難病ドットコム 特定疾患・稀少疾患の医療情報提供サイト特定疾患・稀少疾患の医療情報提供サイト

 サイト内検索
6月25日(月)
文字サイズを変更大標準小

疾患

  • 定義・概念
  • 二分脊椎は先天性の神経系の奇形で、脊柱管という管構造を形成する脊椎骨の一部が形成不全となり、本来ならば脊椎の管の中にあるべき脊髄が脊椎の外に出て癒着や損傷しているために起こる、様々な神経障害の状態をいいます。
    二分脊髄は胸椎下部、腰椎部、仙椎部に最も多くみられ、通常3?6個の椎体にまたがっていますが、その重症度は多様で、明らかな異常を欠く潜在性のものから、嚢胞が突出するもの(嚢胞性二分脊椎)、完全に脊椎が開放し(脊椎披裂)重度の神経機能不全を呈し死に至るものまであります。
    胎児への種々の検査を通じて発見されるため、重症例については出産後すみやかに整復されますが、その後も歩行障害や排尿排便障害が残ることが多く、この場合終生にわたって治療とリハビリテーションが必要になります。
    また二分脊椎の患者のうち9割が水頭症を、過半数がキアリ奇形を合併しているといわれ、こちらの処置も必要になります。

    ※胸椎、腰椎、仙椎…脊椎は椎骨と呼ばれる骨が連結したもので、頭側から頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個がありその下に、仙椎、尾骨があります。

    ※嚢胞…分泌液がたまって水泡になったもの。

    ※水頭症…脳室あるいはその他の頭蓋内に異常に大量の脳脊髄液が貯留しこれらの腔が拡大し頭蓋内圧が亢進した状態を指します。

    ※キアリ奇形…脳が正常より少し下方に変位していることがあり、稀に呼吸や嚥下の障害を認めることがあります。
  • 疫学
  • 詳細な疫学調査はごく最近始まったばかりですが、日本産婦人科医会・外表奇形等統計調査の報告によれば、2007年の患児発生頻度は分娩数10,000件あたり4.8で、その同年の出生数は約400名と推測されています。
    また、日本産婦人学会・先天異常部の疫学調査によると、患児の発生頻度は1980年代2.2、1990年代3.6、2000年4.8、2001年5.1、2002年5.5、2003年6.1、2004年5.1、2005年4.7、2006年4.8と、2003年まで上昇の一途をたどっていたことがわかります。これは日本人の食生活が魚・野菜中心から肉食・外食中心へとシフトするのに軌を一にしています。それ以降頭打ちになったのは、妊婦に対する葉酸摂取の啓発活動が定着してきたからでしょう。

    ※葉酸…水溶性のビタミンB群の1つ。細胞の分裂と増殖、組織と臓器の形成、巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)・胎盤早期剥離・流産の防止などの働きをしています。
    (参照:近藤厚生、小口秀紀、紀平正道、柴田金光、下須賀洋一、多田克彦『葉酸と二分脊椎症に関する疫学調査(2002-07):妊婦は葉酸サプリメントの内服が必要』(日本医事新報No.4405、P.65-69、2008)、難病情報センター「二分脊椎」HP)
  • 成因
  • 妊婦さんが摂取する葉酸の不足、環境、遺伝が二分脊椎の主な原因といわれています。葉酸の不足は妊娠前から葉酸サプリメントを内服(1日あたり400μg)すれば十分克服でき、これにより発生リスクを7~8割減らすことができます。
    環境の要因としては、糖尿病、肥満、てんかん薬の内服、妊娠前期の高熱発作、放射線被爆曝、ビタミンAの過剰摂取が指摘されており、厚生労働省の研究班ではてんかんに罹患する女性が妊娠を計画・希望する場合には、抗てんかん薬を単剤とし、葉酸を1日2~3mg併用して内服すべきと提言しています。
    二分脊椎の発症は人種、地域により大きく相違していて、そこには遺伝子因子が関与していると考えられています。さらに葉酸を代謝する酵素の働きで低下している遺伝子多型があります。この遺伝子多型(MTHFR677TT)を持つ女性は、体内で葉酸を充分に活用できず、ホモシステインの血清濃度が上昇し、二分脊椎の赤ちゃんを妊娠するリスクが高まります。しかしこの場合でも妊娠前から葉酸サプリメントを内服していれば、二分脊椎の赤ちゃんの発生リスクは遺伝子多型を持たない人と変わらなくなります。

