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6月25日(月)
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疾患

  • 定義・概念
  • シェーグレン症候群(SS)は、スウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンが1933年に発表した論文にちなんで名づけられた、乾燥性角結膜炎、慢性唾液腺炎を主症状とする症候群です。
    涙腺、唾液腺をはじめとする全身の外分泌腺に系統的な慢性炎症が起こり、外分泌腺の機能低下に基づく乾燥症状が特徴です。このような炎症性病変は肺、肝臓、腎臓、甲状腺、リンパ節などに波及することもあります。多彩な自己抗体の出現を認める自己免疫性疾患(※)で、膠原病の一つに分類されています。この疾患はいくつかの特徴的な症状を呈する症候群ですので、診断に際しては後で掲載する診断基準が用いられます。

    シェーグレン症候群は、他の膠原病の合併が見られない「一次性SS」と、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病に合併する「二次性SS」に大別され、その患者さんの比率はおよそ2:1となっています。一次性SSは病変が涙腺、唾液腺局所にとどまる「腺型」と、病変が全身の臓器に及ぶ「腺外型」に更に細分されます。

    ※自己免疫性疾患…本来、体内に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃してくれる免疫が、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう疾患をいいます。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.10-11、23、『難病の診断と治療方針2改定版』疾病対策研究会 2001、P.66)
  • 疫学
  • 厚生省(現、厚生労働省)の全国疫学調査の結果、我が国における1994年のシェーグレン症候群の年間受療患者数は17,000人、男女比は1:13.7で女性が圧倒的に多く、主な発症年齢は40~60歳代でした。また、2010年の調査での患者数は66,000人で、推定患者数は10~30万人と考えられています 。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.10-11、『難病の診断と治療方針2改定版』疾病対策研究会 2001、P.66、塩沢俊一著『膠原病学 改訂5版:免疫学・リウマチ性疾患の理解のために』丸善出版 2012、P440)
  • 成因
  • 人体はウイルスなどが体内に入ると、これを異物(抗原)として認識し、攻撃して排除するという防御システム、「免疫」の仕組みを持っています。
    この防御システムに異常が起き、自分自身を攻撃してしまう病気を自己免疫疾患と呼んでいます。シェーグレン症候群では免疫が自分の外分泌腺を異物とみなして攻撃をしてしまいます。
    これまでの研究によって、いくつかの自己抗体(自己抗原に対する抗体)の出現や、臓器に浸潤した自己反応性リンパ球(自己の細胞を抗原とみなしてそれに対する抗体をつくるリンパ球)の存在が明らかになっていることから、自己免疫応答がその病因と考えられていますが、発症機序はいまだ完全には解明されていません。
    2008年の研究段階で考えられている発症機序は次の通りです。

    (1)抗原特異的免疫応答
    先行因子としては、ヒトT細胞白血病ウイルス、Ebstein-Barr(EB)ウイルスなどのウイルス感染や熱ショックタンパク質(※)を産生する感染症が考えられ、それらの構成成分の一部が抗原として提示されるか、あるいは感染によりアポトーシス(※)に陥った細胞から自己抗原(*1)が提示されることが前提になります。
    このように提示された抗原は、唾液腺内の比較的限定された自己免疫性T細胞により認識され、T細胞より産出されたサイトカイン(*2)により、自己免疫応答が惹き起こされます。

    (2)抗原非特異的免疫応答
    一度免疫応答が誘導されると、抗原特異性を持たない種々のサイトカイン(*3)が産生されます。また、唾液腺のB細胞(※)、マクロファージ(※)などからは自己抗体、炎症性サイトカインであるIL-1やTNF-アルファが産生され炎症が慢性的に続きます。また、誘導された細胞傷害性T細胞はFasリガンド/Fas相互作用あるいはパーフォリン、グランザイムを介して液腺上皮細胞や腺房細胞をアポトーシスに陥らせます。このような抗原非特異的免疫応答によって、唾液腺の破壊が進むと考えられています。
    更に、最近の知見では、ムスカリン作動性アセチルコリン受容体3(M3R)に対する自己抗体が唾液分泌を抑制することも判明してきています。

