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6月25日(月)
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くすり

    SLEの主たる治療に用いられる薬には、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド薬、免疫抑制薬があります。
  • 1.非ステロイド抗炎症薬
  • 解熱、鎮痛、抗炎症作用があり、発熱や関節痛(炎)、筋肉痛(炎)、こわばりなどに対して用いられます。薬の種類は多く、種類によって使用の仕方、使用量、効果の持続時間や副作用などが異なります。よく用いられる薬は、ジクロフェナックナトリウム(ボルタレン)、インドメタシン(インダシン)、スリンダク(クリノリル)、ロキソプロフェン(ロキソニン)、メフェナム酸(ポンタール)、アスピリン(バファリン)、イブプロフェン(ブルフェン)、ナプロキセン(ナイキサン)などです。経口の他、座薬、貼付薬、外用薬としても用いられます。副作用は、胃腸障害、発疹、肝障害、腎機能障害、血液障害、高血圧、喘息などがあります。日本人は胃腸障害がみられやすいため、プロドラッグ(※1)や徐放剤など胃腸障害の少ない改良薬が開発されてきました。また、副作用を軽減するためにCOX-2を選択的に阻害する薬(※2)も用いられます。微熱や軽度の疼痛に際しては、非ステロイド抗炎症薬の代わりに胃腸障害の少ないアセトアミノフェンが用いられることがあります。
    ※1 プロドラッグ 体内で吸収されてから薬の効果が発揮される薬剤で、直接胃に作用しない。
    ※2 COX-2選択的阻害薬 炎症をもたらすプロスタグランジンを合成する際に関わる酵素COX-2を選択的に阻害する薬剤で、体内にとって生理的に必要なプロスタグランジンの合成に関わる酵素COX-1を阻害しないため副作用が少ない。
  • 2.ステロイド薬
  • 1)種類
    ステロイド薬は、元来ヒトの副腎皮質で産生されるホルモンを化学合成したものです。即効性があり、強力な抗炎症作用と多量投与により免疫抑制作用もあることからSLEでは中心となる薬剤です。ステロイド薬にはいくつかの種類があり、薬剤によって対応する量や炎症を抑える強さ、作用時間などが異なります。ステロイド薬の種類と対応する量、生物学的活性を表4に示します。対応量はプレドニゾロンが基準となり1錠5mgですが、例えば、この量はベタメタゾンの1錠0.5mgに対応しています。コーチゾンとコーチゾールは血中半減期が短く、抗炎症の強さも小さく、反面、デキサメタゾン、ベタメタゾンは血中半減期が長く、抗炎症の強さも大きいのですが、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンは血中半減期、抗炎症の強さ共にその中間に位置づけされます。通常、経口投与で用いられます。ステロイドパルス療法に用いられるのはメチルプレドニゾロンで、1日400-1000mgを3日間静脈注射します。