    ※ホモシステイン…必須アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝における中間生成物。ホモシステインの代謝には、葉酸・ビタミンB6・ビタミンB12が関与しています。
    (参照:厚生労働省難治性疾患克服研究事業・二分脊椎の予防指針作成:二分脊椎の病因探索と葉酸情報の伝達システムの研究班『平成23年度総括研究報告書』P.1-2、葉酸普及研究会HP、難病情報センター「二分脊椎」HP)
  • 臨床症状
  • 出生時に見られる症状

    潜在性二分脊椎では、下背部(特に腰仙部)に皮膚洞(皮膚から脊椎の神経管にいたる孔で、放置しておくとこの孔の感染によって髄膜炎を併発する可能性があります)や色素沈着過剰部、多毛部などの皮膚病変が認められます。また脂肪腫や係留(脂肪組織により脊髄が硬膜と癒着した状態をいいます)など、病変下の脊髄部分にもしばしば異常が発生します。
    一方、嚢胞性二分脊椎、脊髄披裂といった開放性二分脊椎では超音波検査による出生前診断が可能で、母体血清中または羊水中のαフェトプロテインの高値によっても疾患が示唆されます。典型例では出生後、背部に病変をみることができます。
    嚢胞性二分脊椎では、突出した嚢胞の内部に髄膜(髄膜瘤)もしくは脊髄(脊髄瘤)、またはその両方(脊髄髄膜瘤)が含まれることがあります。皮膚で十分に覆われていない場合には嚢胞が破裂しやすくなり髄膜炎のリスクが高まることから、整復術が行われます(生後48時間以内)。
    脊髄披裂では脊髄が体の外に直接露出しており、嚢胞性二分脊椎と同様に手術による治療が行われますが(出産後48時間以内)、もし迅速に行われない場合には神経損傷が進行して死亡することがあります。
    また、90%の症例に水頭症が発生します。キアリ奇形を過半数の患者に認め、10%の患者に無呼吸発作、喘鳴、嚥下障害が認められます。

    各領域で見られるその他の症状

    整形外科領域では、歩行障害・足部の褥創、脊柱側弯、脊柱後弯などを認めます。
    泌尿器科領域では、尿失禁、尿路感染症が70~80%の患児に発生します。
    成人男性の過半数で性機能障害が発生、これは精巣発育不全および神経障害のために惹起されるものです。
    小児外科領域では、大便失禁が最大の問題になっています。尚、軽度から中程度の知能障害が約半数の患児に発症します。

    ※キアリ奇形…頭蓋底(頭の骨の底)で脊髄との移行する部分の脳(後脳)の先天異常。しばしば水頭症や二分脊椎を合併します。

    ※喘鳴…呼吸に際してゼーゼーと音を立てる雑音をいいます。

    ※嚥下障害…食べ物の?み込みがうまくいかない状態をいいます。

    ※脊柱側弯…脊椎(背骨)が側方に湾曲することをいいます。

    ※脊柱後弯…本来は腹部のほうに凸である脊柱が、後方に凸に変形することをいいます。

    ※尿路感染症…尿路(腎臓~尿管~膀胱~尿道口)に病原体が生着して起こる感染症をいいます。
    (参照:難病情報センター「二分脊椎」HP)
  • 診断
  • 二分脊椎神経学的スケール

    Spina Bifida Neurological Scale (SBNS) (大井ら,1992)

    機能障害の重症度を把握するために使われます。
    このスケールでは、運動(M:motor)が6点、反射(R:reflex)もしくは間隔(S:sensory)
    が4点、膀胱・直腸(BB:bladder and bowel)が5点の合計15点で満点です(グレード
    I)。一応の目安として、11点以上は排尿・排便障害のみで歩行は正常(グレードII)、6~10点では排尿・排便障害と歩行にも支障がある(グレードIII)、5点以下では排尿・排便障害と共に起立できない(グレードIV)、そして3点では寝たきり(グレードV)の状態が相当し、グレードとしてI~Vの重症度分類と相関します。