    ※熱ショックタンパク質…熱ストレスや精神的なストレスなどで出現して細胞を守るタンパク質群です。

    ※アポトーシス…遺伝子によってあらかじめ決められているプログラムによって細胞が自死することです。

    ※サイトカイン…細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に情報伝達をするものをいいます。免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用・細胞増殖や分化の調節作用を示します。

    ※B細胞…液性免疫を担うリンパ球の一種です。T細胞からの指令を受けて、異物(抗原)に対する抗体(IgG、IgM、IgA、IgE、IgD)を産生し、攻撃をします。

    ※マクロファージ…白血球の一種で、体内に侵入した病原菌などの異物(抗原)を取り込んで消化させるという、食作用と呼ばれる機能を有しています。大量の異物(抗原)を取り込む容量があるため、貪食細胞(どんしょくさいぼう)と呼ばれています。また、取り込んだ異物(抗原)の断片を細胞の表面に出現させ、他の免疫細胞に提示するという役割も担っています。

    *1 臓器特異的な抗原としては、ムスカリン作動性アセチルコリン受容体3(M3R)やアルファアミラーゼが、臓器非特異的抗原としてはRo/SS-A52KD蛋白、HSP10/60蛋白、アルファ-フォドリンなどが報告されています。

    *2 IL-2(インターロイキン-2)、IL-6、TNF-アルファ(腫瘍壊死因子)など

    *3 インターフェロン-ガンマ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-17など
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.12-14)
  • 臨床症状
  • 1.腺性病変
    シェーグレン症候群の病変が始まる場所は涙腺や唾液腺などの外分泌腺で、分泌腺の周囲にリンパ球が浸潤してくることがわかっています。この小さな病変が少しずつ大きくなり、強くなったり、弱くなったりしながら長年続いていきます。

    (1)ドライアイ
    涙腺からの涙液の分泌量が減少するために、[1]眼が乾く、[2]異物感、[3]眼の痛み、[4]充血、[5]コンタクトレンズの長時間装着ができない、[6]眼やにが多い、[7]眼のかゆみ、[8]眼をあけていられない、[9]眼がしょぼしょぼする、[10]眼が疲れやすい、[11]瞬きの直後はよく見える、[12]眼がかすむ、[13]光が眩しい、[14]涙っぽくなる、[15]悲しくても涙が出ない、などの症状があらわれます。
    涙液の分泌には副涙腺からの基礎分泌と主涙腺からの反射性分泌の2経路があります。基礎分泌は常に眼の表面を涙で潤して乾燥から守り、反射性分泌は外からの異物が飛び込んできた際に起こり、涙で異物を洗い流します。軽度のシェーグレン症候群では基礎分泌が減るものの、反射性分泌は保たれます。ドライアイとしては比較的軽い症状であり、目に異物が入っても涙は正常に流れます。しかし重度の場合は反射性分泌も減るため、眼に入った異物を涙で洗い流すことができず、角膜、結膜が傷つき、視力が低下します。

    (2)ドライマウス
    唾液腺からの唾液の分泌量が減少するため、口が乾く・のどが渇く・口がネバネバするといった口腔乾燥感、口腔内の痛み、味覚が異常に感じられる、粘膜に対する違和感、唇の乾燥、などの症状があらわれます。分泌量が更に低下すると、会話をすることや、食べ物を噛んだり飲み込んだりすることが困難になる口腔機能障害や、義歯装着障害があらわれます。また、唾液中の抗菌物質が減少するため口腔カンジダ症(※)やむし歯、歯周病を発症することがあります。