    2)副作用
    ステロイド薬(錠剤)を服用していると次のような副作用があらわれることがあります。
    主な副作用による合併症とその対策を表5に示します。
    (1)食欲増進による肥満
    食欲が亢進し、太りやすく肥満になりがちです。食事のカロリー量を制限して、標準体重を維持するようにしましょう。
    (2)中心性肥満
    脂質の代謝異常によって、脂肪がたまって胴体が膨らみ、筋肉が委縮して手足が細くなります。顔が満月のように丸く膨れる「ムーンフェイス」も症状の一つです。薬の減量に従い症状が徐々に改善します。
    (3)感染症
    ステロイド薬により白血球の機能が低下し、免疫も抑えますので細菌やウイルスに感染しやすくなります。手洗いやうがいの励行、清潔を心がける、人ごみを避ける、ワクチン接種など、予防対策が重要です。感染症に罹患した場合には各種抗生物質で治療します。
    (4)骨粗しょう症
    ステロイド薬によって、骨を作る「骨芽細胞」の働きが抑制されたり、骨のカルシウムをくっつける作用があるコラーゲンの生産が妨げられたり、腸管から食物中のカルシウム吸収が抑えられたりするため骨粗しょう症になりやすくなります。予防的にカルシウム製剤や活性型ビタミンD3、ビタミンK2などが投与され、圧迫骨折が危惧される場合にはビスホスホネート製剤が用いられます。
    (5)ステロイド糖尿病
    ステロイドは、蛋白や脂肪の分解を促進させるとともに糖新生を促進させブドウ糖を産生します。グリコーゲン合成酵素も誘導され、肝臓でグリコーゲンも蓄積されます。また、インスリンに拮抗して筋肉や末梢の組織における糖の利用を抑制するために血糖の上昇をもたらします。これらにより高血糖さらには尿糖をみます。治療は適切なカロリー摂取による食事療法と運動療法が基本で、程度により各種経口糖尿病薬、インスリンで治療します。
    (6)高脂血症
    ステロイド薬の常用により総コレステロールや中性脂肪などの血中脂質が増加し、動脈硬化症の要因となります。治療は、食事療法と運動療法が基本で、薬剤ではプラバスタチンやアトロバスタチンなどのスタチン系の薬剤、フィブラート系薬剤、ニコチン製剤などを用い治療します。
    (7)精神症状
    ステロイド精神病では、多幸感、躁状態、情緒不安定、抑うつ、不眠、興奮、多弁、錯乱などがあらわれやすくなります。症状は、投与量が多い場合、投与期間が長くなる場合などでみられますが、患者さんの性格や環境によっても相違がみられます。薬の服用量が減っていくにつれて解消されますが、全身性エリテマトーデス自体による精神症状(中枢神経ループス)と区別がつかない場合もあります。
    (8)高血圧
    ステロイド薬を始めて数日から数週間で認めることがあります。減塩による食事療法と降圧薬で治療します。
    (9)ステロイド白内障
    長期間にステロイド薬を服用すると白内障をきたすことがあります。症状が急速に悪化することはありませんが、定期的に眼科の診察が必要です。
    (10)ステロイド緑内障
    眼圧が異常に高まって視神経が障害され視野異常をきたすことがあります。点眼薬やレーザー手術などで治療します。ステロイド薬の減量が必要な場合もあります。
    (11)胃・十二指腸潰瘍
    粘膜障害により胃・十二指腸潰瘍をきたすことがあります。ステロイド薬と非ステロイド抗炎症薬の併用でもみられ、注意が必要です。プロトンポンプ阻害薬(消化性潰瘍治療薬)で治療しますが、その他、H2ブロッカーやプロスタグランジン製剤などが予防投与されます。
    (12)心筋梗塞
    全身性エリテマトーデスによる血管の炎症やステロイド薬による高脂血症、糖尿病、高血圧などの合併によって動脈硬化が進み、また、抗リン脂質抗体陽性の場合には血栓症が起こりやすく、心筋梗塞を起こしやすくなります。塩分や脂肪を控える食事につとめ、合併症の治療を行います。
  • 3.免疫抑制薬
  • 免疫抑制薬は、リンパ球などの免疫に関わる細胞の増殖や活性化を抑えて免疫抑制効果を発揮します。ステロイド薬のような即効性はなく、また重篤な副作用もあります。そのため、ステロイド薬で十分効果がみられない場合や副作用でステロイド薬の継続が困難な場合、ステロイド薬の減量が困難な場合に用いられます。多くはステロイド薬と併用されます。SLEに用いられる免疫抑制薬はいくつかあり、それを表6に示します。この中でSLEに医療保険が適応になっているのは、ミゾリビンとタクロリムスでしたが、公知申請により、アザチオプリンとシクロホスファミドも保険適用の対象となりました。
    欧米で用いられているミコフェノール酸モフェチルは、日本ではまだ保険適用外です。
    ※公知申請…薬事承認(保険適用)されている医薬品を、承認されている効能・効果以外の効能・効果のために処方する、適応外処方に関して、海外では承認されているなど、科学的根拠に基づいて医学薬学上公知であると認められる場合に、臨床試験の全部、あるいは一部を新たに実施しなくても、効能・効果の承認が可能となる制度です。

