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10月21日(日)
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疾患

  • 定義
  • 既存の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合、これを悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis :MRA)といいます。内臓障害がなくRAの関節病変が進行して、関節の機能が高度に低下して身体障害がもたらされる場合にはMRAとはいいません。
    血管炎を伴った関節リウマチ(Rheumatoid vasculitis)を基礎病態として、神経障害や肺病変など多彩な臨床症状を招く疾患とされています
  • 疫学
  • 我が国でのMRAの頻度はRAの0.6~0.8%とされており、平成5年の全国疫学調査では推定患者数は4,200人です。男女比は1:2と女性に多い病気ですが、RA(男女比1:2~5)に比べると男性の割合は高くなっています。年齢は50~60歳とRA(30~50歳代)に比べて高齢です。また、MRAは罹患期間の長いRAの患者さんに多い疾病です。平成23年度における患者数は特定疾患医療受給者証交付ベースで6,302人と、増加傾向にあります。
    (川合眞一編『慢性疾患薬物療法のツボ 関節リウマチ』日本医事新報社、平成17年、P.5、P.128、難病対策研究会監修『平成19年度版難病対策提要』太陽美術、P.456)

    ◆自立率
    平成10年度の厚生省の推計(平成7年度の調査をベースに推計)によると、悪性関節リウマチの患者数は5,267人。このうち自立している方は56.4%、一部介助の方は29.8%、全面介助の方は13.8%という割合になっています。
    (難病対策研究会監修『平成19年度版難病対策提要』太陽美術、P.414)
  • 成因
  • 関節リウマチ(RA)と同様に、悪性関節リウマチ(MRA)の病因は明らかでありませんが、12%の症例にRAの家族歴が見られ、RAよりも強くHLA-DR4(白血球の血液型であるヒト組織適合抗原の型の一つ)との相関関係が認められることから、遺伝的素因が発症に関与していると推定されています。
    MRAではリウマトイド因子(RF)の陽性率が高く、免疫複合体が高値で、低補体血症を示すことが指摘され、免疫異常が強く病因と関与すると考えられてきました。免疫グロブリンクラス別リウマトイド因子では、IgG-RFが高率で血管炎へ関与していると示唆されています。
    (川合眞一編『慢性疾患薬物療法のツボ 関節リウマチ』日本医事新報社、平成17年、P.128)
  • 臨床症状
  • MRAの臨床病型には、全身動脈型(Bevans型)、末梢動脈型(Bywaters型)、肺臓炎症型があります。
    全身動脈型は、発熱、体重減少、浮腫、皮下結節、紫斑、筋痛、筋力低下、胸膜炎、心膜炎、多発性単神経炎、消化管出血、上強膜炎など、全身の諸臓器を系統的に急速に障害し、予後不良です。組織学的には、結節性多発動脈炎型血管炎(Kussmaul-Maier型血管炎)[全身性の血管炎]を示します。
    末梢動脈型は、皮膚梗塞、皮膚潰瘍、指尖部壊疽、末梢神経炎など、四肢末梢及び皮膚を障害しますが、予後は良好です。
    肺臓炎症型は緩徐進行性の間質性肺炎及び肺線維症を特徴とし、予後は不良です。薬剤性肺障害を鑑別する必要があります。
    (川合眞一編『慢性疾患薬物療法のツボ 関節リウマチ』日本医事新報社、平成17年、P.128-129)
  • 検査
  • 低補体血症の検査

    低補体血症とは血清中の補体成分が低下する症状で、MRAの検査では、C3、C4などの血清補体成分の低下又はCH50による補体活性化の低下を2度以上検出されることを求められます。感作赤血球を50%溶血させる補体の量である血清補体価(CH50)は、C1~C9からなる補体の総活性を反映しており、補体の産生低下、消費亢進で低値になります。
    ※補体…抗原・抗体結合物と出会うと連鎖反応的に活性化し、それらを排除しようとする一連の反応の一つ。このうちC1~C9までの9つの成分を「補体成分」と呼んでいます。