    ※口腔カンジダ症…口腔内に常在している菌類の一種であるカンジダが、免疫力の低下によって増殖して起こす疾患です。

    (3)ドライアイ、ドライマウス以外の腺性病変
    ドライアイ、ドライマウス以外にも、鼻の乾燥、耳下腺の腫れと痛み、性交不快感、性交痛などの腺性病変があらわれることがあります。

    2.腺外病変
    一次性シェーグレン症候群の患者さんのうち、半数以上に全身性の症状がみられます。一人でいくつもの病変を重ねて持つことはまれで、人によって障害を起こす臓器に偏りがある傾向があります。

    (1)関節痛、関節炎
    約60%の患者さんにみられます。痛みが出ますが、はれることはあまりありません。関節リウマチのように関節が破壊されることもありません。
    膠原病では、ジャクー関節症といって、関節自体の破壊ではなく関節周囲の腱などの炎症や傷害によって、関節が変形することがありますが、シェーグレン症候群では稀です。
    関節包に炎症が起こる症状。関節の周囲が破壊されて変形してしまいます 。

    (2)皮膚の異常
    ・乾燥皮膚

    ・環状紅斑
    中心部の色が褪せる環状の紅斑で顔、上肢(肩から指)、背部などに認められます。

    ・血管炎、高ガンマグロブリン血症性紫斑病
    血液中にあるガンマグロブリンという蛋白質の量が増えることによって起こるのが、高ガンマグロブリン血症性紫斑病(※)です。発症すると紫斑、再発性じんましん、皮膚潰瘍、多発性単神経炎などの皮膚の異常が起こります。患者さんは比較的若く、間質性肺炎、リンパ腫などの腺外病変を合併することがあります。

    ※高ガンマグロブリン血症性紫斑病…血液粘稠度の亢進(血液がねばねばになる)と、免疫複合体が血管壁に沈着するために、不正形の紫斑が下肢に出現する疾患です。

    ・レイノー現象
    寒冷時に手の指先が白くなり、しびれたりする現象です。発症した場合は温めると元に戻ります。シェーグレン症候群の患者さんの約30%に見られますが、他の膠原病より少なく、症状も軽いことが多いです。

    ・薬疹
    他の膠原病に比べ多いといわれています。

    (3)慢性甲状腺炎(橋本病)
    慢性的に甲状腺に炎症が起こるのが慢性甲状腺炎であり、発見者の名前をとって橋本病とも呼ばれます。この病変はシェーグレン患者さんのうち、25~40%にみられます。これは免疫が甲状腺に対して攻撃をしてしまうために起こります。症状としては首が腫れたり、疲れやすくなったり声が変わったりします。

    (4)呼吸器病変
    気道乾燥に伴う、から咳がよくみられます。約10%の患者さんに間質性肺炎(※)がみられます。

    ※間質性肺炎…感染とは無関係な、肺胞を仕切る間質に異常が起こる肺炎です。

    (5)腎病変
    シェーグレン症候群に伴う腎病変の中では、間質性腎炎と腎尿細管性アシドーシス(※)がよく知られています。腎尿細管性アシドーシスは、低カリウム血症による手足の麻痺(低カリウム性周期性四肢麻痺)などの重篤な症状で見つかることがあります。まれに、糸球体腎炎(※)もみられます。

    ※アシドーシス…体内が異常に酸性に傾く病変で、腎臓からそれが起こるのが腎尿細管性アシドーシスです。

    ※糸球体(しきゅうたい)腎炎…腎臓の毛細血管網である糸球体に異常が起こる病気です。

    (6)消化器系病変
    乾燥によって起こる、食べ物が飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害、胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎があります。萎縮性胃炎はリンパ球浸潤を伴うこともあります。また、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変(※)は約5%の方に発症するといわれています。

