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4月26日(木)
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疾患

  • 定義・概念
  • オーストリア生まれのアメリカ人医師Leo Buerger(1879-1943)によってくわしく報告されたことから、報告者の名前をつけて バージャー病(英語読み)、あるいはビュルガー病(ドイツ語読み)と名づけられた病気で、閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans,略してT.A.O.)と呼ばれることもあります。四肢の末梢血管に閉塞をきたす疾患で、その結果、四肢や指趾の虚血症状が起こります。特に下肢の動脈に起こりやすく、虚血症状としては間欠性跛行や安静時疼痛、虚血性皮膚潰瘍、壊疽(特発性脱疽とも呼ばれます)をきたします。また、しばしば表在静脈にも炎症をきたします(遊走性静脈炎)

    ・虚血症状…血液が十分供給されないためにおこる組織の低酸素症状をいいます。
    ・間欠性跛行…一定の距離を歩いていると足が痛くなって歩けなくなり、少し休むと痛みは治まりますが、また歩きはじめると痛みが生じる症状をいいます。
    ・安静時疼痛…跛行が進行し安静にしていても血行不良で神経を刺激して、疼痛を起こしたもので、じっとしていても痛い疾患を除外する必要があります。
    ・虚血性潰瘍…動脈の閉塞が原因で潰瘍が生じることがあります。
    ・壊疽…壊疽(えそ)とは、動脈の閉塞で壊死してしまった組織ができた状態を指します。
    ・表在静脈…皮膚表面近くを走る静脈を表在静脈といいます。
    ・遊走性静脈炎…圧痛・発赤をともなう静脈の炎症があちこちに移動する状態を遊走性静脈炎といいます。
    (参照:「難治性血管炎の診療マニュアル」(『難治性血管炎に関する調査研究 平成14~16年総合研究報告書』に掲載))
  • 疫学
  • 1993~95年度の我が国の調査では、全国の患者数は約10,000人(95%信頼区間 8,400~12,000人)で、男女比は9:1と圧倒的に男性が多くなっています。推定発症年齢は男女共、30歳代から40歳代が最も多いのですが、現在の患者さんの中心は50歳代で、今後高齢化が進むと考えられています。
    (参照:「難治性血管炎の診療マニュアル」)
  • 自立率
  • 平成10年度の厚生省の推計(平成7年度の調査をベースに推計)によると、バージャー病(ビュルガー病)の患者数は10,353人。このうち自立している方は93.9%、一部介助の方は5.6%、全面介助の方は0.6%という割合になっています。
    参照;難病対策研究会監修『平成19年度版難病対策提要』太陽美術、P.414
  • 成因
  • 特定のHLAとバージャー病(ビュルガー病)発症の関連性が強く疑われていて、ある遺伝的な素因に何らかの刺激が加わると発症するとの説が有力ですが、正確な原因は未だわかっていません。発症・増悪には喫煙が強く関与していて、受動喫煙を含めると患者のほとんど全てに喫煙歴があるといわれています。また、2005年に東京医科歯科大学の研究グループによって患部の血管試料から歯周病菌が検出され、本病と歯周病菌感染との間に関連があると報告されています。

    ・HLA…白血球の血液型であるヒト組織適合抗原(Human Leukocyte Antigen)の略称です。
    ・受動喫煙…本人は喫煙しなくても周囲の喫煙者によって間接的に喫煙状態となることを指します。
    (参照:「難治性血管炎の診療マニュアル」、『難治性血管炎に関する調査研究 平成19年度総括・分担研究報告書』P.62)
  • 臨床症状
  • 患者さんの手足の動脈(四肢末梢から主幹動脈にかけて)が閉塞して、その結果虚血症状が発生します。患者さんの自覚症状としては、指趾の冷感やしびれ感、寒冷にさらされた時のレイノー現象に始まり、虚血が高度になるにつれて間欠性跛行、安静時疼痛、さらには指趾に潰瘍や壊死を形成して、「特発性脱疽」といわれる状態になります。これらの症状は順に起こる場合と、スキップして進行する場合とがあります。また爪の発育不全や皮膚の硬化、胼胝(たこ)を伴い、わずかな刺激で難治性潰瘍を形成します。手足の静脈にも炎症を起こし、静脈に沿って発赤や痛みを生じることもあります。下肢の阻血性疾患として最も頻度が高い閉塞性動脈硬化症と類似した症状があるため、鑑別診断に注意を要します。
    ・レイノー現象…指やつま先の小動脈が収縮し、指先などが蒼白→暗紫色→発赤に変化する現象をレイノー現象といいます。
    ・閉塞性動脈硬化症…動脈硬化症の一種。症状はバージャー病(ビュルガー病)に似ていますが、血管造影検査やエコー検査をすると虫喰い像、石灰沈着などの動脈硬化性変化を認めます。静脈の症状はありません。
  • 診断
  • 1.自覚症状
    (1)四肢の冷感、しびれ感、レイノー現象
    (2)間欠性跛行
    (3)指趾の安静時疼痛
    (4)指趾の潰瘍、壊死(特発性脱疽)
    (5)遊走性静脈炎(皮下静脈の発赤、硬結、疼痛など)