    運動(M:motor)
    6点 爪先立ち、5点 踵(かかと)立ち、4点 踝(くるぶし)の関節、3点 膝の関節、2点 股の関節、1点 動かない
    反射(R:reflex)間隔(S:sensory)
    4点 お尻(肛門の周囲)、3点 足の小指、2点 向こう脛(内側)、1点 感覚はない
    膀胱・直腸(BB: bladder and bowel)
    5点 尿・便いずれも完全、4点 尿・便いずれかが完全、3点 尿・便のいずれも少し、2点 尿・便いずれかが少し、1点 いずれもコントロールできない
    (参照:日本二分脊椎研究会『二分脊椎と水頭症の絵本ガイド』P.6-7)

    また、移動能力の評価基準としてはHofferに準じた分類が使われます。
    1.Community ambulator
    a 独歩群;戸外、室内とも歩行可能で杖不要。
    b 杖歩行群;戸外、室内とも歩行可能で杖必要。
    2.Household ambulator
     社会的活動に杖歩行と車いす移動を併用。
    3.Non-functional ambulatory
     訓練時のみ杖歩行可能で、そのほかは車いす使用。
    4.Non ambulator
    移動にはすべて車いすを要する。
    (参照:日本二分脊椎研究会『二分脊椎について(整形外科領域)』P.2)
  • 治療
  • 水頭症は脳室腹腔シャント術で対応します。合併症のキアリ奇形による呼吸不全、誤嚥性肺炎等は死亡原因の第1位となっています。脊髄空洞症があればこれを外科的に治療します。
    整形外科領域では、補装具・松葉杖を使用し、足関節や股関節の矯正手術、脊柱変形の手術で対応します。
    泌尿器科的には、清潔間欠導尿(CIC)を幼児期から導入して、抗コリン剤と抗菌剤を処方し、症状が高度であれば、膀胱拡大術と尿失禁防止術(スリング手術)が必要となります。
    大便失禁には、浣腸・摘便・逆行性洗腸法、虫垂を腹壁へ吻合する順行性浣腸法(ACE)などが採用されています。便秘には下剤や坐薬を処方します。
    成人男性の勃起不全にはED治療薬を処方します。
    補装具による褥瘡、創傷には塗り薬や痛み止めを処方します。
    二分脊椎は出生直後から終生にわたり、治療とリハビリテーションが必要になります。

    ※誤嚥性肺炎…ものを飲み込む力が弱まると口の中の細菌や胃液が気管に誤って入り込み肺炎を起こします。

    ※脊髄空洞症…脊髄の中に脳脊髄液がたまった大きな空洞ができ、脊髄を内側から圧迫することで、様々な神経症状や全身症状をきたす病気をいいます。

    ※清潔間欠導尿…膀胱に溜まった尿を一定の時間毎に尿道口からカテーテルを挿入して体外に排出することをいいます。「間欠的自己導尿法」ともいわれます。

    ※抗コリン剤…副交感神経を刺激する神経伝達物質であるアセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合するのを阻害して副交感神経の働き(膀胱においては膀胱を収縮させる)を抑える薬です。
    (参照:難病情報センター「二分脊椎」HP)
  • 非薬物・外科治療
  • 出産時の手術

    出産後に開放性二分脊椎や水頭症の手術がすみやかに行えるよう、二分脊椎の患児の出産は帝王切開で行われます。

    出産後の手術

    整復術(生後48時間以内)

    嚢胞性二分脊椎、脊髄披裂といった開放性二分脊椎に対しては露出した神経組織を皮膚から切り離して脊髄本来の形に成形、皮下組織に付着している硬膜をはがして、脊髄形成した神経組織を硬膜で縫合閉鎖します。その後、筋層、皮下脂肪層、皮膚を縫合閉鎖する「脊髄披裂修復」(生後48時間以内)が行われます。
    潜在性二分脊椎では皮膚洞が神経管に至る場合にすみやかに切除処置されるものの、それ以外の皮膚洞や脊髄脂肪腫については手術を行うべきか否か、また行うならどんなタイミングで行うか、一定の見解が出ていません。それは脊髄脂肪腫症例の自然経過や術後経過がまだよくわかっていないためで、平成18年から東京慈恵会医科大学小児脳神経外科の大井静雄教授が中心になって、全国の7つの施設でこの問題に取り組む研究が始まっています。
    (参照:日本二分脊椎・水頭症研究振興財団『水頭症・二分脊椎ハンドブック』P.134-135、
    日本形成外科学会HP、千葉大学脳神経外科HP)