    ※原発性胆汁性肝硬変…肝臓の中の胆汁を流す部位が自己免疫の異常によって破壊され、胆汁の流れが悪くなるために起こる病気です。

    (7)膀胱炎
    間質性膀胱炎といって、特殊な膀胱炎を合併することがあります。膀胱にためられる尿量が少なくなるため、頻回にトイレへ行きたくなります。


    (8)神経障害
    三叉(さんさ)神経、眼神経、下肢神経障害などが比較的多くみられます。中枢神経障害である無菌性髄膜炎(※)や横断性脊髄症(※)などもあります。

    ※無菌性髄膜炎…脳などの髄膜に異常が起こるのが髄膜炎ですが、細菌感染以外が原因で起こる髄膜炎が、無菌性髄膜炎です。

    ※横断性脊髄症…脊髄の一部が横方向に炎症を起こし、それによって神経障害が起こる病気です。

    (9)筋炎
    筋肉痛、筋酵素(CK)の上昇がみられます。

    (10)血液異常
    貧血、白血球減少症、血小板減少症、再生不良性貧血などがあります。

    (11)リンパ腫
    唾液腺、涙腺、肺などに発症する場合があります。マルトリンパ腫(※)は低悪性度(※)で長年局所にとどまります。

    ※マルトリンパ種…粘膜のリンパ組織の細胞から発生するがんの一種

    ※低悪性度…悪性度とはがんの増殖・転移・再発しやすさの程度をあらわしたもので、低・中・高があります。

    (12)精神神経症状
    疲労感、頭痛、集中力低下、気分がよく変わる、などの症状の報告があります。

    3.活動性の高い症状
    シェーグレン症候群は慢性疾患で、症状に変化が少なく、長年同じような状態が続きます。しかし 少数ですが進行性のものあります。以下の症状が急速にあらわれる場合には、慎重に経過を観察して処置を検討する必要があります。

    ・腺性病変
    耳下腺腫脹の繰り返し、眼の乾燥の急速な悪化、(口唇唾液腺生検 (※)でリンパ濾胞やリンパ上皮性病変(導管上皮と筋上皮細胞の増殖による筋上皮島の形成))がある場合

    ※口唇唾液腺生検…リップ生検。下唇の内側から唾液腺の組織を採取して顕微鏡で観察する検査です。
    メスで1センチ程度切開して1~2針、縫いますが、局所麻酔をします。外来・通院でできます。
    病気の程度や活動性が評価できます。

    ・腺外病変(全身性臓器病変)
    発熱、高ガンマグロブリン血症性紫斑病、多発神経炎などの血管炎、肺、腎、肝、神経、筋などの活動性病変、無菌性髄膜炎、横断性脊髄炎などがある場合

    ・検査値
    IgGやリウマトイド因子の高値、M蛋白血症、抗SS-A抗体や抗SS-B抗体の急速な上昇がみられる場合
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.15、19-28、三森明夫監修『新版 膠原病 (よくわかる最新医学)』主婦の友社 2010、P147)
  • 診断
  • 厚生省特定疾患免疫疾患調査研究班による「シェーグレン症候群の改訂診断基準」(1999年)は、以下の通りです。

    1.生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
    (A)口唇腺組織で4mm2あたり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上
    (B)涙腺組織で4mm2あたり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上

    2.口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
    (A)唾液腺造影でStage1(直径1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見
    (B)唾液分泌量低下(ガム試験(※)にて10分間で10mL以下またはサクソンテストにて2分間2g以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見

    3.眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
    (A)Schirmer試験(※)で5mm/5分以下で、かつローズベンガル試験(※)(van Bijsterveldスコア)で3以上
    (B)Schirmer試験で5mm/5分以下で、かつ蛍光色素試験(※)で陽性

    4.血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
    (A)抗Ro/SS-A抗体陽性
    (B)抗La/SS-B抗体陽性

