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疾患

  • はじめに
  •  今、慢性膵炎診療が大きく変貌しています。2009年世界に先駆けた慢性膵炎診療ガイドラインが発刊され、その後患者さんと家族のための慢性膵炎ガイドブックも公開され、医療側と患者側が共有認識のもとに協働して、より良い治療法を選択できる医療環境が整ってきました。また、時を同じく2009年慢性膵炎臨床診断基準が新たに改訂され、従来と比べてより早期の段階の慢性膵炎の診断が可能となりました。多くのエビデンスから慢性膵炎が膵癌発症の危険因子の一つであることが明らかとなり、慢性膵炎の早期からの治療と経過観察のあり方が、患者さんの生命予後を含めたQOL改善につながる期待が大きくなってきています。
  • 定義・概念
  • 膵臓のしくみと働き

    膵臓は肝臓同様、内部に細胞が詰まった「実質臓器」で、十二指腸側のふくらんだ部分を「膵頭部」、脾臓側の細くなった部分を「膵尾部」、その中間の部分を「膵体部」と呼んでいます。尚、膵頭部の下の鉤状の突起部分を「膵鉤部(すいこうぶ)」といいます。
    膵臓の内部では、食物の消化に必要な酵素を含む「膵液」と、血糖値の調整を行うインスリンなどのホルモンが生産されており、前者の機能を「膵外分泌機能」、後者の機能を「膵内分泌機能」と呼んでいます。
    膵臓の外分泌細胞は膵消化酵素を生成・分泌する腺房細胞と水、重炭酸塩イオンを分泌する導管細胞に大別されますが、前者の腺房細胞は膵実質の90%以上の容量を占めます。この腺房細胞は主膵管が枝わかれした分枝膵管の先の小葉構造の中にあります。腺房細胞は、十数個でひとつの「腺房」と呼ばれる丸い塊を作り、その内側のせまい隙間の導管内に膵酵素を分泌します。腺房には極めて細い導管がつながっていて、これが次第に合流していって、膵液は主膵管へと導かれます。小葉内の腺房細胞では、トリプシンをはじめとするたんぱく質の分解に働くプロテアーゼ、デンプンの分解に働くアミラーゼ、脂肪の分解に働くリパーゼなどが分泌されます。また、腺房中心細胞からはじまる導管細胞では、分泌された膵消化酵素を洗い流すように水と重炭酸塩が分泌されます。これらが合わさった膵液は、弱アルカリ性で色は無色透明、1日に500~1,500ml分泌されます。 膵液は胃から送られてきた内容物(胃液で酸性になっている)を中和し(pH6~7)、膵液中の消化酵素の活性はこの状態ではじめて働きだします。
    膵臓の内分泌腺細胞はランゲルハンス島という島状の細胞集団で膵尾部に多く存在します。そのうちA細胞では血糖上昇ホルモンのグルカゴンが、B細胞では血糖値下降ホルモンのインスリンが分泌されます。
    膵液は「主膵管」と「副膵管」を通って十二指腸内へと運ばれ、ホルモンは血液の中に分泌されます。尚、主膵管には総胆管が合流していて、主膵管の出口(十二指腸ファーター乳頭)からは胆汁も排出されます。

