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2月25日(日)
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疾患

  • 定義・概念
  • 自己免疫性肝炎とは、肝臓障害の原因が自己免疫であると考えられるものをいいます。簡単にいうと、体の中の悪いウィルスや細胞を攻撃する機能を持つ「免疫」が、自分の肝臓細胞を攻撃してしまうことで、慢性肝炎などになってしまう難病です。英語でAutoimmune hepatitisと呼ばれ、頭文字からAIHとも略されます。
    何故、免疫が自分の肝臓を攻撃してしまうのか、原因は不明です。原則的には肝炎ウイルス、アルコール、薬物による肝障害、及び他の自己免疫疾患に基づく肝障害は、自己免疫性肝炎には含みませんが、例外的に、C型肝炎ウイルス血症を伴う自己免疫性肝炎があります。
    中年の女性に多く、検査で高ガンマグロブリン血症、抗核抗体をはじめとする自己抗体の陽性がみられると、肝生検(肝臓に針を刺して組織や細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査)を行い、自己免疫性肝炎の診断を行います。治療には免疫抑制薬、特に副腎皮質ステロイドが良好な効果を示します。免疫反応であるLE細胞現象が陽性の場合、ルポイド肝炎と以前は呼ばれましたが、現在ではこれも自己免疫性肝炎として区別されていません。
  • 疫学
  • 全国疫学調査から国内の患者数は2004年時点で9,533人と推定され、以前の調査より増加しています。専門施設を対象とする2006年から2008年の新規症例を対象とした全国調査では、好発年齢は50~60歳、最低年齢は3歳、最高年齢は91歳でした。男女比は男性:女性が1:6と女性が多いですが、以前の調査では1:7でしたので、男女差は縮まっています。
  • 成因
  • 現在のところ、自己免疫性肝炎の原因は不明です。ただ高ガンマグロブリン血症、抗核抗体をはじめとする自己抗体が陽性、副腎皮質ステロイドが有効であることなどから、自己免疫に関係があることが推定されています。
    遺伝性は無いと考えられ、家族内で同じ病気が発症する頻度は低いようです。ただ、組織適合抗原(生体の免疫系が自分でないものを認識する際の基準となる抗原のこと)は親から子へと受け継がれますので、一般の人の発症頻度よりは、親子間では高くなると考えられます。発症のきっかけに一部ウィルス感染(A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウィルスなど)が関係している可能性が指摘されています。
    またミノサイクリン、アトルバスタチンなどの薬物投与や、肝移植が誘因になります。
  • 臨床症状
  • 自己免疫性肝炎は他の肝臓疾患と同じように、初期には症状があまりでません。全身の倦怠感や黄疸、食欲不振、関節痛、発熱などの症状を訴える患者さんが受診して、病気が見つかる事があります。しかし、やはり初めての受診時にすでに肝硬変へと病気が進んでしまっている場合もあります。
    一方、まったく自覚症状が無い状態で、健診などの機会に肝障害が発見され、自己免疫性肝炎と診断された例も多くあります。病気が進むと肝硬変になり、腹水、黄疸など肝硬変による症状が現れてきます。
  • 診断
  • 自己免疫性肝炎の診断基準は、1996年に厚生省(当時)難治性肝炎調査研究班によるガイドラインと、1999年に改訂された国際診断基準があります。簡単にまとめると、血液検査で肝炎の所見が見られ、しかもウィルス性の可能性が薄い場合、自己免疫性肝炎を疑い、肝生検によって確定する、というのが診断の流れです。
  • 自己免疫性肝炎診断基準
  • 厚生省「難治性の肝炎」調査研究班、1996
  • (1) 概念
  • 中年以降の女性に好発し、慢性に経過する肝炎であり、肝細胞障害の成立に自己免疫機序が想定される*。診断にあたっては肝炎ウィルス**、アルコール、薬物による肝障害、および他の自己免疫疾患に基づく肝障害を除外する。免疫抑制剤、特にコルチコステロイドが著効を奏す***。
  • (2) 主要所見
  • 1. 血中自己抗体(特に抗核抗体、抗平滑筋抗体など)が陽性。
    2. 血清γグロブリン値またはIgGの上昇 (2g/dl以上)。
    3. 持続性または反復性の血清トランスアミナーゼ値の異常。
    4. 肝炎ウィルスマーカーは原則として陰性。
    5. 組織学的には肝細胞壊死所見およびpiecemeal necrosisに伴う慢性肝炎あるいは肝硬変であり、しばしば著明な形質細胞浸潤を認める。時に急性肝炎像を呈する。

    註 * 本邦ではHLA-DR4陽性症例が多い
    **本邦ではC型肝炎ウィルス血症を伴う自己免疫性肝炎がある。
    ***C型肝炎ウィルス感染が明らかな症例では、インターフェロン治療が奏功する例もある。
  • (3) 診断
  • 上記の主要所見1から4より自己免疫性肝炎が疑われた場合、組織学的検査を行い、自己免疫性肝炎の国際診断基準を参考に診断する。
  • (4) 治療指針
  • 1. 診断が確定した例では原則として、免疫抑制療法 (プレドニゾロン)を行う。
    2. プレドニゾロン初期投与量は十分量(30mg/日以上)とし、血清トランスアミナーゼ値の改善を効果の指標に漸減する。維持量は血清トランスアミナーゼ値の正常化をみて決定する。
    3. C型肝炎ウィルス血症を伴う自己免疫性肝炎の治療にあたっては、
    a. 国際診断基準(scoring system)でのスコアが高い症例ではステロイド治療が望ましい。
    b. 国際診断基準でのスコアが低い症例ではインターフェロン治療も考慮される。しかし、その実施にあたっては投与前のウィルス学的検索を参考に決定する。投与開始後は血中ウィルス量、肝機能を測定し、明らかな改善がみられない場合には速やかに投与を中止し、免疫抑制剤の使用を考慮する。
  • 改訂された自己免疫性肝炎の国際診断基準
  • International Autoimmune Hepatitis Group(1999)