    以上の4項目のうち、いずれか2項目以上を満たせばシェーグレン症候群と診断します。

    ※ ガム試験、サクソンテスト…ガムやガーゼを噛んで唾液の分泌量を調べる検査です。

    ※ Schirmer試験…眼に関する検査で、濾紙を用いて涙液量を測定します。

    ※ ロ-ズベンガル試験、蛍光色素試験…角膜や結膜の障害程度を調べる検査です。
  • 評価基準
  • 最近はシェーグレン症候群の活動性や障害の程度を評価するために、新しい基準が提唱されてきています。まだ開発途上であることと、主には研究面で薬の効果などをみることに用いられる指数であることから、日常診療ではあまり用いられていませんが、数値化することで病勢や障害の程度が評価する取り組みが行われています。


    1.ESSPRI(EULAR SS Patient reported Index)
    EULAR(ヨーロッパリウマチ学会)が開発する、患者さん自身が報告する症状をベースとしたシェーグレン症候群の指数です。

    2.ESSDAI(EULAR Sjogren's syndrome disease activity index)
    EULARが開発する、シェーグレン症候群の活動性を評価する指数です。

    3.SSDAI(Sjogren's syndrome damage index)
    シェーグレン症候群の障害を評価する指数です。

    4.SCAI(Sjogren's syndrome clinical activity index)
    シェーグレン症候群の臨床活性を評価する指数です。

    5.SjSDAM(Sjogren's Syndrome Disease Activity Measurement)
    シェーグレン症候群の活動性を評価する指数です。「胸膜/肺の病変」「血管炎の変化」「唾液腺腫脹の変化」「活動性の腎病変」「関節病変」「リンパ節/脾臓の肥大」「発熱」「疲労感(とその変化)」「白血球/リンパ球減少」「末梢神経障害」の10項目にそれぞれ重み付けをして計算されます。

    6.SjSDDI(Sjogren's Syndrome Disease Damage Index)
    シェーグレン症候群の障害程度を評価する指数です。「リンパ球増殖性疾患」「胸膜/肺の障害」「CNS障害」「非可逆的腎障害」「末梢神経障害」「流涙障害」「眼障害」「唾液流障害」「歯牙欠損」の9項目にそれぞれ重み付けをして計算されます。
    (参照:http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/acr2006/200611/501862.html 2013年8月閲覧)
  • 治療
  • 残念ながら根治させる治療法は現在まだなく、 腺性病変に対する治療は、乾燥症状に対する対症療法が中心となります。

    1.ドライアイの治療
    人工涙液や点眼薬を用いて、眼の乾燥を防ぎます。

    ・涙点プラグ挿入術
    涙は涙腺から分泌されて眼の表面を潤し、涙点から鼻へと排出されますが、重症のドライアイの患者さんに対して、乾燥症状を改善させるため涙点に栓を施す「涙点プラグ挿入術」という外科的療法が行われることがあります。この治療法には保険が適用されます。
    挿入は点眼麻酔下で行えるため、処置の為に入院する必要はありません。外来通院でできます。また、なにか不具合があれば容易にプラグをとることができます。
    注意すべき点としては、プラグは規格品なので患者さんの涙点の形に合わずに自然と脱落することがあります。処置後にプラグの固定具合や汚れを確認するために定期的な診察をし、目の汚れを洗い流すために人工涙液での洗眼は続けなければなりません。
    ・涙点焼灼
    涙点プラグが効果的なのに、プラグが脱落しやすいなど継続的に閉鎖できない場合には、涙点を焼灼したり縫合したりして、外科的に閉鎖する方法も行われます。

    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.60-64)

    2.ドライマウスの治療
    主に治療に用いるのは唾液分泌促進のための内服薬と唾液の補充に用いる人工唾液です。この他に洗口剤、口腔用軟膏、トローチ剤、湿潤剤、ガムなども使われます。
    また、シェーグレン症候群に合併しやすい 口腔カンジダ症に対しては、抗真菌剤が用いられます。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.67-73)

