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8月21日(火)
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疾患

  • 定義・概念
  • 本来体内に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃してくれる「免疫」が、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう病気を「自己免疫疾患」といいます。全身性エリテマトーデス(Systematic Lupus Erythematosus:SLE)はその代表的な疾患ですが、炎症により全身に様々な症状や病変がみられます。若い女性に好発し多臓器障害を伴いますが、症状や臓器障害は重いものから軽いものまで様々で人によって異なります。また、経過中、良い状態と悪い状態を繰り返すのが特徴です。以前は、診断が非常に難しく、早期に適切な治療が行えずに、手遅れになることもありました。近年研究が進み、診断技術の進歩と治療法の発達により早期発見、早期治療が可能になったお陰で、多くの患者さんが健常者と同じくらいに長生きできるようになりました。

    ※ systemic lupus eryhtematosus
    「systemic」は、「全身の」という意味で、eryhtematosusは「赤い斑点」を意味します。
    「Lupus Erythematosus」は、顔の皮膚(鼻をはさんで頬の部位)に出来る発疹が、狼に噛まれた痕のような赤い紅斑のようである(狼の顔にある斑点を連想させるという説も)ことから名付けられました(ループスとはラテン語で「狼」の意味です)。
  • 疫学
  • 平成5年の全国疫学調査では全国受療患者数は32,599人でした。男女比は1:9で女性に多く発症します。発症年齢は女性では20~30代が多いですが、男性では年齢による発症率のちがいがあまり見られません(図1)。
    平成23年度における患者数は特定疾患医療受給者証交付ベースで59,553人と、増加傾向にあります。
    (参照:『難病の診断と治療指針1改定版』疾病対策研究会 2003、P33、難病対策研究会監修『平成22年度版難病対策提要』太陽美術、P522、橋本博史「全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第2版」)2012、P98-1914難病情報センター「特定疾患医療受給者証交付件数)
    http://www.nanbyou.or.jp/entry/1356

  • 自立率
  • 平成10年度の厚生省の推計(平成7年度の調査をベースに推計)によると、全身性エリテマトーデスの患者数は46,369人。このうち自立している方は93.2%、一部介助の方は5.8%、全面介助の方は1.0%という割合になっています。
    (参照:難病対策研究会監修『平成19年度版難病対策提要』太陽美術、P414)
  • 成因
  • 全身性エリテマトーデスの根本的な原因は、現在のところわかっていません。病気にかかり易い体質・素因があって(※1)、これに免疫学的要因と環境因子(※2)が複雑に関わって発症するのではないかと考えられています。
    このうち、免疫学的要因では、従来細菌やウイルスに対抗し身体を守るはずの免疫反応が自分の身体の組織に対して反応する、いわゆる自己免疫の異常によるものです。そのため、SLEでは、自己の組織に対する抗体(自己抗体)、特に抗核抗体が産生され、抗原であるDNAなどの核成分と結合して免疫複合体が形成されます。この免疫複合体が組織に沈着すると、生体防御を担う補体の活性化を伴って炎症が惹き起されます。また、抗体そのものが細胞を障害することもありますし、自己の組織と反応する免疫担当細胞(主にリンパ球)が組織を障害することもあります。発症の仕組みと臓器の障害を図2に示します。SLEでは、女性が圧倒的に多いのですが、性染色体の異常はなく、むしろ女性ホルモンが自己免疫の反応を増強させるのに一役を担っていると考えられています。

    ※1 一卵性双生児で片方がSLEを発症し、もう片方がSLEを発症する一致率は24%程度ですが、この頻度は二卵性双生児の一致率やSLEの患者さんの家族内の発症率と比べると非常に高く、何らかの遺伝的素因があるとされています。しかし、一卵性双生児の場合、もう片方が発症しない率は76%もありますので、遺伝だけでは説明がつかず、環境因子も重要視されているのです。現在、SLEに罹り易い遺伝子の解析が精力的に進められており、候補となる遺伝子が複数見つかっています。
    ※2 紫外線、ウイルスの感染、ある種の薬物、妊娠・出産、美容形成、外科手術、寒冷、ストレスなどにより引き起こされることがあります。