    脳脊髄液の排液(整復術と同時期に実施)

    水頭症によって脳室拡大を合併している場合は、脊髄披裂修復と同時にオンマヤリザーバーを頭皮下に設置するか、脳室ドレナージを留置して脳脊髄液の排液を行う必要が生じます。水頭症の症状が顕在化するようならば後日、脳室腹腔シャントが必要となります。出生直後に閉鎖術と脳室腹腔シャントを同時に行わないのは、新生児期には髄液産生が大きく変化するためにシャント閉塞や感染等の合併症をきたしやすく、それを予防するためです。
    (参照:日本脊髄外科学会HP)

     
    脳室腹腔シャント術(生後約2週間後)

    水頭症に対して全身状態の改善を待って脳室腹腔シャント術を施行します。
    脳室拡大による頭蓋内圧はダイレクトに中枢神経に圧迫を加えます。症状を出してしまう余分な髄液量を生理的な範囲で他の体腔に流すものがシャントチューブであり、このシャントチューブを体に埋設する手術をシャント手術と呼びます。
    シャント手術には脳室から髄液を腹腔に導く「脳室腹腔シャント(V-Pシャント)」、脳室から心房に髄液を導く「脳室心房シャント(V-Aシャント)」、腰椎くも膜下腔から腹腔へ髄液を導く「腰椎腹腔シャント(L-Pシャント)」の3つの方法がありますが、一番多く施術されているのが脳室腹腔シャントです。
    埋設されるシャントシステムはシリコン製のチューブでシャントバルブ(圧・流量弁)とレザーバー(髄液貯留槽)などの機能を含み、合併症のない限り、半永久的に適正な量の髄液を流しつづけます。そして症状が落ち着けば、特別に安静にしておく必要はなく、激しいものを除けば運動制限も不要です。
    (参照:千葉大学脳神経外科HP、水頭症.jpのHP)

    キアリ2型奇形手術(生後1~3ヶ月後)

    キアリ奇形とは、小脳、延髄および橋の発生異常を基盤とする奇形で、小脳・脳幹の一部が大後頭孔を超えて脊柱管内に陥入する形態を呈する疾患です。疾患の有無はCTやMRIでわかります。1型から3型まであります。1型では小脳扁桃の頸椎管内への嵌入(はまり込み)がみられ、2型では小脳扁桃に加えて小脳虫部、第4脳室、延髄などが頸椎管内へ嵌入し、脊髄髄膜瘤を伴います。3型では後頭部髄膜瘤内に小脳、脳幹が脱出しています。
    キアリ2型奇形が高度になれば、誤嚥性肺炎、呼吸不全を惹起し、死亡にいたるといわれています。
    そこで大後頭孔部の骨を取り除くことによって頭蓋内圧と脊椎管内圧の間の圧較差をなくし、同部の髄液循環障害を改善する「大後頭孔減圧術」が行われます。

    ※大後頭孔…頭蓋骨の後頭蓋窩の中央に位置する大きな開口部をいいます。

    ※小脳扁桃…小脳下面の虫部垂の両側にあります。

    ※小脳虫部…小脳のなかで系統発生学的に古い無対の部分。

    ※第4脳室…第4脳室は菱脳の中にできる脳室で、頭方は中脳水道に、尾方は中心管につづいています。

    ※延髄…脳幹のうち最も尾側の部分で、吻側に橋、尾側に脊髄があります。

    ※後頭部髄膜瘤…後頭部にできる髄膜瘤
    (参照:『水頭症・二分脊椎ハンドブック』P.134、日本脳神経外科学会、日本脳神経外科コングレス「脳神経外科疾患情報ページ」、岡山大学病院脳神経科HP
    脊髄空洞症

    脊髄実質中に脳脊髄液が貯留し空洞を形成した状態をいいます。脊髄実質は紙のように薄くなって、上肢の痛み、感覚障害、歩行障害などの症状があらわれます。
    脳脊髄液が自由に流れるようにするため、キアリ奇形を伴う脊髄空洞症には「大後頭孔減圧術」が行われます。
    (参照:岡山大学病院脳神経科HP)

