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9月19日(水)
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疾患

  • 定義・概念
  • ベーチェット病は、1937年にトルコイスタンブル大学皮膚科ベーチェット教授によって報告された病気です。粘膜、皮膚、眼にくり返し炎症症状が現われる難病で、原因不明で、治療方法も確立していません。口腔粘膜のアフタ性潰瘍(口の中の粘膜の炎症)、外陰部潰瘍(股間、性器の炎症)、皮膚症状(全身にできもの、虫刺されが大きく腫れる、こすったり刺激に弱くなる)、眼症状(目の炎症、かすみ、視力減退など)の4つの主症状と、関節炎、副睾丸炎(男性の場合)、血管病変(血管が詰まる)、腸管病変(腸に炎症を起こし、穴があいたりする)、神経病変(脳内の病変によって中枢神経が異常をきたす)の5つの副症状が現われたり消えたりを繰り返しながら、慢性化していく事が多いようです。主症状の4つがすべて発症するものを「完全型ベーチェット」といい、3主症状、あるいは2主症状と2副症状が現れた場合、眼症状とその他の1主症状、あるいは2副症状が現れた場合を「不全型ベーチェット」と言います。血管病変、腸管病変、神経病変の副症状が主体で、その治療が最優先される病態を「特殊型ベーチェット」と言い、生命予後を左右したり、後遺症が残る事もあります。治療は各症状の疾患活動性、重症度を考慮し、治療の優先順位を決め、治療法を選択していきます。ベーチェット病の症状は「眼発作」に代表されるように、病状が悪い時期が突発的に起こります。この悪い時期を「活動期」と言い、病状が治まった時期を「非活動期」とよび、「非活動期」が持続している場合、「寛解」という言葉が用いられます。働き盛りの20代~40代の発病が多い事や、失明率が高い事、また中枢神経、血管、腸管の病変による死亡が少なくない事で、社会に与える影響の大きさから、これまでも代表的な難病として多大な社会的関心が寄せられてきました。
  • 疫学
  • ベーチェット病はトルコで初めて報告されました。地中海沿岸、中近東、中国、韓国、日本に患者数が多く、その分布から「シルクロード病」ともいわれます。欧米では患者数は少ないようです。厚労省の特定疾患受給者証に基づく調査では、1974年に2767人、以後、1年間に数百人から多いときで2000人の増加があり、2000年には17203人、その後も17000人前後の患者さんが登録されています。世界でも有病率(人口に対する患者)の高さが際立っていると言えます。また、近年は軽症型の女性患者が増加しています。発症年齢は男女とも35歳前後が最も多く、女性は男性よりやや高齢になってから発症するという報告があります。完全型と不全型にわけると、不全型のほうが多く、割合も不全型のほうが増えてきています。
  • 自立率
  • 平成10年度の厚生省の推計(平成7年度の調査をベースに推計)によると、ベーチェット病の患者数は16,640人。このうち自立している方は91.3%、一部介助の方は8.0%、全面介助の方は0.7%という割合になっています。
    (参照;難病対策研究会監修『平成19年度版難病対策提要』太陽美術、P.414)
  • 成因
  • 現在のところ、ベーチェット病の原因は不明です。しかし、何らかの内因(遺伝素因)と外因(感染病原体やそのほかの環境因子)が関与して白血球の異常が生じて病態が形成されると考えられており、近年徐々に病気になる仕組みがわかってきています。
    内因として、ベーチェット病患者さんの、組織適合性抗原HLA-B51やA-26の陽性率が高く、発病条件の形成にHLA-B51やA-26に連鎖する素因の役割が重視されています。実際、日本人のHLA-B51保有者では、ベーチェット病に罹患する相対危険率は7.9ときわめて高いとされています。つまり、遺伝子の中のある領域がベーチェット病と強い関連性をもっているようだと推測される、という事です。
    これまでに、全ゲノム遺伝子解析によって炎症惹起に関与するTh17型・Th1型細胞分化を促すIL-23受容体、IL-12受容体β2鎖、抗炎症に作用するIL-10などの遺伝子が疾患感受性遺伝子として同定されました。そのなかでも、IL-10の産生不全による炎症制御低下がベーチェット病の炎症増幅につながっている可能性を示めしています。これら の所見はあくまでも「病気のなりやすさ」の目安を示すもので、診断につながるものではありませんが、病態形成や発症機序に重要と考えられます。また、外因としては「ある種の工業汚染物質の影響を考える人もありますが、虫歯菌を含む細菌やウィルスなどの微生物が関わっているのではないかとういう考え方が有力です」(難病情報センターホームページ ベーチェット病の項より)という事が言われています。
  • 臨床症状
  • ベーチェット病では、大きく分けて4つの主症状と5つの副症状があります。
    主症状

