- 1.嚥下(えんげ)性肺炎
パーキンソン病が進行すると喉の筋肉が弱まったり、こわばったりするため、食べ物や飲み物を口から胃へスムースに送りにくくなる障害(嚥下障害)が現れます。この時、食物が誤って気道に入り肺炎を引き起こすことがあります。これを嚥下性肺炎(又は誤嚥性肺炎)といいます。治療は化学療法、胸部理学療法にておこなわれますが、胃の内容物を戻して誤飲した場合には胃酸による重篤な炎症を引き起こすため、即効性ステロイドの静注が併用されます。
- 2.骨折
病気の進行に伴って転倒しやすくなるため、骨折特に足の大腿骨頸部の骨折を起こすケースが多く見られます。骨折は手術療法が原則ですが、骨折を契機に寝たきりになることがあるので、患者さんの転倒には注意を払う必要があります。
- 3.悪性症候群
抗パーキンソン病薬、特にL-ドパの服薬を急に中断したり、感染や脱水などが引き金になって、悪性症候群(高熱、高度な固縮、意識障害よりなる)にかかることがあります。これは早期に治療しないと致命的となる合併症で、血清CKが著しく上昇することが知られています。
重症例では、急性横紋筋融解や血管内凝固症候群を誘発します。
※血清CK…CK(クレアチンキナーゼ)は筋肉や脳に多量に存在する酵素で、筋収縮のエネルギーの代謝の過程で重要な役割を果たしています。筋肉や脳の組織細胞に障害が起こると血清中のCKの値が上昇します。
※横紋筋…筋繊維を構成するアクチンとミオシンが規則正しく並んでいるため、外見上、横紋に見える筋肉。骨格筋と心筋に更に分けることができます。横紋筋融解症では横紋筋細胞が融解し、骨格筋の壊死、細胞内の成分の血中への流出(血中ミオグロビンやCKの上昇)、筋肉痛、麻痺、赤褐色尿、放置した場合には腎不全などの臓器機能不全を引き起こし、死に至ります。
※血管内凝固症候群…出血箇所のみでおこるべき血液凝固反応が、血管内で無秩序に起こる症候群。原因はいくつかありますが、パーキンソン病の場合、細胞内の組織凝固因子の流出によって起こります。