    足関節や股関節の矯正手術

    二分脊椎の患者さんの中には成長につれ足関節や股関節が変形される方がいらっしゃいます。
    1.尖足(せんそく)
    足先を上にあげる筋肉が弱く、ふくらはぎの後ろの筋肉が強い時に起こる変形で、立った際に踵が浮きます。軽度の場合の治療はアキレス腱のストレッチ、夜間の短下肢装具が中心となりますが、変形が硬くなってストレッチが難しい時にはアキレス腱を延ばす手術をします。ふくらはぎの後ろの腓腹筋(ひふくきん)がアキレス腱になる境目で腱を包む薄い腱膜を切ってアキレス腱の緊張を緩める「ヴルピウス法」とアキレス腱を短冊状2つに切り分けて延ばす「Z状延長法」があり、前者には患者さんの成長に応じて繰り返し行える利点がありますが、変形が著しく強い時には後者が選択されます。

    2.内反足(ないはんそく)
    足裏が内側に向くように曲がる変形で、内側に引っ張る後脛骨筋(こうけいこつきん)が強く、外側に引っ張る腓骨筋群(ひこつきんぐん)が麻痺している時に起きます。尖足を合併しているものを特に「内反尖足(ないはんせんそく)」といい、硬い変形になりやすいので注意が必要です。軽度の場合の治療はアキレス腱や後脛骨筋のストレッチ、夜間の装具の装着が中心になります。手術は足が成長するまでは後脛骨筋やアキレス腱を延ばして緊張を緩めることが中心となり、骨の手術は10歳以降に行われます。足関節を切り開いたり(後方解離術、内側解離術)、骨の矯正骨切り術・関節固定手術(エバンス手術、三関節固定術)を行ったりしますが、手術をした場合でも装具やリハビリは必要です。

    3.外反扁平足(がいはんへんぺいそく)
    長・短腓骨筋の緊張が強く、後脛骨筋が麻痺している時に起こります。土踏まずがなく(扁平足)、後から足を見ると踵が外側に倒れこんでいるためX脚となり、歩行が不安定になります。軽度の場合、治療は腓骨筋のストレッチが中心で、歩行時には土踏まずを押し上げるアーチサポートのついた中敷を靴の中に入れます。また靴はヒールカップ付きのものを選び踵が外反しないようにします。中等度の変形には腓骨筋を延ばす手術、高度の変形に対しては腓骨筋の延長に加えて踵骨や距骨の周りの関節を切り離し正しい位置に固定し直します(距骨下関節制動術、グライスグリーン手術)。装具は術後も必要です。


    ※距骨(きょこつ)…踵付近にある七個の足根骨のうち最上部にある骨。下腿の骨と他の足根骨を連結して足首をつくります。

    4.踵足(しょうそく)
    前足部を持ち上げる前脛骨筋の緊張が強く、下腿三頭筋・アキレス腱の力が弱い時、踵のみ地面に接して歩行する踵足があらわれます。手術による治療は足が成長するまでは前脛骨筋を延ばして緊張を緩めることが中心となり、成長後はアキレス腱の力を増すべく前脛骨筋を脛骨の後方へ移行して踵骨に植えつける手術が行われます。

    ※下腿三頭筋(かたいさんとうきん)…ふくらはぎの筋肉で腓腹筋(内側腓腹筋、外側腓腹筋)とヒラメ筋からなります。

    5.股関節の脱臼
    生後早期から脱臼とわかるケースと成長につれて徐々に脱臼していくケースがあり、前者の場合はリーメンビューゲル装具という先天性股関節脱臼治療用装具を用いて整復を試みることがあります。体の麻痺が下肢全体に及ぶ場合には手術はせず股関節が拘縮しないようリハビリを行い、立ったり歩行が可能な場合には積極的に手術を行います。関節包を開いて脱臼を整復して余った関節包を切除したり(観血整復)、大腿骨頭の下の部分をくさび状に切除した後、金属プレートで固定して大腿骨頭の向きを調整したり(大腿骨骨切り術)、自分の骨を発育不全の臼蓋上方に移植したり(臼蓋形成術)、腹筋の一部である外腹斜筋を移行したり(外腹斜筋移行術)します。