    ※自己抗体…自分の体や組織を異物(抗原)のように認識して、それを攻撃する「抗体」ができることがあります。これを「自己抗体」といいます。自分の身体の成分は「自己抗原」といいます。
    ※抗核抗体…DNAなど核内にある構成部分を抗原とした抗体
    ※免疫複合体…抗原と抗体が結合したもの

    (参照:『難病の診断と治療方針1改定版』疾病対策研究会 2003、P33、
    橋本博史『全身性エリテマトーデス臨床マニュアル』2012、P22-49、
    松井征男『全身性エリテマトーデス 正しい治療がわかる本』2007、P116-122)
  • 臨床症状
  • 1、病気の始まりにみられ、SLEを思わせる症状は以下の様なものです。
    身体がだるい、疲れ易い、食欲がないなどの全身症状とともに原因が分からない発熱、身体のあちこちの関節が移動しながら痛む、頬や前胸部・手指・耳たぶなどの露出部にみられる赤い発疹、頭の髪が抜ける脱毛、冷水や冷たい風に触れた時に指先が真っ白になって痛みやしびれを感じるレイノー現象、口の中や鼻咽頭の粘膜に痛みのない潰瘍、などです。このような症状のきっかけ(誘因)は、紫外線照射(日光過敏)やウイルス感染、薬剤過敏、妊娠・出産、外科手術、美容形成術、寒冷・ストレスなどですが、きっかけが明らかでない場合も多いのです。SLEの初発症状を図3に示します。

    2、SLEの経過中は以下のような様々な症状がみられます(図4)。
    (1)皮膚/粘膜の症状
    上記の赤い発疹、脱毛、レイノー現象、口内/鼻咽頭粘膜潰瘍などがみられます。頬に出来る赤い発疹は、蝶が羽を広げているような形をしているので「蝶形紅斑」とも呼ばれます。また、円板状紅斑(ディスコイド疹)と呼ばれる慢性の発疹もみられ、次第に広がると中が白く色が抜け、周りが堤防上に隆起するようになります。赤い発疹は紫外線(日光)に対して過敏症のある方に多くみられます。
    (2) 関節/筋症状
    手指、手、肘、肩、膝、足などの関節が移動性に痛みが生じますが、腫れることは稀です。朝のこわばりもみられますが、関節リウマチの様に関節が破壊し変形をみることは稀です。
    (3) 腎臓の障害
    最も侵されやすい内臓の障害で、ループス腎炎とも呼ばれます。尿検査で明らかになることが多いため、検査をしない場合には異常があっても腎臓が侵されていることがわからないこともあります。種々の程度の蛋白尿や顕微鏡で観察すると赤血球尿、白血球尿、円柱尿などがみられます。多量の蛋白尿がでていますとむくみがみられるようになります。血圧は、通常正常ですが、腎機能が著しく低下しますと高血圧がみられるようになります。
    (4) 精神神経症状
    てんかん様の痙攣や意識がなくなる発作、不安感、抑うつ状態、興奮状態、失見当識(時間や場所や人に関して正しく認識できなくなること)などをみることがあります。また、麻痺や末梢のしびれ、髄膜炎、視力障害、偏頭痛などの多彩な症状を見ます。
    (5) 心臓と肺の症状
    肺を覆っている膜(胸膜)や心臓を覆っている膜(心膜)に炎症が生じ、水がたまり
    胸膜炎や心嚢炎(しんのうえん)を起こすことがあります。これにより胸痛や動悸、息切れなどの症状がみられます。その他、稀に心筋炎や間質性肺炎、肺高血圧症をみることがあります。
    (6)消化器の症状
    腹膜炎、イレウス、腸炎などをみることがありますが、時に急性腹症といって腹痛をきたし緊急に手術を必要とすることもあります。また、この病気のために肝機能障害をみることもあります。