    定義

    慢性膵炎は、急性の膵炎を繰り返すうちに膵消化酵素が自らの膵臓の実質細胞を消化してしまい、実質細胞の壊死・脱落とともに膵臓が線維化して硬くなってしまう病気です。進行すると、膵臓全体が萎縮して糖尿病になることもあります。
    慢性膵炎では、膵実質内に不規則な線維化、炎症細胞浸潤、実質細胞の脱落、減数、脂肪変性などの慢性変化が生じ、膵臓の外分泌と内分泌機能がともに低下します。膵臓の全領域に不均一に、実質が膵小葉単位で脱落したり、膵小葉間が線維化するなどの変化が起こります。基本的には膵腺房と膵管がともに障害される病気で、それがやがて膵臓全体にびまん性の変化をもたらします。これらの変化の多くは非可逆性です。
    慢性膵炎では腹痛や腹部圧痛などの臨床症状、膵内・外分泌機能不全による臨床症候を伴うものが典型的ですが、臨床観察期間内では無痛性あるいは無症候性の症例も存在することから、このような例では臨床診断基準がより厳密に適用されます。慢性膵炎は成因によってアルコール性と非アルコール性に分類され、自己免疫性膵炎と閉塞性膵炎については治療により病態や病理所見が改善する事があり,可逆性であることから2009年より別個の膵の慢性炎症として扱われるようになりました。
    (参照:慢性膵炎臨床診断基準2009. 膵臓 24:645-646,2009)
  • 疫学
  • <疫学>
    厚生労働省の「難治性膵疾患に関する調査研究班」が実施した全国調査によると、2007年に慢性膵炎で医療機関を受診した患者さんの数は47,100人で、人口10万人当たり36.9人(男性は10万人当たり53.2人、女性は10万人当たり21.2人)でした。
    調査方法や診断基準が異なっているため単純比較はできませんが、人口10万人当たりの年間推計受療患者数は、1992年18.5人、1994年28.5人、1999年33.2人、2002年35.1人と年々増加しています。
    (参照:難病情報センター「慢性膵炎」のページ並びに厚生労働省特定疾患対策研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班主任研究者大槻眞『難治性膵疾患に関する調査研究 平成15年度総括・分担報告書』P.109-112)
    <自立率>
    厚生省難治性膵疾患調査研究班の1994年の調査によると、日常生活への影響は、支障なし86%、自宅療養中10%、入院中4%であり、仕事への復帰は、前と同じ仕事73%、楽な仕事への配置転換や転職11%、仕事を辞めた16%でした。日常生活では14%に、仕事面では27%に影響が認められました。
    (参照:『厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班研究報告書 平成7年度』P.10-13)
  • 成因
  • 慢性膵炎の原因は、アルコールの飲み過ぎ(アルコール性)、胆石などが主な原因で、他に稀な成因(膵損傷、傍乳頭憩室(ぼうにゅうとうけいしつ)、高脂血症、副甲状腺機能亢進症等)によるものや、原因不明の特発性慢性膵炎が存在します。2009年の新たな慢性膵炎臨床診断基準では、アルコール性と非アルコール性に大別されました。その理由は両者の臨床像と進展過程に大きな差があり、アルコール性は進行が早く一般的に予後が悪いからです。
    2007年に厚生労働省研究班が実施した調査によると、我が国の医療機関を受診した慢性膵炎患者のうち、アルコール性が64.8%、特発性が18.2%、胆石性が2.8%でした。男女別に見ると、男性に最も多かったのはアルコール性で73.0%、女性に最も多かったのは特発性で40.5%でした。
    また、膵の慢性炎症の特殊例として分類されている「膵管狭細型慢性膵炎」には自己免疫異常の関与が疑われています。
    膵損傷、十二指腸憩室、高脂血症、副甲状腺機能亢進症なども原因となり、クローン病、潰瘍性大腸炎、Sjogren症候群、橋本病に合併することもあります。
    厚生労働省特定疾患消化器系疾患調査研究班難治性膵疾患分科会が1998年に行った症例対照研究では、喫煙、飲酒がそれぞれ独立した強い危険因子であること、また、一般栄養素、特にカリウム、ビタミンA、ビタミンE、一価不飽和脂肪酸の摂取量が少ないほど慢性膵炎のリスクが増加することが明らかになっています。
    (参照:難病情報センター「慢性膵炎」のページ、『難病の診断と治療方針2改定版』疾病対策研究会 2001、P.501-502、慢性膵炎臨床診断基準2009. 膵臓 24:645-646,2009)
  • 臨床症状
  • 慢性膵炎の症状は、病期の進み具合(病期)で変化します。
    潜在期(症状が出る前の時期)・・・自覚症状はなし
    代償期(慢性膵炎の早期を含む。膵臓の組織変化が軽度で膵内外分泌機能が比較的保たれている時期)
    ・・・腹痛、背部痛、悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満感、下痢、体重減少、圧痛、叩打痛
    移行期(代償期から非代償期へ移行していく時期)
    非代償期(進行した慢性膵炎の後期で、膵臓の組織が高度に破壊されて膵機能が著しく低下した時期)
    ・・・脂肪便、筋線維便、腹部膨満感、高度な体重減少(るいそう)などに見られる消化吸収障害、膵性糖尿病に見られる糖代謝障害
    ※圧痛…手や指で身体の表面を押したときの痛み
    ※叩打痛…こうだつう。こぶしで、軽くたたくと痛むこと
    ※脂肪便…常食摂取で1日糞便中の脂肪が 6g 以上
    ※膵性糖尿病…膵臓の内分泌腺細胞の破壊・減数によって起こる二次的糖尿病です
    (参照:『膵臓の病気がわかる本』法研 2007、P.89)
  • 診断
  • ここでは2009年に日本消化器病学会、日本膵臓学会、厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班が合同でまとめた「慢性膵炎臨床診断基準2009」を示します。(慢性膵炎臨床診断基準2009. 膵臓 24:645-646,2009)
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    慢性膵炎の診断項目
    (1)特徴的な画像所見
    (2)特徴的な組織所見
    (3)反復する上腹部痛発作
    (4)血中または尿中膵酵素値の異常
    (5)膵外分泌障害
    (6)1日80g 以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴

    慢性膵炎確診:a,b のいずれかが認められる。
    a.(1)または(2)の確診所見
    b.(1)または(2)の準確診所見と、(3)(4)(5)のうち2項目以上。
    慢性膵炎準確診:(1)または(2)の準確診所見が認められる。
    早期慢性膵炎:(3)~(6)のいずれか2項目以上と早期慢性膵炎の画像所見が認められる。

    注1.(1)、(2)のいずれも認めず、(3)~(6)のいずれかのみ2項目以上有する症例のうち、他の疾患が否定されるものを慢性膵炎疑診例とする。疑診例には3か月以内にEUS を含む画像診断を行うことが望ましい。
    注2.(3)または(4)の1項目のみ有し早期慢性膵炎の画像所見を示す症例のうち、他の疾患が否定されるものは早期慢性膵炎の疑いがあり、注意深い経過観察が必要である。
    付記.早期慢性膵炎の実態については、長期予後を追跡する必要がある。

    ※EUS…超音波内視鏡。内視鏡の先端に超音波検査のプローブ(探触子)がついており、胃内から胃壁を介して隣接する膵臓内部を直接的に詳細に観察できる。通常の体外式超音波USに比して微細な病変の検出に優れる。膵臓内で粗大な高エコーが検出される時、慢性膵炎が疑われます。今後は早期慢性膵炎の診断に広く応用される可能性が高い。

    慢性膵炎の診断項目
    (1)特徴的な画像所見
    確診所見:以下のいずれかが認められる。
    a.膵管内の結石
    b.膵全体に分布する複数ないしび漫性の石灰化
    c.ERCP 像で、膵全体に見られる主膵管の不整な拡張と不均等に分布する不均一(*1) かつ不規則(*2)な分枝膵管の拡張
    d.ERCP 像で、主膵管が膵石、蛋白栓などで閉塞または狭窄している時は、乳頭側の主膵管と分枝膵管の不規則な拡張

    準確診所見:以下のいずれかが認められる
    a.MRCP において、主膵管の不整な拡張と共に膵全体に不均一に分布する分枝膵管の不規則な拡張
    b.ERCP 像において、膵全体に分布するび漫性の分枝膵管の不規則な拡張、主膵管のみの不整な拡張、蛋白栓のいずれか
    c.CT において、主膵管の不規則なび漫性の拡張と共に膵辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変形
    d.US(EUS)において、膵内の結石または蛋白栓と思われる高エコーまたは膵管の不整な拡張を伴う辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変形

    (2)特徴的な組織所見
    確診所見:膵実質の脱落と線維化が観察される。膵線維化は主に小葉間に観察され、小葉が結節状、いわゆる硬変様をなす

    準確診所見:膵実質が脱落し、線維化が小葉間または小葉間・小葉内に観察される

    (4)血中または尿中膵酵素値の異常
    以下のいずれかが認められる
    a.血中膵酵素(*3 )が連続して複数回にわたり正常範囲を超えて上昇あるいは正常下限未満に低下
    b.尿中膵酵素が連続して複数回にわたり正常範囲を超えて上昇