    ※拘縮(こうしゅく)…関節周囲の皮膚や筋肉が固くなり関節の動きが悪くなることをいいます。

    ※大腿骨頭…大腿骨の上部にあって股関節と接する部分をいいます。

    ※臼蓋…大腿骨頭を屋根状に覆う股関節の骨盤側の骨をいいます。

    6.褥瘡(じょくそう)
    変形のある足に集中して力がかかると骨の突出部の皮膚や皮下組織が圧迫されて壊死を起こすことがあります。これを褥瘡といい、患部への力の軽減や消毒、洗浄が必要になります。
    (参照:『水頭症・二分脊椎ハンドブック』P.178-183)
    脊柱変形の手術

    1.脊柱側弯症
    キアリ1型奇形や脊髄空洞症の患者さんの中にMRI検査で脊柱側弯症が見つかることがあります。治療方針はX線上の側弯度(コブ角)に従って決められ、25°未満は経過観察のみ、25°以上で骨成熟未熟な場合は装具療法、45°以上は手術が考慮されます。椎弓や椎間関節に金属製のフックや椎弓根スクリューを挿入し、ロッドで固定して矯正します。
    ※コブ角…背骨のレントゲン撮影をした際に最も水平面が傾いた上下2つの椎骨の水平面を延長して延長線が交わってできた角度のことをいいます。

    2.脊椎後弯症
    脊髄髄膜瘤によって発生した背骨の変形や神経の麻痺で胸椎部もしくは胸腰椎移行部(胸椎と腰椎の境目)で後弯が見られることがあります。発生は乳幼児期で、進行して思春期に重度なものになるといわれています。装具療法の効果がない場合には後弯部の矯正固定術が行われます。後弯を形成する椎体を切除して短縮し、スクリュー、ロッドで固定して矯正します。
    (参照:『水頭症・二分脊椎ハンドブック』P.187-195)

    膀胱拡大術と尿失禁防止術(スリング手術)

    二分脊椎の患者さんで排尿に障害のある方は少なくありません。重度な方には以下の手術が行われることがあります。
    1.膀胱拡大術
    硬い膀胱壁、萎縮膀胱、尿漏出圧が40cm水柱以上の場合に適応となりますが、(1)小腸の壁を膀胱壁へ縫合して膀胱の容量を拡大、(2)大腸(結腸またはS字結腸)の壁を膀胱壁へ縫合して膀胱の容量を拡大、(3)膀胱を形成する筋肉の50から60%を切除してその部分を粘膜にする(自己膀胱拡大術)術式の3つがあります。(1)と(2)の腸管利用拡大術の場合、拡大効果は確実に得られるものの腸管粘液が膀胱にたまるので膀胱の洗浄が必要になります。また手術10年後以降に膀胱がんが発生する危険があるので年1回膀胱の組織検査をする必要があります。更に手術後、腸閉塞が発生する可能性が5から10%あります。(3)の自己膀胱拡大術にはがん化する危険性がありませんが、期待通りの膀胱拡大効果を得られる可能性は50%にすぎません。

    ※尿漏出圧…尿道から尿・検査用減菌水が漏出する時の膀胱内圧をいいます。40cm水柱以上あると腎機能障害の可能性が高くなります。

    2.尿失禁防止術(スリング手術)
    膀胱の出口である膀胱頚部を自身の腹筋から取り出した腹直筋筋膜で支えることによって女性患者の8、9割、男性患者の5割が尿漏れをしなくなります。米国では人工尿道括約筋(AMS800)埋め込み術を併用することが多いですが、我が国では2012年4月にようやく保険適用となり、今後利用が増えていくとみられています。
    (参照:『水頭症・二分脊椎ハンドブック』P.208-209)
  • 経過・予後
  • 嚢胞性二分脊椎、脊髄披裂といった開放性二分脊椎の場合、出産後48時間以内に整復術が行われますが、脊髄が体の外に直接露出している脊髄披裂をそのまま放置しておくと神経の損傷が進行して死亡することがあります。また二分脊椎の9割の症例で水頭症を合併しているので、水頭症によって脳室拡大を合併している場合には整復術と同じタイミングで脳脊髄液の排液を行います。更に水頭症の症状が顕在化するようなら生後2週間後をめどに脳室腹腔シャント術を行い、脳室から髄液が半永久的に排出されるようにします。また、小脳扁桃、小脳虫部、第4脳室、延髄などが頸椎管内へ嵌入し、脊髄髄膜瘤を伴うキアリ2型奇形を合併している患者さんの場合、奇形が高度になれば誤嚥性肺炎、呼吸不全を惹起し、死亡にいたるといわれています。そこで生後1~3ヶ月後をめどに大後頭孔部の骨を取り除いて頭蓋内圧と脊椎管内圧の間の圧較差をなくし、同部の髄液循環障害を改善する「大後頭孔減圧術」が行われます。
    予後は侵される脊髄の高さと合併奇形の数および重症度によって変化し、最も予後不良なのは、高位脊髄(例:胸髄)に障害のある患者さんか、脊柱後弯、水頭症、早期の水腎症、及び他の先天奇形を合併した患者さんです。患児の多くは適切な治療によって多くが予後良好になります。尚、年長患者の死因は腎機能低下と短絡術の合併症といわれています。
    (参照:難病情報センター「二分脊椎」HP、メルクマニュアル18版「二分脊椎」)
  • ケア
  • 二分脊椎は出産時の手術の後も歩行や排尿排便に障害が残ることが多いため、足部や股関節のストレッチや装具を付けた歩行訓練、褥瘡や創傷の手当て、一人で排尿(間欠的自己導尿法)・排便(浣腸、摘便、逆行性洗腸法、順行性浣腸法)ができるようにするための訓練などが幼時から必要になります。本人だけではなく家族、学校、地域、職場のサポートも必要になりますので、主治医や患者会との連絡を密にしておくことが大切です。