    (参照:橋本博史「全身性エリテマトーデス臨床マニュアル」2006、P54?59、橋本博史「新/膠原病教室」2009、P121?126、橋本博史「改訂新版:膠原病を克服する」2008、P145?152)
  • 検査
  • 1.血液と尿の一般検査
    一般検査では、赤沈の亢進、正色素性正球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、白血球減少、リンパ球減少、血小板減少、高ガンマグロブリン血症などをみますが、頻度が多いのは、白血球減少とリンパ球減少、血小板減少です。炎症を反映するCRPは、SLEが活動期にあっても通常、陰性か弱陽性を示します。腎臓の障害があれば、尿蛋白や赤血球尿、白血球尿、円柱尿などをみます。腎機能が低下しますと血清のクレアチニンや尿素窒素の増加をみます。

    2.免疫学的検査
    SLEは自己免疫疾患ですので、健康な人の血液には存在しない自己抗体を検出することが出来ます。
    そこで以下の検査を行って、どのような自己抗体がみられるのか、SLEに特異的な自己抗体がみられるかどうかを調べます。
    (1)抗核抗体検査
    抗核抗体とは、細胞の核内にある様々な成分に対してできる抗体であり、SLEの患者のほとんどがこの抗体を持っています。その存在有無は、蛍光抗体間接法という検査法で調べることが出来ます(一次スクリーニング検査)。蛍光で染色されるタイプによってどのような核成分(2本鎖DNA、ヒストン、酸性核蛋白、セントロメア、核小体など)に対する抗体を持っているかをおおよそ判断することが出来ますが、それぞれの抗体は別の特異的な検査法による検査(二次スクリーニング検査)で確認します。
    SLEに特異的にみられる抗体は、抗2本鎖DNA抗体、DNAとヒストンの結合物に対する抗体(LE因子ともいいます)、抗Sm抗体などです。これらが陽性の場合には、SLEが強く疑われますし、抗2本鎖DNA抗体の抗体価は病気の活動性や治療による改善と平行して動きますので、病気の経過をみる指標としても有用です。その他、抗U1-RNP抗体や抗SS-A抗体/抗SS-B抗体なども陽性をみることがありますが、これらは他の膠原病でも陽性を示し、前者はレイノー現象と、後者は乾燥症状や発疹、日光過敏症などの症状と関係してみられます。SLEにみられる抗核抗体と関連する症状を他の自己抗体と併せて表1に示します。
    (2)抗リン脂質抗体
    抗リン脂質抗体には、抗カルジオリピン抗体、抗ベータ2グリコプロテインI(β2GPI)抗体、ループス抗凝固因子、ワッセルマン(梅毒)反応偽陽性などが含まれます。これらの抗体が陽性の場合には、血液が凝固し易くなり、そのため動脈や静脈に血栓症をきたします。また、妊娠しますと流産や死産をきたし易くなります。しばしば血小板減少をみます。
    (3)その他の自己抗体
    赤血球に対する抗体(クームス抗体といいます)は溶血性貧血と、リンパ球抗体はリンパ球減少と、血小板抗体は血小板減少と関係してみられます。抗リボゾーム抗体の一つである抗P蛋白抗体は精神神経症状と関係して認めることがあります。関節リウマチをはじめ多くの膠原病で認められるリウマトイド因子もSLEで認められます。
    (4)血清補体価
    抗原と抗体が結合した免疫複合体は補体の消費を伴って組織に沈着し炎症をもたらしますが、これにより血清中の補体価が低下します。通常、補体の蛋白成分であるC3とC4ならびに活性化として測定される血清補体価(CH50)を調べます。SLEの活動期にはこれらの補体価が低くなり、治療により改善することが多いので、この推移は病状の勢いをみるのに有用です。


    3.画像検査
    SLEでは、腎、脳神経、心臓、肺、消化管、骨関節などの障害がみられるため、これらの障害の有無と障害の程度を知るためにレントゲン検査、CTスキャン、MRI/MRA、超音波検査、シンチグラフィー、骨密度、血管造影などの検査を行います。

    4.生理学的検査
    これには、心電図、心音図、呼吸機能検査、脈波、脳波、腎機能、筋電図、末梢神経伝導速度などが含まれ、それぞれ臓器の機能障害の程度を調べます。