    1)口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
    ベーチェット病患者さんの98%の人にでる症状で、初期症状としてあらわれる事が多いです。唇、唇の裏側、頬の裏側の粘膜、舌、歯茎などに炎症(潰瘍)ができ、痛みをともないます。同時にいくつもできる事もあり、治ってもまたできるというように、症状が繰り返します。

    2)外陰部潰瘍
    男性では陰のう、陰茎、亀頭に、女性では大小陰唇、膣粘膜に痛みの伴う潰瘍がみられます。酷い時には、痛みが激しくて歩けなくなる事もあります。

    3)皮膚症状
    足、主に膝から足首までのところに結節性紅斑(赤く腫れ、痛みが伴う)ができたり、顔、顎、首、胸、背中など全身に毛嚢炎様皮疹(ニキビの様な湿疹で、膿む事もあります)ができたりします。これも、症状を何度も繰り返します。注射針などで炎症を起こしたり、虫刺され、かみそり負けなど、皮膚が刺激に対して過敏に反応します。

    4)眼症状
    この病気でもっとも重大な症状の一つです。ほとんどの例で両眼が侵されます。ぶどう膜炎という、眼球を覆っている組織が炎症を起こす症状で、前眼部型では眼のかすみ、充血、眼痛、飛蚊症(目の前に蚊が飛んでいるかのような斑点が見える)。後眼部型では急激な視力の低下、失明など重大な症状に至る事があります。
    副症状

    1)関節炎
    手、足、膝、ひじなどの関節に炎症が起こります。痛み、腫れ、熱感を伴いますが、通常、関節変形は確認できず、関節リウマチとは異なります。

    2)副睾丸炎
    男性患者の約1割弱にみられます。睾丸部の痛みと腫れを伴います。

    3)血管病変
    この病気で血管病変がみられたとき、血管型ベーチェットと言います。圧倒的に男性が多いと言われています。動脈、静脈ともに侵されますが、静脈系の閉塞がもっとも多く、部位では上大静脈、下大静脈、大腿静脈などによくみられます。次いで動脈瘤がよくみられます。

    4)消化器病変
    腸管潰瘍を起こしたとき腸管型ベーチェットと言います。男性に多くみられます。腹痛、下痢、下血などの臨床症状を示します。起きる場所は回盲部が圧倒的に多く、その他、上行結腸、横行結腸にもみられます。潰瘍は深くなって腸に穴を開けてしまい(腸穿孔)緊急手術を必要とする事もあります。

    5)神経病変
    神経症状が前面に出る病型を神経型ベーチェットと言います。難治性で、もっとも予後不良です。これも男性に多いのが特徴です。ベーチェット病発症から神経症状発現まで時間がかかり、平均6.5年と言われています。片麻痺、激しい頭痛を起こす髄膜刺激症状、酔っ払ったようになる小脳症状、錐体路症状など多彩です。運動ができなくなる麻痺や性格変化を伴う精神症状をみる事もあります。
  • 診断
  • 日本では1987年に作成され、2003年に改定された厚生労働省ベーチェット病診断基準が一般的に使用されています。
    主症状がすべて出現したとき、診断はそれほど難しくありませんが、ときに、診断が困難なことがあります。そのようなときは、厚生労働省研究班の診断基準を参考にします。症状の現れ方によって「完全型」「不全型」「疑い」と診断します。病因も病態も不明な点の多いこの病気においては、未だに症状の種類によってのみ診断づけられています。