    ※間欠的自己導尿法(CIC:clean intermittent catheterization)…膀胱に溜まった尿を一定の時間毎に尿道口からカテーテルを挿入して体外に排出することをいいます。「清潔間欠導尿」ともいわれます。

    ※摘便…用手摘便。薄手のゴム手袋をつけ、指を肛門に挿入してゆっくり回しながら便を掻き出します。

    ※逆行性洗腸法…結腸に溜まっている宿便を少しずつ溶かして排出させることと、排便反射を誘発することを目的に微温湯による高圧浣腸を連続して行います。

    ※順行性浣腸法(ACE)…大腸にストーマを設け腸蠕動と同一方向へ薬液を注入することで、逆行性洗腸と比べて少量の浣腸液で短時間に無理なく大量の便を取り除けます。
  • 検査
  • 出生前の検査

    胎児の二分脊椎は妊婦に対して行われる様々な検査の結果、見つかります。

    1.母体血清マーカーテスト(妊娠15週0日~21週6日に実施)
    妊婦さんの血液のタンパク質の濃度を測定する検査です。
    αフェトプロテイン、ヒト絨毛ゴナドトロピン、エストリオール、インヒビンAについて調べる「クアトロテスト」と前3項目について調べる「トリプルテスト」があります。
    αフェトプロテインは胎児が産生するタンパク質、ヒト絨毛ゴナドトロピンは胎盤で産生されるホルモン、エストリオールは胎児と胎盤で産生されるエストロゲン、インヒビンAは胎盤と卵巣で産生されるタンパク質です。
    この検査で21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、開放性神経管奇形の先天性異常の「確率」が分かります。ただ、確定診断ではないので、当たり外れがあることを留意しなければなりません。尚、クアトロテストはトリプルテストと比べてダウン症候群の精度が向上しますが、18トリソミー、開放性神経管奇形の精度は変わりません。

    ※トリソミー…通常2本1組が3本1組になる染色体異常。21トリソミーでは21番染色体が18トリソミーでは21番染色体が3本になります。

    ※開放性神経管奇形…開放性二分脊椎や頭蓋骨が正常に形成されないため脳が発達しない無脳症がこれにあたります。
    胎児肝細胞由来の血清腫瘍マーカーである「αフェトプロテイン」の値が高い時、開放性二分脊椎が疑われます。(潜在性の二分脊椎はわかりません)

    2.羊水検査(15週から18週に実施)
    超音波で胎児の位置を確認しながら、子宮に針を刺し注射器で羊水を20mLほど抜き取ります。羊水の中にある胎児の細胞を培養し、染色体の数や構造を調べます。直接胎児のサンプルをとるため確定的な診断結果が得られる一方、出血、羊水の流出、感染、針が胎児に触れる危険(可能性は非常に低い)、流産といったリスクと向き合わなければなりません。
    開放性二分脊椎の胎児の場合、羊水中のαフェトプロテインの値が高くなります。