    5.生検による組織学的検査
    診断や病気の状態を把握するために皮膚、腎、肺、筋、血管、末梢神経などの生検を行い、病理組織学的検査を行うことがあります。特に、腎臓は組織の所見により予後の予測や治療方針を決めるのに役立ちます。SLEの腎障害は組織別に、1型 微小メサンギウムループス腎炎、2型 メサンギウム増殖性ループス腎炎、3型 巣状ループス腎炎、4型 びまん性ループス腎炎、5型 膜性ループス腎炎、6型 進行した硬化性ループス腎炎(末期の腎不全)の6型に分類されますが、この中で4型の進行が早く予後も不良で早期の治療が必要となります。5型は多量の蛋白尿をみるネフローゼ症候群をきたすことが多いのですが、比較的ゆっくりと経過します。また、6型では血液透析が適応になることが多いのです。

    (参照:橋本博史「全身性得エリテマトーデス臨床マニュアル」2006、P42?52、橋本博史「新/膠原病教室」2009、P49?59、P126?127)
  • 診断
  • SLEの診断は、臨床症状と検査所見を総合的に判断して行われます。最終的には、1982年にアメリカリウマチ学会から提唱された世界共通の診断基準に照らし合わせて確認します。この基準は1997年に改定されましたが、この基準は日本においても用いられ、厚生労働省の特定疾患治療研究事業のSLE認定基準としても用いられています。それを以下に示します。
    診断の目安になる項目は以下の11項目です。
    (1) 顔面紅斑
    (2) 円板状皮疹
    (3) 光線過敏症
    (4) 口腔内潰瘍(無痛性で口腔あるいは鼻咽腔に出現)
    (5) 関節炎(2関節以上で非破壊性)
    (6) 漿膜炎(胸膜炎あるいは心膜炎)
    (7) 腎病変(0.5g/日以上の持続的蛋白尿または細胞性円柱の出現)
    (8) 神経学的病変(痙攣発作あるいは精神障害)
    (9) 血液学的異常(溶血性貧血、または4,000μL以下の白血球減少、または1,500/μL以下のリンパ球減少、または10万/μL 以下の血小板減少)
    (10) 免疫学的異常(抗2本鎖DNA 抗体陽性、または抗Sm 抗体陽性、または抗リン脂質抗体陽性(抗カルジオリピン抗体、ループス抗凝固因子、梅毒反応偽陽性のいずれか一つ))
    (11) 抗核抗体陽性
    [診断の判定]
    上記項目のうち4項目以上を満たす場合、全身性エリテマトーデスと診断する。
    さらに、SLEの専門家による国際的な新しい分類基準(SLICC基準)が案として2012年に提唱されています。これを以下に示します。

    SLEの新しい分類基準改定案(Systemic Lupus International Collaborating Clinics Classification Criteria; SLICCによる、2012)

    SLICC基準
    1、下記の基準項目17項目より分類する場合;
    臨床的基準項目11項目と免疫学的基準項目6項目の中でそれぞれ1項目以上、計4項目以上あればSLEと分類する。
    または、
    2、腎生検所見でループス腎炎に合致する所見があり、抗核抗体もしくは抗dsDNA抗体が陽性の場合、SLEと分類する。