    厚生労働省研究班の診断基準
    1)完全型;経過中に4主症状の出現したもの
    2)不全型;a.経過中に3主症状(あるいは2主症状と2副症状)が出現したもの
           b.経過中に定期的眼症状とその他の1主症状(あるいは2副症状)が出現したもの
    3)疑い;主症状の一部が出没するが不全型の条件を満たさないもの、および定期的な副症状が反復あるいは増悪するもの
  • 治療
  • ベーチェット病は、全身に様々な症状がでる病気であるため、その症状の重症度、後遺症が残る可能性の有無などを考えて、治療の優先順位を決めて治療方法を選択します。
    1)眼症状

    虹彩毛様体炎など前眼部の症状には、発作が起こった時に、副腎皮質ステロイド点眼薬と散瞳薬を使用します。
    網膜脈絡膜炎など後眼部の病変には、発作が起こった時に、ステロイドを使用します。発作を繰り返す場合には、視力の低下が起こる場合があるので、発作予防として、コルヒチン0.5~1.5mgを使用しますが、状態によりシクロスポリンを使用します。シクロスポリンは5mg/kg程度より開始し、副作用に注意しながら、慎重に投与します。
    最近ではレミケード(抗TNFα抗体)療法による、難治性ぶどう膜炎に対する高い治療効果に注目が集まっています。2007年1月保険適応となり、すでに1000例を超える症例に投与されています。投与スケジュールは関節リウマチに準じ、0、2、6週に5mg/kg(関節リウマチは3mg/kg)投与し、以後8週間隔とするのが一般的です。
    2)皮膚粘膜症状

    皮膚粘膜症状には局所療法が主体になります。口腔内アフタ性潰瘍、陰部潰瘍には副腎ステロイド軟膏の局所に塗布します。内服薬としてはコルヒチン、セファランチン、エイコサペンタエン酸などを用います。
    結節性紅斑についてはコルヒチンが有効であるとされ、瘡様皮疹には一般的な局所治療を行います。
    薬物療法のほかに虫歯の治療も重要です。ただし、虫歯の治療時に、一時的な口腔内アフタ性潰瘍などの症状が表れることがあります。
    3)関節病変

    コルヒチンが有効とされていますが、対症的には非ステロイド性抗炎症剤も使用します。難治性の場合には、副作用に注意しながら、副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン換算10mg)を使用します。
    4)血管病変

    病変の部位、あるいはどの臓器の障害を伴っているか、個々の症状によって治療方法を決めます。
    炎症を伴う動脈病変では副腎皮質ステロイド薬(0.5~1.0mg/kg)にアザチオプリン(50~100mg)、シクロフォスファミド(50~100mg)、シクロスポリンA(5mg/kg)などの免疫抑制薬を併用します。
    深部静脈血栓症などの血管病変に対しては抗凝固薬(ヘパリンなど)、抗血小板薬(ワーファリンなど)などの薬物治療を行います。
    動脈瘤破裂による出血がある場合には、緊急手術が必要になります。手術した場合、術後再発の防止のため免疫抑制療法を行います。血管病変は再発しやすく手術には注意が必要です。
    5)腸管病変

    基本的に他の炎症性腸疾患と同じく、急性期には絶食、中心静脈栄養などの栄養療法、ステロイドなどの薬物療法が主になります。薬物療法は、副腎皮質ステロイド薬(0.5~1.0mg/kg)、スルファサラジン (1500~2000mg)、メサラジン(1500~2500mg)、アザチオプリン50~100mg)などを使用します。副腎皮質ステロイド薬は状態をみながら、減量し、長期投与は避けるのが原則ですが、難治性でステロイドの使用を中止できない場合、その副作用対策が必要です。また最近、TNF阻害薬の有効性が報告され、厚生労働省の研究班の全国調査でも保険適応外ですが、かなりの症例で使用されています。また、アダリムマブやインフリキシマブの治験も進行しています。症状が長期にわたって改善しない時、大出血、穿孔、狭窄による通過障害などをきたした時には外科手術が必要になりますが、再発率も高く、術後の免疫抑制療法も重要です。
    6)中枢神経病変