    2.理学所見
    (1)四肢、指趾の皮膚温の低下(サーモグラフィーによる皮膚温測定、近赤外線分光計による皮膚・組織酸素代謝の測定)
    (2)末梢動脈拍動の減弱、消失
    (3)足関節圧の低下(ドプラ血流計にて測定)

    3.血液生化学検査所見
    バージャー病(ビュルガー病)病に特異的な検査所見はない。

    4.画像所見(血管造影)
    (1)四肢末梢、主幹動脈の多発性分節的閉塞
    (2)二次血栓の延長により慢性閉塞の像を示す
    (3)虫喰い像、石灰沈着などの動脈硬化性変化は認めない
    (4)閉塞は途絶状、先細り状閉塞となる
    (5)側副血行路として、ブリッジ状あるいはコイル状側副血行路がみられる

    5.鑑別診断
    (1)閉塞性動脈硬化症
    (2)外傷性動脈血栓症
    (3)膝窩動脈補掟症候群
    (4)膝窩動脈外膜嚢腫
    (5)SLEの閉塞性血管病変
    (6)強皮症の閉塞性血管病変
    (7)血管ベーチェット

    6.診断の判定
    (1)喫煙歴を有し、上記の自覚症状・理学所見・画像所見を認める。
    (2)動脈硬化症や糖尿病の合併は原則として認めない。
    (3)女性例、非喫煙者、50歳代以上の症例では、鑑別診断をより厳密に行う。
    (4)上記の鑑別診断で該当疾患を否定する。

    以上の項目を満たす場合、ビュルガー病と判断する。確定診断には血管造影所見が重要である。
  • バージャー病(ビュルガー病)の重症度分類
  • 1度
    患肢皮膚温の低下、しびれ、冷汗、皮膚色調変化(蒼白、虚血性紅潮など)を呈する患者であるが、禁煙も含む日常のケア、又は薬物療法などで社会生活・日常生活に支障のないもの。
    2度
    上記の症状と同時に間欠性跛行(主として足底筋群、足部、下腿筋)を有する患者で薬物療法などで、社会生活・日常生活上の障害が許容範囲内にあるもの。
    3度
    指趾の色調変化(蒼白、チアノーゼ)と限局性の小潰瘍や壊死又は3度以上の間欠性跛行を伴う患者。通常の保存的療法のみでは、社会生活に許容範囲を超える支障があり、外科療法の相対的適応となる。
    4度
    指趾の潰瘍形成により疼痛(安静時疼痛)が強く、社会生活・日常生活に著しく支障をきたす。薬物療法は相対的適応となる。したがって入院加療を要することもある。
    5度
    激しい安静時疼痛とともに、壊死、潰瘍が憎悪し、入院加療にて強力な内科的、外科的治療を必要とするもの。(入院加療:点滴、鎮痛、包帯交換、外科的処置など)
  • 治療
  • 受動喫煙を含め、禁煙を厳守させることが基本で、このために適切な禁煙指導を行う必要があります。更に患肢の保温、保護に努めて、靴ずれなどの外傷を避けることも大切です。長期の経過観察によると、初診後、禁煙をした患者さんの大多数は肢切断に至りませんでしたが、喫煙を続けた患者さんでは約半数が切断に至っています。また、最近では歯周病も原因として注目されていますので歯周病に罹っていたら、こちらもすみやかに治療しましょう。
    症状が冷感、しびれ感であれば薬物治療を試み、間欠性跛行があれば運動療法と薬物治療を行います。安静時疼痛や潰瘍は、薬物治療を行っても改善しない時には、バイパス手術などの外科的血行再建を考慮します。

    局所療法は指趾に潰瘍形成や壊死を認める場合に行われます。厳重な創の保護が主体となります。
    薬物療法は抗血小板製剤やプロスタグランジン製剤の投与が主体となります。急性増悪例や重症例に対してはプロスタグランジン製剤の静脈内投与が期間を限って行われます。