    SLICC基準に用いられる臨床的基準項目と免疫学的基準項目:
    臨床的基準項目
    1、急性皮膚型ループス(以下を含む);ループス頬部紅斑、水泡性ループス、SLEの中毒性表皮壊死剥離症、斑丘疹状皮疹、日光過敏性皮疹(皮膚筋炎を否定)、
    または亜急性皮膚型ループス
    2、慢性皮膚型ループス(以下を含む);円板状紅斑(限局型、全身型)、
    肥大性(疣贅性)ループス、ループス脂肪織炎(深在性)、粘膜ループス、LE tumidus, 凍傷ループス、円板状ループス/扁平苔癬重複
    3、口内潰瘍(他の原因を除く);口蓋(頬部、舌)潰瘍、または鼻粘膜潰瘍
    4、瘢痕を伴わない脱毛(瀰漫性の菲薄化または断絶をみる髪の脆弱性、他の原因を除く)
    5、腫脹ないし貯留液をみる2関節以上の滑膜炎、または2関節以上の圧痛と30分以上の朝のこわばり
    6、漿膜炎(以下の胸膜炎ないし心嚢炎);
    1日以上みられる典型的な胸膜炎、または胸水貯留、または胸膜摩擦音
    1日以上みられる典型的な心嚢痛(仰臥位でみられる疼痛が座位で消失)、または心嚢液貯留、または心嚢摩擦音、または心電図でみられる心嚢炎
    7、腎症;蛋白尿/クレアチニン比(または24時間尿)で500mg蛋白尿/24時間、または赤血球円柱
    8、神経症状;痙攣、精神症状、多発性単神経炎(原発性血管炎など、他の
    原因によるものは除く)、脊髄炎、末梢ないし脳神経障害(他の原因によるものは除く)、急性錯乱状態(他の原因によるものは除く)
    9、溶血性貧血
    10、白血球減少(少なくとも1回は<4000mm3)、またはリンパ球減少(少なくとも1回は<1000mm3)、(いずれも他の原因によるものは除く)
    11、血小板減少(少なくとも1回は<100000mm3、他の原因によるものは除く)
    免疫学的基準項目
    1、抗核抗体陽性
    2、抗dsDNA抗体陽性
    3、抗Sm抗体陽性
    4、抗リン脂質抗体陽性、以下のいずれかの方法による。
    ループス抗凝固因子陽性、梅毒反応を見るRPR(rapid plasma regain)の偽陽性、抗カルジオリピン抗体(IgA,IgG,または IgM)中等度以上の抗体価で陽性、抗β2グリコプロテインI抗体(IgA,IgG,またはIgM)陽性
    5、血清低補体価;C3低値,C4低値,CH50低値
    6、直接クームス試験陽性(溶血性貧血を認めない場合)

  • 治療
  • 1.SLEの治療の目標と方針
  • SLEでは、軽い症状から重い症状まで、内臓の障害も軽いものから重いものまで、また、急性期から慢性期まで様々な病状がみられます。治療はこれらの病状によって異なります。基本的には、急性期の症状を抑えることだけではなく、重篤な内臓の機能障害を阻止し、必要最小限の治療薬で長期間良い状態を持続し、社会復帰できることを目標とします。そのため、SLEの診断がついたら病状の把握を行います。これにより病状に応じた治療を開始します。従って、同じSLEと診断されていても患者さんによって治療内容が異なります。以下、SLEに用いられる治療法と病状別の具体的な治療内容について述べます。
  • 2.SLEの治療法
  • 1)薬物療法(くすりの項も参照して下さい)
    (1)非ステロイド抗炎症薬
    ステロイド薬とは異なる炎症を抑える作用を持った薬です。炎症を抑える強さはステロイド薬よりも劣り、免疫反応を抑える作用はありませんが、解熱や関節・筋肉の痛みを抑えるのにしばしば用いられます。また、血栓症予防のために少量アスピリンがよく用いられます。非ステロイド抗炎症薬には、アスピリン、ジクロフェナック、ロキソプロフェン、イブプロフェンなどが含まれます。多くは経口で投与されますが、座薬、注射薬、貼付剤、外用薬などでも用いられます。
    (2)ステロイド薬
    炎症を抑える作用は強力で、多量使用で免疫反応も抑えます。即効性で救命的薬剤ですので、SLEの中心的な治療薬です。大・小さまざまな副作用もみられます。ステロイド薬にはいくつかの種類がありますが、基準となる薬剤はプレドニゾロン(プレドニン)です。通常、重篤な内臓障害がある場合には多量用いられ、軽症の場合にはより少ない量で治療されます。経口投与が一般的ですが、パルス療法(メチルプレドニゾロン1日0.4-1gを3日間連続投与)など大量を使用する場合には静脈注射による投与が行われます。
    ステロイド薬の種類と副作用は、くすりの項でくわしく述べます。
    (3)免疫抑制薬
    SLEで用いられる免疫抑制薬は、ミゾリビン、タクロリムス、シクロスポリン、シクロフォスファミド、アザチオプリンなどです。これらは、免疫反応にかかわす細胞を障害することにより免疫反応を抑制しますが、ステロイド薬のように即効性はなく、効果がみられるまでに時間がかかります。多くはステロイド薬の効果が不十分な場合、ステロイド薬の減量を図る場合、ステロイド薬の副作用でステロイド薬が使用できない場合、などに用いられます。通常経口投与で用いられますが、特殊な使用法として、進行性の腎臓の障害や精神神経症状などに対してシクロフォスファミドの大量間欠静注療法(1回500?750mg、1?3ヶ月毎)があります。
    (4)その他の薬物療法
    ガンマグロブリン大量静注療法は、血小板減少性紫斑病を伴った患者さんに用いられることがあります。また、日本では保険適用外薬剤ですが、欧米では、免疫抑制薬のミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)と抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンがSLEの治療に用いられています。生物学的製剤ではBelimumab(ベリムマブ)が、アメリカではSLEの薬としては56年ぶりにFDA(アメリカ食品医薬品局)に承認され、日本でも治験が始まりました。その他、抗IFNα抗体、抗IL-6抗体(シルクマブ)、抗CD22抗体(エプラツズマブ)、TACI/IgG1Fc融合蛋白(アタシセプト)などの臨床試験が進められています。