    臨床像、髄液所見、MRI画像などにより、診断評価を行い、主にステロイドによる薬物治療が中心になります。
    急性型の脳幹脳炎、髄膜炎にはステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン 1,000mg x 3日間)を含む大量の副腎皮質ステロイド薬(1mg/kg)を使用し、アザチオプリン(50~100mg)、メソトレキサート(10~15mg/wk)、シクロホスファミド点滴静脈注療法(500mg/m2/month)などを併用することもあります。ほとんどの場合、改善が見られますが、なかには急性発作を繰り返しながら、慢性進行型となる場合もあります。
    一方、精神症状、人格変化などが主体となる慢性進行型の症状に対する治療は今のところ、限られています。メソトレキサート週一回投与(10~15mg/wk)という治療が行われることもありますが、治療抵抗例にはTNF阻害薬も試みられています。(保険適応外)症状により精神科医との併進やカウンセリング、リハビリテーション療法が必要になります。

    ベーチェット病の患者さん全体で、神経症状があらわれる頻度は10~15%ですが、シクロスポリンを服用している眼病変の患者さんだけでみると、20~25%に神経症状があらわれると言われています。これはシクロスポリンの副作用ではないかという報告もあります。シクロスポリンの副作用により神経症状があらわれるのはベーチェット病だけで、他の病気ではあまり起こらない事だとされていますが、その理由は現在のところ不明です。もし、シクロスポリンを使用した眼病変の治療中に、神経症状があらわれたらすぐに使用を中止しなければなりません。急性型である事が多いので、その場合には副腎ステロイド用いる事で改善がみられます。

    *参考 『厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業「ベーチェット病に関する調査研究」HP』
  • 経過・予後
  • ベーチェット病でも、皮膚・粘膜症状だけを繰り返し発現するだけで、それ以外では日常生活に大きな影響を与えずに生活している患者さんもいます。眼症状が認められない場合は、慢性的に繰り返し症状が出現するものの一般に予後は良いと思われます。眼症状のある場合は、網膜ぶどう膜炎の視力の予後は悪く、眼症状発現後2年で視力0.1以下になる率は約40%と言われています。しかし、1990年代にシクロスポリンが治療に使用されるようになると、20%程度にまで改善してきました。
    腸管型ベーチェット病では、ひとつひとつの潰瘍は非常に深く、時に出血や穿孔を起こし、重症になる事もあります。
    血管型ベーチェット病では、大動脈や大静脈などの血管病変が進行することによって、いわゆる脈なしの状態や脳循環障害が起こり、腎性の高血圧症があらわれたり、中枢神経症状があらわれたりします。その他にも肺や腹部などに動脈瘤が出来る事もあります。
    神経型ベーチェット病では、症状が発病して数年を経過してからあらわれる事が多く、ベーチェット病の症状の中で最も遅くあらわれる症状です。はじめは、手足の動きに異常があらわれたりする中枢性の運動麻痺症状と、性格に変化があらわれる精神症状が主であり、その他、頭痛や、しゃべりにくい、歩きにくい、目が見えにくいというような脳幹症状がみられる事もあります。そして、しだいに症状が重くなる傾向があり、精神異常の現れる回数が多くなったり、中枢性の運動麻痺や、脳幹症状があらわれる頻度が高くなり、重症度も高くなっていきます。

    (参考 難病情報センターHP ベーチェット病の項 および、ベーチェット病友の会HP ベーチェット病の臨床と治療 坂根剛先生「ベーチェット病の臨床と治療法について」)
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