    3.ドライスキンの治療
    シェーグレン症候群によって、皮膚乾燥(ドライスキン、皮脂欠乏性皮膚炎)が起こることがあります。この治療は皮膚のバリア機能の改善が主体となります。外用剤として軟膏、白色ワセリンなどを1日2~3回薄く塗ります。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.78)

    4.耳下腺の腫れと痛みの治療
    唾液腺の閉塞により耳下腺の腫脹、発赤、疼痛、リンパ節腫脹などがあらわれることがあります。自然に軽快することもありますが、1週間程度の抗生物質と消炎鎮痛剤の服用が有効です。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.82)

    5.膣乾燥の治療
    膣乾燥によって、性交不快感、性交痛などがあらわれることがあります。この場合には卵巣ホルモン剤の「エストリオール」が有効です。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.87)

    また、主な腺外病変に対する治療は、以下のとおりです。

    1.微熱、多発関節炎、多発筋痛症
    シェーグレン症候群では、ときに37度台の微熱や関節腫脹や関節痛が起こることがありますが、その関節炎で関節が変形することはありません。ただ、関節リウマチを合併することもありますので、的確な診断が必要です。症状が強い時には、鎮痛解熱剤や少量のステロイド剤の服用が有効です。抗リウマチ薬が用いられることもあります。

    2.皮膚症状
    環状紅斑や高ガンマグロブリン血症性紫斑病には、ステロイド軟膏の塗布、抗血小板剤やステロイド剤の服用が有効です。

    3.レイノー現象
    ビタミンE製剤やプロスタグランジン製剤などの末梢血管拡張剤と抗血小板剤が有効です。

    4.精神神経症状
    シェーグレン症候群の患者さんには、神経症、うつ病などの精神症状、原因不明の疼痛、頭痛、痺れ感などの線維筋痛症の症状がみられることがあります。ただ、更年期症状の疑いも除外できないときがあるため、慎重な判断を要します。治療には、抗不安薬、抗うつ病薬、抗てんかん薬、鎮痛・鎮静剤などが有効なことがあります。

    5.呼吸器症状
    気管の乾燥に伴う乾性咳に対しては、部屋の加湿、マスクの着用が有効です。また、シェーグレン症候群の患者さんの約1割に間質性肺炎の合併がみられるという報告があることから、シェーグレン症候群の確定診断後、レントゲン、CT検査、呼吸機能検査なども必要です。間質性肺炎を認めた場合には、ときにステロイド剤が必要となることもあります。

    6.消化器病変
    消化器の病変としては萎縮性胃炎の合併がよく知られており、消化剤や蠕動(ぜんどう)運動亢進剤が有効です。原発性胆汁性肝硬変に対しては、胆汁の流れをよくするような薬を内服します。

    二次性シェーグレン症候群の患者さんは、合併する関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの疾患の治療も行います。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.81-83)
  • 経過・予後
  • シェーグレン症候群の予後は一般的に良好で、腺性、腺外病変とも経過は長期間安定しています。ただ、乾燥症のため患者さんのQOLは必ずしも良いとはいえません。
    10年以上患っている患者さんの中には、レイノー現象、末梢神経症、間質性肺炎、腎病変、ミオパチー(※)、リンパ腫、などの腺外 病変を発症する患者さんがいますので、長期にわたって観察していくことが大切です。
    ※ミオパチー…萎縮など筋肉関連の疾患全体を指す言葉です。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.30、『難病の診断と治療方針2改定版』疾病対策研究会 2001、P.67)
  • ケア
  • 全体的には部屋の保湿を心がけます。ドライマウスの患者さんは口内乾燥を防ぐためにこまめに水分補給をする、ガムを噛む、虫歯予防のために歯磨きを励行する、湿らせたマスクを着用する、ドライアイの患者さんは密閉性の高い眼鏡を装着する、ドライスキンの患者さんは石鹸で肌を擦りすぎない、炊事・洗濯の際に木綿の手袋の上からゴム手袋を装着する、などのケアをしましょう 。