    2)血漿交換療法
    血漿交換療法は、血液の中を流れている自己抗体や免疫複合体、炎症に関わっている有害物質などを機械的に除去し、病気の進行を抑え、病気の状態を良くしようとする治療法です。ステロイド薬や免疫抑制薬で十分効果が得られない難治性の病態にこれらの薬剤を併用しながら繰り返し治療を行います。

    3)その他の治療法
    血液が固まり易いために血管が詰まりやすくなり、血栓や皮膚潰瘍、内臓の梗塞が起こることがあります。その場合には、種々の抗凝固療法が行われます。又、レイノー現象や肺高血圧症ではプロスタグランジン製剤などの血管を拡げる薬剤が用いられますし、後者ではさらにプロスタサイクリンの持続注入やエンドセリン受容体拮抗薬なども用いられます。腎機能が著しく障害され腎不全に至った場合には血液透析、さらには腎移植が行われます。

    (参照:橋本博史「全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第2版」20062012、P110-146134-179、橋本博史「新・膠原病教室」2009、P63-90、橋本博史「改訂新版・膠原病を克服する」2008、P97-122)
  • 3.病気の状態に応じた治療
  • 1)軽症の場合(表2)
    軽症は、微熱や皮膚の発疹、脱毛、口内潰瘍、関節痛、筋肉痛、レイノー現象などを認めるも症状が軽く、内臓の病変がみられない場合です。皮膚症状や脱毛が主たる症状の場合には、ステロイド薬を含む軟膏などの外用薬で治療し、紫外線を避け、特に日光過敏症のある方は注意します。広範な急性の皮膚の発疹の場合には、ステロイド薬の経口投与を必要とすることがあります。口内潰瘍ではステロイド薬を含む塗布剤で治療します。微熱や関節痛、筋肉痛に対しては非ステロイド抗炎症薬で治療します。効果がみられない場合には、少量のステロイド薬を使用することがあります。レイノー現象に対しては、日常生活で寒冷やストレスなどに留意し、症状が強い場合には種々の血管を拡げる薬剤で治療します。蛋白尿が時々軽度認められたり、胸膜や心膜に少量の貯留液がみられる場合には、ステロイド薬を少量用いて治療します。
    軽症の病態と治療法を表2に示します。