    1)ミゾリビン
    ミゾリビンは、日本で開発された免疫抑制薬でループス腎炎に用いられます。使用量は1日150?300mgです。副作用は比較的少ないのですが、造血器(骨髄)の障害により白血球の減少や貧血、血小板減少がみられることがあり、肝障害、発疹などをみることもあります。ミゾリビンに類似した作用機序を持つものにアザチオプリン、メトトレキサートなどがあります。

    2)アザチオプリン
    使用量は、1日体重1Kgあたり1~2mgが用いられます。ミゾリビンよりもやや強く、副作用では、骨髄抑制によって白血球減少や貧血、血小板減少が起こりやすく、感染症、肝障害、発疹、間質性肺炎などもみることがあります。

    3)シクロホスファミド
    1日の服用量は、体重1Kgあたり1~2mgが用いられます。また、急速に進行するループス腎炎や中枢神経障害、間質性肺炎などに対しては1回500-1000mgの多量を静脈注射で投与し、3-4週毎に繰り返す間欠多量静注療法が行われることがあります。効果が優れている半面、骨髄抑制に加え、感染症、出血性膀胱炎、悪性腫瘍、卵巣機能障害(無月経など)や精子の減少などの生殖器障害、間質性肺炎、脱毛、発疹などの重い副作用がありますので、これらに留意しながら用いられます。

    ※出血性膀胱炎…「シクロホスファミド」が体内で代謝されてできた物質によってもたらされる膀胱障害です。

    4)シクロスポリン
    難治性のネフローゼ症候群を伴うループス腎炎に対してステロイド薬と併用されます。使用量は、1日体重kgあたり3-6mgが経口で用いられます。高血圧、多毛、腎機能障害、高血糖、骨髄抑制、感染症などの副作用がみられますが、薬剤の血中濃度を測定しながら投与量を調整し、副作用をきたさないよう留意して用います。

    5)タクロリムス
    主に難治性のループス腎炎に対してステロイド薬と併用して用いられます。免疫担当細胞、特にT細胞の活性化を抑えることにより免疫抑制効果を発揮しますが、その機序はシクロスポリンに類似します。使用量は、1日1.5-3mgで、経口投与されます。副作用は、シクロスポリンに類似していますが、腎機能障害、高血糖、高血圧、感染症、リンパ腫などです。なお、手のふるえ、吐き気、頭痛、顔のほてり、かゆみなどの副作用をみることもあります。
  • 4.生物学的製剤
  • 現在、関節リウマチの治療に用いられている生物学的製剤は画期的な治療効果をあげていますが、SLEにおいても、まだ医療保険の適応にはなっていませんが、期待の持てる薬剤が報告されています。Belimumab(ベリムマブ)が、アメリカではSLEの薬としては56年ぶりにFDA(アメリカ食品医薬品局)に承認され、日本でも治験が始まりました。その他、抗IFNα抗体、抗IL-6抗体(シルクマブ)、抗CD22抗体(エプラツズマブ)、TACI/IgG1Fc融合蛋白(アタシセプト)などの臨床試験が進められています。
    ガンマグロブリン大量療法も生物学的製剤による治療法と考えられますが、難治性の血小板減少性紫斑病に対して脾臓の摘出術を行う場合、一時的に血小板を増加させるために用いられることがあります。
    その他、欧米では抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンが長年SLEの治療に用いられていますが、日本でも使用が検討されています。
    (参 照:橋本博史「全身性エリテマトーデス臨床マニュアル第2版」2012、P137-179、橋本博史「ともに生きるーリウマチ/膠原病」2008、 P89-119、橋本博史「新/膠原病教室」2009、P63-87、松井征男『全身性エリテマトーデス 正しい治療がわかる本』2007、 P42-63)
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