    免疫複合体の検査

    抗原と抗体の結合物のことを免疫複合体といいます。血中で形成されるものを「血中免疫複合体」と呼び、MRAの検査では血中のC1q結合能を有する免疫複合体を測定して、陽性が2度以上検出されることを求められます。
    ※C1q…補体第一成分(C1)成分の亜成分の一つ
  • 診断基準
  • 既存の関節リウマチ(RA)の診断は近年、CCP抗体検査の導入により大きく変わりました。2010年に発表されたEULAR、ACRの診断基準をみたし、さらに血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合、これを悪性関節リウマチ(MRA)と定義し、以下の基準により診断します。(厚生省特定疾患難治性血管炎調査研究班1989年)
  • 1.臨床症状、検査所見
  • (1)多発性神経炎
    知覚障害、運動障害いずれを伴ってもよい
    (2)皮膚潰瘍または梗塞又は指趾壊疽
    感染や外傷によるものは含まない
    (3)皮下結節
    骨突起部、伸側表面もしくは関節近傍にみられる皮下結節
    (4)上強膜炎又は虹彩炎
    眼科的に確認され,他の原因によるものは含まない
    (5)滲出性胸膜炎又は心嚢炎
    感染症など、他の原因によるものは含まない。癒着のみの所見は陽性にとらない
    (6)心筋炎
    臨床所見、炎症反応、筋原性酵素、心電図、心エコーなどにより診断されたものを陽性とする
    (7)間質性肺炎又は肺線維症
    理学的所見、胸部X線、肺機能検査により確認されたものとし、病変の広がりは問わない
    (8)臓器梗塞
    血管炎による虚血、壊死に起因した腸管、心筋、肺などの臓器梗塞
    (9)リウマトイド因子高値
    2回以上の検査で、RAHAないしRAPAテスト2,560倍以上(RF960IU/m・以上)の高値を示すこと
    (10)血清低補体価又は血中免疫複合体陽性
    2回以上の検査で、C3、C4などの血清補体成分の低下又はCH50による補体活性化の低下をみること、又は2回以上の検査で血中免疫複合体陽性(C1q 結合能を基準とする)をみること
    (11)抗シトルリン酸抗体(ACPA)、抗CCP抗体
  • 2.組織所見
  • 皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により小ないし中動脈壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎、ないしは閉塞性内膜炎を認めること
  • 3.判定基準
  • 関節リウマチの診断基準(米国リウマチ協会の1987年改定基準)を満たし、上記に掲げる項目の中で、
    (1)1.臨床症状(1)-(10)のうち3項目以上満たすもの、又は
    (2)1.臨床症状(1)-(10)の項目の1項目以上と 2.組織所見の項目があるもの、
    を悪性関節リウマチ(MRA)と診断する
  • 4.鑑別診断
  • 鑑別すべき疾患、病態として、感染症、続発性アミロイドーシス、治療薬剤(特に金剤、D-ペニシラミン、ブシラミンなど)の副作用があげられる。アミロイドーシスでは、胃、直腸、皮膚、腎、肝などの生検によりアミロイドの沈着をみる。関節リウマチ(RA)以外の膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎など)との重複症候群にも留意する。シェーグレン症候群は、関節リウマチに最も合併しやすく、悪性関節リウマチにおいても約10%の合併をみる。Fetly症候群も鑑別すべき疾患であるが、この場合、白血球数減少、脾腫、易感染性をみる

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  • 悪性関節リウマチの重症度分類(厚生省難治性血管炎分科会案1998年)
  • ○1度
    免疫抑制療法(ステロイド薬、免疫抑制薬の投与)なしに1年以上活動性の血管炎症状(皮下結節や皮下出血などは除く)を認めない寛解状態にあり、血管炎症状による非可逆的な臓器障害を伴わない患者

    ○2度
    血管炎症状(皮膚梗塞、潰瘍、上強膜炎、胸膜炎、間質性肺炎など)に対し免疫抑制療法を必要とし、定期的な外来通院を要する患者、もしくは血管炎症状による軽度の非可逆的な臓器障害(末梢神経炎による知覚障害、症状を伴わない肺線維症など)を伴っているが、社会での日常生活に支障のない患者

    ○3度
    活動性の血管炎症状(皮膚梗塞、潰瘍、上強膜炎、胸膜炎、心外膜炎、間質性肺炎、末梢神経炎など)が出没するために免疫抑制療法を必要とし、しばしば入院を要する患者、もしくは血管炎症状による非可逆的臓器障害(下記(1)-(6)のいずれか)を伴い社会での日常生活に支障のある患者
    (1)下気道の障害により軽度の呼吸不全を認め、PaO2が60-70Torr
    (2)NYHA 2度の心不全徴候を認め、心電図上陳旧性心筋梗塞、心房細動(粗動)、期外収縮又はST低下(0.2mV 以上)の1つ以上を認める
    (3)血清クレアチニン値が2.5-4.9mg/dlの腎不全
    (4)両眼の視力の和が 0.09-0.2 の視力障害
    (5)拇指を含む2関節以上の指・趾切断
    (6)末梢神経障害による1肢の機能障害(筋力3)