    2)中等症、重症の場合(表3)
    これには、生命に関わる内臓の病変をきたす病気の状態が含まれます。それらは、腎臓の病変(ループス腎炎)、精神神経症状、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、間質性肺炎、肺高血圧症、心筋炎、多量の貯留液を伴う漿膜炎、血管炎による腸管壊死・潰瘍、動静脈の血栓症をきたす抗リン脂質抗体症候群などです。これらの病態の程度は、それぞれ中等症から重症に至るまで様々ですが、治療はステロイド薬が中心となります。病態にもよりますが、通常、体重1kg当たりプレドニゾロン量で0.5-1.5mgの投与量が用いられます。病態が急速に進行する場合には、ステロイドパルス療法といってメチルプレドニゾロン500-1000mgの3日間点滴静脈注射による治療法を先行させることがあります。初回のステロイド薬は、通常2?4週間継続投与し、症状と検査所見をみながら改善していることと悪化していないことを確認し、ゆっくりと少しずつ維持量まで減量していきます。維持量とは、病気をコントロールできる必要最少量のステロイド量のことですが、プレドニゾロンで1日10mg以下を目指します。維持量で長期間良い状態が続き検査でもほぼ正常の状態が持続していれば投薬の中止を検討することになります。
    ステロイド薬で充分効果が得られない場合やステロイド薬の副作用で多量のステロイド薬が使用できない場合には、免疫抑制薬を併用します。よく用いられる免疫抑制薬はブレディニン、タクロリムス、シクロフォスファミド、シクロスポリン、アザチオプリンなどです。通常、経口投与で用いられますが、特殊な治療法としてシクロフォスファミドの大量間欠静脈注射による治療法があります。この治療法は、積極的に病気の状態を良くするために1回500?750mgの量を静脈注射で1?3ヶ月毎に行う治療で、急速に進行するループス腎炎(特に腎生検でIV型のび漫性ループス腎炎)や精神神経症状、急性間質性肺炎などで行われます。
    また、病気の状態に血中の抗DNA抗体、抗リン脂質抗体などの抗体成分や抗原と抗体が結合した免疫複合体が深く関わっていると考えられる場合には、ステロイド薬や免疫抑制薬の併用のもとで血漿交換療法が行われます。
    中等症・重症の病態と治療法を表3に示します。

    (参照:橋本博史「全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第2版」20062012、P148-255134-179、橋本博史「新/膠原病教室」2009、P128-130、橋本博史「よくわかる膠原病」2009、P102-105)
  • 外科手術
  • 時に、腸管の血管炎による腸穿孔や腸管出血、腹膜出血などをきたし、急性腹症として開腹手術を必要とすることがあります。
    また、しばしば、大腿骨頭などに骨壊死を認めることがありますが、歩行障害などにより著しく生活の質が低下し、日常生活上支障を来している場合には、人工骨頭置換術、骨切術などの整形外科的手術が行われます。
    (参照:橋本博史「全身性エリテマトーデス臨床マニュアル第2版」2012、P244-245、P262-269、P304-306)
  • 経過・予後
  • この病気は寛解と増悪(再燃)を繰り返し、多くは慢性の経過をとります。以前は予後不良の病気でしたが、診断技術の進歩と治療法の発達により著しく生命予後が改善し、最近の5年生存率(治療開始から5年後に生存している人の割合)は95%を越えています。死因では、従来、腎不全がトップでしたが、近年は血液透析を含む治療法の発達により腎不全による死亡は著しく減少し、代わって免疫力低下に伴う日和見感染症などの感染症死が最も多く、最近では動脈硬化性病変(心筋梗塞や脳血管障害)や悪性腫瘍による死亡が増加する傾向にあります。
    SLE自体が死因となり予後を左右する病態は、ループス腎炎、精神神経症状、肺高血圧症、間質性肺炎、肺胞出血、劇症型の抗リン脂質抗体症候群などがあります。これらの病態を早期に把握し、早期に治療を開始する必要があります。

    ※日和見感染症…ステロイド薬や免疫抑制薬の服用によって体の免疫力が低下して、正常なら増殖し発症しない細菌や真菌、ウイルスなどの感染症を発病することがあります。
    (参照:『難病の診断と治療方針1改定版』疾病対策研究会 2003、P35、橋本博史「全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第2版」2012、P10-19、橋本博史「新膠原病教室」2009、P130-132)
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