    ※羊水…胎児をつつむ羊膜と胎児との間にあるすきま(羊膜腔)を満たす液体をいいます。

    3.超音波検査(20週頃)
    胎児の脊椎の状態を観察します。脊髄髄膜瘤や水頭症を見つけられます。

    4.MRI検査
    超音波検査の結果を受けて実施し、出産後の治療の計画を立てます。

    (参照:出生前診断情報センターHP、ラボコープ・ジャパン合同会社HP、財団法人日本二分脊椎・水頭症研究振興財団『水頭症・二分脊椎ハンドブック』P.233、左合治彦『5.胎児超音波スクリーニング検査の実際』日本産科婦人科学会雑誌56巻9号、N-638、日本小児外科学会HP)

    出生後の検査

    1.X線、超音波、CT、MRI検査
    皮膚所見がごくわずかでも根本に脊髄異常が認められる場合があるので、超音波またはMRIによる脊髄撮影は欠かすことができません。脊髄および股関節の単純X線、これらに奇形を認める場合には下肢の単純X線を、超音波、CT、またはMRIの頭部撮影と共に行います。

    2.尿路系の評価
    二分脊椎と診断されたら尿路系の評価が必須となります。尿検査、尿培養、BUNおよびクレアチニン測定、超音波検査などが行われます。また尿道への逆流が発生する際の膀胱容積および膀胱圧を測定することによって、予後と処置を決めることができます。それまでの所見と合併奇形によっては、更に尿流動態検査や排尿時膀胱尿道造影などの追加検査が必要になります。

    ※尿培養…尿に認められた細菌を培養して菌種を確定します。

    ※BUN…尿素窒素。血中の尿素の量を表し肝臓や腎臓の検査に用いられます。

    ※クレアチニン…主に筋肉で作られ、血清中のクレアチニンの値と尿中のクレアチニンの濃度から腎機能を調べることができます。

    ※尿流動態検査…蓄尿から排尿終了までの間の膀胱内圧、腹圧(直腸内圧で測定)、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流などを測定して、排尿障害の部位や程度を総合的に診断します。

    3.ラテックスアレルギーの検査
    排尿・排便でラテックス製のゴム手袋を使い続けているとアレルゲンが蓄積し、アナフィラキシーなど即時型アレルギー反応が起こることがあります。これをラテックスアレルギーといい、欧米では二分脊椎患者の36%が罹患しています。治療法は現在のところラテックス製のゴム手袋を回避するしかありません。
    ラテックスアレルギーの検査は詳しい病歴聴取、血清学的診断、皮膚テスト、負荷テストの順に進められます。
    (1)病歴聴取
    医療従事者、二分脊椎症患者、頻回手術患者、食物アレルギー患者のハイリスクグループであるかどうかをチェックします。
    (2)血清学的診断
    健康保険適応がある「Pharmacia CAP」と「Ala STAT」という測定キットを使ってラテックス特異IgE抗体の測定をします。
    (3)皮膚テスト
    現在、日本で利用可能な市販の抗原エキスはありませんが、簡便な方法としてベットサイドでゴムの手袋を刻んで試験管に入れ、これに生理食塩水を入れて1時間振盪させた液を用いてプリックテストをすることができます。抗体の値が高い時は十分に希釈したものを用い、万が一アナフィラキシーショックが起こっても対応できるように救急医薬品や呼吸管理ができる準備をしておきます。
    (4)負荷テスト
    実際にゴム手袋をはめて反応をみます。(2)や(3)の結果により事前に危険が予想される場合は行いません。
    (参照:メルクマニュアル18版「二分脊椎」、日本ラテックスアレルギー研究会HP[http://latex.kenkyuukai.jp/about/])
当サイトのコンテンツで、クリックすると外部のウェブサイトに直接リンクを設定している箇所があります。 ウェブ・アクセシビリティ向上のため(利用者の意図しないページの移動は行なわない)新規ウインドウではなく、 難病ドットコムと同じウインドウ内に開きます。 しかし第三者の管理するリンク先は弊社とは関係なく、ウェブサイトの内容・安全性を 弊社が保証するものではありません。   また、リンクは当サイト利用者への情報ナビゲート、及びQOL向上の便宜を図るため 参考資料として提供しております。 リンク先との間に提携などの特別関係はなく、商品・サービスの推薦を意図しているものではありません。 リンク先サイトの閲覧と利用はそれぞれのサイトの利用条件・個人情報保護方針等をご確認ください。