌う状態をいいます。
    ※末梢循環改善剤…網膜の血流をよくします。
    ※末梢神経障害改善剤…神経の障害を改善します。
  • 今後期待される先端研究
  • 九州大学医学部 眼科 網膜色素変性に対する遺伝子治療 日本初の臨床応用について
    九州大学眼科では、「網膜色素変性」に対する、日本初となる遺伝子治療の臨床研究を2013年3月に開始しました。

    理化学研究所 網膜再生医療研究開発プロジェクト
    網膜の中から、あるいは外から細胞を移植することによって、疾患で失われた網膜機能を再生させることを目指す研究開発プロジェクトです。
  • 経過・予後
  • 網膜色素変性は出生直後から高度の視力障害をきたすLeber先天盲の患者さんから、70代、80代になってもほとんど日常生活に支障をきたすことなく暮らしていける患者さんまで、その症状の現れ方は様々です。40~50歳くらいから徐々に進行していくケースが多く、視力が0.1以下に下がるケースは60歳以上でも43%と半分以下に過ぎません。ただ、視力がある程度保持されている症例でも、視野狭窄が進んでいる場合には日常生活に著しい障害がもたらされます。視野狭窄は進行しても自覚しづらく、危険の接近を見落としがちなので注意が必要です。
  • ロービジョンケア
  • 眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても低視力(おおむね0.3未満)であったり、見える範囲が狭かったり、コントラストの低下があるなど、視機能に大きなハンディキャップがあることを「ロービジョン」といいます。網膜色素変性が進行するとロービジョン者になりますので、それに応じたケアが必要になります。視力低下に対しては単眼鏡や拡大読書器が、視野狭窄に対しては凹レンズを組み込んだ眼鏡や白杖が、羞明に対しては遮光眼鏡などの機器が使われます。また、ロービジョン者はコントラストが低いものや淡い色彩のものを認識することが苦手です。底の白いお茶碗に残ったご飯や、白いマグカップに注がれた牛乳、白いドアに付いた淡い色のドアノブには気付きません。患者さんに見えやすいように、ご飯は底に濃い色の付いた茶碗で、牛乳は黒いカップ(コーヒーは白いカップ)で給仕し、白いドアには濃い色のドアノブを取り付けるなどの配慮が必要になります。
    尚、ロービジョンケアの相談に対応してもらえる医療機関はこちらです
    日本ロービジョン学会 ロービジョン対応医療機関
  • <網膜色素変性特有の検査>
  • 網膜電図

    網膜電図(Electroretinogram:略称ERG)は、目に光を照射すると、網膜にある視細胞がその刺激を受け、次々に網膜内の細胞で電気信号に変換して脳の中へ伝える現象を利用して、網膜の光に対する反応を記録するものです。
    暗室のベッドで横になり、点眼麻酔をして、電極を埋め込んだ特殊なコンタクトレンズを装着、その後、眼球内の網膜に光を照射すると、網膜と角膜の間にある電位(静止電位)に変化が生じますので、この電位変化を増幅して記録します。網膜色素変性では、電位変化が初期から異常を示し、α波(視細胞の活動を表す)、β波(主として双極細胞とミュラー細胞の活動を表す)に高度の減弱が見られ、消失型をとることが多いです。

    ※双極細胞…視細胞からの信号を神経節細胞へと送る細胞。光刺激を受けた時に興奮するon型と抑制されるoff型が存在します。
    ※ミュラー細胞…網膜が障害をうけるとこの細胞が分裂・移動し、視細胞を含む神経細胞に分化します。

    蛍光眼底造影

    腕の静脈から蛍光色素(フルオレセインまたインドシアニングリーン)を注射した後、特殊な眼底カメラで網膜の血管の連続写真をとります。血液に入った色素は体内を循環して、やがて網膜や脈絡膜の血管に流れて血管を浮かび上がらせます。そのため、眼底検査では確認できない細かな新生血管の存在や新生血管からのしょう液成分の漏れなどが明らかになります。
    ※脈絡膜…強膜(白目の部分)の内側、網膜の外側にあって、眼球や網膜に酸素や養分を補給したり、眼球内の老廃物を運び出したりしています。
    ※しょう液…血液中の液性成分。脈絡膜の血管から新生血管が発生し、黄斑部の網膜色素上皮の下やその上の感覚網膜との間に入り込んでしょう液を漏出させると、浮腫(黄斑浮腫)が生じます。


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