    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.79、103-104)
  • シェーグレン症候群特有の検査
  • 1.涙液検査
    ・Schirmer(シルマー試験)
    5ミリ幅のろ紙をまぶたの下にあて、点眼麻酔なしで、水平よりやや上の方を見るように指示して、眼を開き、瞬き自由で5分間の涙液量を調べます。一般的には5分間に出る涙の量が10ミリ以上なら正常、5ミリ以下ならドライアイの疑いがあると言われています。

    2.角結膜染色検査
    涙の分泌量が減ると目に異物が入っても洗い流しにくくなるため、角膜が傷つきやすくなります。この検査では色素を使って角膜の創傷具合を調べます。
    ・ローズベンガル試験
    1%ローズベンガル(赤色の染色液)2マイクロリットルを点眼します。その後、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼に帯状の光をあて、角膜・結膜の涙液層が傷ついていないかどうかを調べます。耳側結膜、角膜、鼻側結膜の染まり具合をそれぞれ、0:無染色、1:軽度、2:中等度、3:重度の3段階で、合計9点とし半定量的(※)に評価します。

    ※半定量的…まず「定量的」とは物質に含まれている成分の量を定めるという意味があります。しかし医療検査では、「0.001」など精密な数値(定量的)ではなく、検査結果の迅速性を重んじて大ざっぱな区分けで報告することがあります。これが半定量的の概念です。例えば、尿に血液が混じっているかどうかの検査では、?、±、+、++、+++と判定し、+以上を尿潜血陽性(尿に血が、混じっている)とします。

    ・蛍光色素試験
    角膜のみの検査の試験です。1%フルオレセイン(蛍光色素)2マイクロリットルを点眼して、コバルトフィルターを照射します。そして細隙灯顕微鏡を用いて角膜の染まり具合を、0:無染色、1:軽度、2:中等度、3:重度の3段階で、合計3点として評価します。

    3.唾液分泌能検査
    ・ガムテスト
    市販のチューインガムを10分間噛み、その間に分泌される唾液を紙コップなどに採取し、その体積を注射器などを使って測定する検査です。

    ・サクソンテスト
    サクソンテストは、所定の重量測定済みの清潔なガーゼを口腔内に入れて2分間噛み、ガーゼに吸収された唾液の重量を測定する検査です。2分間のおけるガーゼの重量増加が2グラム以下の場合、陽性と判断されます。

    ・唾液腺シンチグラフィー
    低エネルギーのガンマ線を出すテクネシウム99m(半減期6時間)を静脈内に注射して、シンチカメラにて唾液腺に集積するアイソトープ(※)を経時的に静止画像で撮影するとともに、その経過をtime-activity curve(TAC)として描いて、蓄積率や分泌率を定量的に解析します。

    ※アイソトープ…化学的性質が同じでも重さが少し違う原子のことで、同位体とも呼ばれます。

    ・唾液腺造影撮影
    口腔内の耳下腺管開口部からカテーテルを挿入し、ここから造影剤を注入して耳下腺部をX線撮影します。判定はStage0(正常像)~Stage4(漏えい・破壊像)までの5段階です。

    ・口唇腺生検病理組織検査
    浸潤(しんじゅん)麻酔の後、下唇の内側を切って口唇腺を6個程度摘出し、切開部を縫合します。採取した組織を顕微鏡で調べ、口唇腺の導管周辺のリンパ球浸潤の程度を調べます。
    (臨床症状 3.活動性の高い症状 の項目もご参考にして下さい)

    4.血液検査
    シェーグレン症候群の患者にみられる抗Ro/SS-A抗体や抗La/SS -B抗体が血液中にみられるかどうか検査します。
    (参照:住田孝之編『やさしいシェーグレン症候群の自己管理』医薬ジャーナル社、2008、P.37-52)
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