    交感神経節ブロックと交感神経節切除術は、血管を収縮させる働きを持つ交感神経節を薬物によってブロックしたり、外科手術で切除することで、血管を開いた状態にして血行を改善するものです。近年ではブロック無効例に対して上肢では胸腔鏡下切除術、下肢でも肢腔鏡下切除遮断術が行われています。

    高気圧酸素療法(HBO)は血液に酸素をより多く供給することにより、患部の虚血状態を改善する治療法ですが、高度な安全管理を要するため、一般的ではありません。
    (施設リスト:http://www.jshm.net/shisetu.html)
    外科的血行再建術は潰瘍形成と安静時疼痛を訴える症例で、かつ薬剤治療に抵抗性の症例に対して、適応を考慮されます。末梢血管床が良好であれば、バイパス術などの血行再建が行われます。また、血行再建術が適応外とされる症例では、交感神経節切除術やブロックが行われます。

    この他に近年、肝細胞増殖因子(HGF)を用いた遺伝子治療や自己骨髄幹細胞移植、自己末梢血血管内皮前駆細胞移植、DDS徐放化b-FGFハイドロゲル筋肉内注入による血管新生療法、壊疽に対する医療用ウジ治療(マゴットセラピー)が試みられており、症例によっては有用であることが次第に明らかになってきています。

    ・高気圧酸素療法(HBO)…患者さんを鉄製やアクリル製のタンクに入れ、2~3気圧下で純酸素を与えていくものです。高い気圧で血液中に酸素を溶かし、組織の酸素不足による障害を治します。
    ・肝細胞増殖因子…成熟肝細胞に対する増殖促進因子です。肝臓のみならず、様々な細胞に対して、細胞増殖促進、細胞運動促進、抗アポトーシス(細胞死)、 形態形成誘導、血管新生など組織・臓器の再生と保護を担っていることがわかっています。これを潰瘍患部中枢の筋肉内に注射します。
    ・自己骨髄幹細胞移植…正常な自己の骨髄幹細胞を患部近傍の筋肉内に注射し、血管の再生をはかります。
    ・自己末梢血血管内皮前駆細胞移植…自己の末梢血中にある骨髄に由来する血管内皮前駆細胞を筋肉内に注射し、血管の再生をはかります。
    (参考)先端医療振興財団・先端医療センター病院(神戸市)血管再生科の解説ページ
    http://www.ibri-kobe.org/hospital/consultation/001.html
    ・DDS徐放化b-FGFハイドロゲル…塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)をゼラチンハイドロゲルと混入したもので、患肢筋肉内に注射します。
    (参考)京都大学の解説ページ
    http://kyoto-cvs.com/bfgf_normal.html
    ・マゴットセラピー…ある種のハエの幼虫が動物の壊死組織(腐敗組織)だけを摂取する性質を利用して無菌のウジで人体の難治性壊疽組織を除去する方法です。
  • 経過・予後
  • 予後に関しては若く発症することと、切断後には禁煙することが多く、老年で発症する閉塞性動脈硬化症とは異なっております。すなわち、心臓、脳、大血管の致命的病変を合併することがないことも関係しているようです。ただ、四肢の大切断を余儀なくされる場合があり、就労年代の成年男性のQOLを著しく脅かすことも少なくありません。喫煙は歯周病を悪化させることが、バージャー病の発症、増悪に強い関係を持っていると考えられています。
  • ケア
  • 治療の基本は禁煙です。この病気の発症や増悪と喫煙は密接に関係しており、 喫煙を継続してはどんな治療も無効です。さらに手足の清潔を保ち、保護を行い、寒いところでは保温に気をつける、靴擦れを予防し、傷をつけないように注意が大切です。
    足先の保護のために柔らかいやや大きめの軽い靴をはき、爪への圧迫を避けるようにします。ヒールの高い靴は指を圧迫するのでよくありません。靴下は厚めのものを選び、一部の皮膚を強く圧迫しないようにしわができないようにはきます。爪を長く伸ばしすぎると外傷を受けやすくなるので、こまめに手入れしましょう。その際、深爪をしないよう気をつけて下さい。水虫から壊疽に進む場合があるので、日頃からきちんと治療し、化膿させないようにしましょう。正座は足への血の巡りを悪くしますので、法事の際などには事情を説明して椅子に腰掛けるようにします。また、同様の理由からトイレは和式を避け、洋式を使うようにしましょう。
    (参照:平井正文『患者さん、それは血管の病気です。』東洋書店、平成8年、P.176-178)
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