    ○4度
    活動性の血管炎症状(発熱、皮膚梗塞、潰瘍、上強膜炎、胸膜炎、心外膜炎、間質性肺炎、末梢神経炎など)のために、3カ月以上の入院を強いられている患者、もしくは血管炎症状によって以下に示す非可逆的関節外症状(下記(1)-(6)のいずれか)を伴い家庭での日常生活に支障のある患者
    (1)下気道の障害により中等度の呼吸不全を認め、PaO2が50-59Torr
    (2)NYHA3度の心不全徴候を認め,X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人工ペースメーカーの装着のいずれかを認める
    (3)血清クレアチニン値が 5.0-7.9mg/dlの腎不全
    (4)両眼の視力の和が 0.02-0.08 の視力障害
    (5)1肢以上の手・足関節より中枢側における切断
    (6)末梢神経障害による2肢の機能障害(筋力3)

    ○5度
    血管炎症状による重要臓器の非可逆的障害(下記(1)-(6)のいずれか)を伴い、家庭での日常生活に著しい支障があり、常時入院治療、あるいは絶えざる介護を要する患者
    (1)下気道の障害により高度の呼吸不全を認め、PaO2が50Torr未満
    (2)NYHA4度の心不全徴候を認め,X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人工ペースメーカーの装着のいずれか2つ以上を認める
    (3)血清クレアチニン値が 8.0mg/dl以上の腎不全
    (4)両眼の視力の和が 0.01以下の視力障害
    (5)2肢以上の手・足関節より中枢側における切断
    (6)末梢神経障害による3肢以上の機能障害(筋力3)、もしくは1肢以上の筋力全廃(筋力2以下)
  • 治療
  • 悪性関節リウマチ(MRA)の治療の基本方針は、
    (1)疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)を中心に、関節リウマチ(RA)に対する治療を継続
    (2)RAの進行に伴い、関節機能が破壊されないように、その保全に留意する
    (3)MRAが寛解するまで入院治療を原則とし、その上で血管炎などの関節外の治療を行う
    の3点です。
    MRAの病態に応じて、以下の治療法が加えられます。
  • 1.薬物治療
  • (1)ステロイド
    全身動脈型の症状には、プレドニゾロン(PSL)40~80mg/日
    末梢動脈型の症状には、PSL10~20mg/日
    血管炎による重篤な臓器症状や進行性間質性肺炎に対しては、ステロイドパルス療法も考慮します。

    (2)免疫抑制薬
    ステロイド無効例、ステロイド有効でも減量・離脱が難しい例、副作用でステロイドの継続が困難な例に適応します。アザチオプリン、シクロホスファミド、ミゾリビン内服、シクロホスファミド間欠静注療法などを行います。また、間質性肺炎を認めない例ではメトトレキサート間欠療法などを行います。

    (3)抗凝固療法、抗血小板薬、血管拡張薬
    皮膚梗塞、潰瘍、臓器虚血・梗塞に対して、ワルファリンカリウムなどの抗凝固薬、アスピリンなどの抗血小板薬、ベラプロストナトリウムなどの血管拡張薬を併用します。

    (4)生物学的製剤
    ここ数年来、関節リウマチに適応が承認されているインフリキシマブやトシリズマブは著効を示すので今後治療の主軸になると考えられます。
  • 2.外科的手術、他
  • 腸梗塞、四肢壊死、心筋梗塞では外科手術が、上強膜炎、虹彩炎では眼科的処置が行われます。
    悪性関節リウマチは関節リウマチに血管炎が加わった病気です。病状の進行に伴って関節の破壊が進み、人工関節に置き換える必要が出てくる場合もあります。
  • 予後
  • 最近の疫学調査成績では、MRAの転帰は、軽快が21%、不変が26%、悪化が31%、死亡が14%、不明・その他が8%となっています。死因は呼吸不全が最も多く、次いで感染症の合併、心不全、腎不全などがあげられます。
    (難病対策研究会監修『平成19年度版難病対策提要』太陽美術、P.318)
  • ケア
  • 悪性関節リウマチ(MRA)は関節リウマチ(RA)に血管炎や臓器障害を合併した病態ですので、RA同様、日常生活についてはリウマチ体操などにより関節機能を保全する、バランスのとれた食事をとる、疲労を避ける、趣味を生かして気分転換を図ることをおすすめします。
    定期的に通院し、検査を受け、薬剤を内服することによって、活動性をコントロールしておくことが大切です。
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