    検査項目 点数
    1. 性 女性 +2
    2. ALP/ALT(ALP値をその基準上限値で除した値をX1、ALT値をその基準上限値で除した値をX2 とした場合、X1/X2が ALP/ALTになる.) <1.5 +2 1.5 - 3.0 0 >3.0 -2
    3. 血清グロブリンあるいはIgG;基準上限値との比 >2.0  +3 1.5 - 2.0 +2 1.0 - 1.5 +1 <1.0 0
    4. ANA(抗核抗体), SMA(抗平滑筋抗体)あるいはLKM-1の力価 >1:80  +3 1:80 +2 1:40  +1 <1:40  0
    5. AMA(抗ミトコンドリア抗体) 陽性 -4
    6. ウイルスマーカー (A, B, C型肝炎ウィルス (EB, CMV etc)) 陽性 -3 陰性 +3
    7. 最近の肝障害を起こしうる薬剤の服薬歴あるいは血液製剤の非経口的投与 あり -4 なし +1
    8. アルコール(1日平均エタノール摂取量) <25g +2 >60g -2
    9. 病理組織
    Interface hepatitis +3
    著しい形質細胞浸潤   +1
    肝細胞のロゼット様配列 +1
    上記所見なし  -5
    胆管病変  -3
    自己免疫性肝炎とは異なる病因を示唆する所見(肉芽腫、鉄沈着、銅沈着など) -3
    10. 患者あるいは一親等での他の自己免疫疾患の合併 +2
    11. 付加的検査項目(ANA, SMA, LKM1がいずれも陰性の者に適応する)
    ・他の自己抗体 (p-ANCA, SLA, ASGPR, LCI, LP, anti-sulfatide) 陽性
    * ASGPR : asialoglycoprtein-receptor LCI : liver-cytosolic antigen +2
    ・HLA-DR3あるいはDR4陽性 +1
    ・治療に対する反応 完全緩解 +2
    再燃 +3
    総合点による評価 確定診断(definite AIH) 治療前 : >15 治療後 : >17
    疑診(probable AIH)  治療前 : 10 - 15 治療後 : 12 - 17
  • 治療
  • 自己免疫性肝炎の治療は、現在では免疫抑制療法を行う事が指針とされており、副腎皮質ホルモンの投与が中心になっています。通常プレドニゾロンを一日30mgから40mgで開始し、ALT(GPT)とIgGの改善を確認しながらゆっくりと減量します。2年間以上、血清中ALTとIgGが正常範囲内で推移すれば、プレドニゾロン治療の一時中止も検討可能ですが、多くはありません。治療中止後8割に再燃が見られます。
    副腎皮質ステロイドの効果が不十分あるいは副作用のため十分量使用できない患者さんにはアザチオプリンなどの免疫抑制剤を併用します。また、病気が重く重症度が高い場合にはステロイドパルス療法(副腎皮質ステロイドを点滴で大量に用いる)を行う場合もあります。副腎皮質ステロイドの服用を医師の指導に寄らず勝手に中止する事は、自己免疫性肝炎の再燃につながり、再燃すると治療抵抗性(薬に耐性ができたり、治療の効果が少なくなったりすること)になる場合が多いことを理解し、きちんと服用することが大切です。
    日本では軽症例に対してはウルソデオキシコール酸で治療することもあります。
  • 非薬物・外科治療
  • 自己免疫性肝炎の治療は、原則として「薬物治療」が主体です。しかし、病状が悪化し肝硬変が進行すると門脈圧亢進症や食道静脈瘤などの合併症を起こし、静脈破裂にいたることがまれにあります。静脈破裂は大量出血を伴い、速やかな止血が必要になります。また,肝不全の進行に対して肝移植が行われこともあります。しかしこのようなケースは、自己免疫性肝炎の適切な治療を受けていれば、めったに無いことです。
  • 経過・予後
  • 自己免疫性肝炎では、基本的に投薬治療を長期にわたって継続することが、良好な経過を持続させます。医師の判断に寄らず、勝手に薬を止めたり、通院を中止することは、症状の悪化や時には肝不全となり生命にかかわる事もあります。
    日本での症例では、正確な診断を受け、適切な治療を行った場合の予後は良好で、1991年度の全国集計での10年生存率は約85%でした。死因は肝不全が8割以上を占めていて、肝硬変への進行を阻止する事が予後改善に非常に重要です。
  • ケア
  • 自己免疫性肝炎は慢性肝炎であり、その治療は長期にわたることが多いようです。原因がはっきりとわからない難病であり完治が難しい現状では、医師の指示による服薬、日常生活(特に食事など)を適切に管理していくことが、自己免疫性肝炎の最良のケアになると思われます。
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