    (5)膵外分泌障害
    BT―PABA 試験で明らかな低下(*4 )を複数回認める

    早期慢性膵炎の画像所見
    a.b のいずれかが認められる
    a.以下に示すEUS 所見7項目のうち、(1)~(4)のいずれかを含む2項目以上が認められる
    (1)蜂巣状分葉エコー(Lobularity,honeycombing type)
    (2)不連続な分葉エコー(Nonhoneycombing lobularity)
    (3)点状高エコー(Hyperechoic foci;non―shadowing)
    (4)索状高エコー(Stranding)
    (5)嚢胞(Cysts)
    (6)分枝膵管拡張(Dilated side branches)
    (7)膵管辺縁高エコー(Hyperechoic MPD margin)
    b.ERCP 像で、3本以上の分枝膵管に不規則な拡張が認められる

    解説1.US またはCT によって描出される(1)膵嚢胞、(2)膵腫瘤ないし腫大、および、(3)膵管拡張(内腔が2mm を超え、不整拡張以外)は膵病変の検出指標として重要である。しかし、慢性膵炎の診断指標としては特異性が劣る。従って、(1)(2)(3)の所見を認めた場合には画像検査を中心とした各種検査により確定診断に努める。

    解説2.(*1)“不均一”とは、部位により所見の程度に差があることをいう
    (*2)“不規則”とは、膵管径や膵管壁の平滑な連続性が失われていることをいう
    (*3)“血中膵酵素”の測定には、膵アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1 など膵特異性の高いものを用いる
    (*4)“BT―PABA 試験(PFD 試験)における尿中PABA 排泄率の低下”とは、6時間排泄率70% 以下をいう

    解説3.MRCP については、
    1)磁場強度1.0 テスラ(T)以上、傾斜磁場強度15mT m 以上、シングルショット高速SE 法で撮像する
    2)上記条件を満足できないときは、背景信号を経口陰性造影剤の服用で抑制し、膵管の描出のため呼吸同期撮像を行う

    ※膵内の石灰化…膵臓の中に、石灰(主に炭酸カルシウム)が沈着すること
    ※ERCP…内視鏡的逆行性胆道膵管造影。膵臓や胆嚢、胆管の病気を診断するため、内視鏡下に造影用チューブを胆汁と膵液の出口である十二指腸乳頭に挿入し、造影剤を注入し、レントゲン撮影を行う検査
    ※分枝膵管…主膵管より枝状に分岐している膵管
    ※蛋白栓…膵液中の蛋白質が析出(結晶として出てくる)すること
    ※MRCP…MR胆管膵管撮影。胆管膵管の映像に目的を絞ったMRI検査をいいます
    ※US…腹部超音波検査
    ※膵実質の脱落…膵液の消化酵素で膵臓の中の実質細胞が消化されることのくり返しにより起こります
    ※線維化…炎症によって正常な組織が破壊され、線維状のタンパク質に置き換わること
    ※小葉間…膵臓の各小葉は膠原線維を含む結合組織によって区切られており、この小葉間結合組織には小葉間導管や血管が見られます
    ※BT-PABA試験…膵臓の消化酵素のひとつであるキモトリプシンで分解される試薬を飲んで、尿を貯め、分解され尿中に出てきたのが何パーセントかを調べます。6時間の蓄尿が必要です
  • 治療
  • 慢性膵炎の治療は、病期や病態によって異なります。
    (参照:フローチャート2,3,4、『 慢性膵炎診療ガイドライン』日本消化器病学会編、p1-189、膵機能障害を考慮した慢性膵炎治療の手順.CLINICIAN ’11 NO. 601:pp40-49
    1.代償期の治療

    代償期は膵臓の組織障害が軽度で膵機能が比較的保たれているため、腹痛に対する対症療法と急性再燃を予防するための日常生活の管理、薬物療法が中心となります。

    (1) 発作の原因、誘因の除去

    禁酒と脂肪食制限(脂肪30~40g/日以下)が原則です。さらに飽食の制限、コーヒー、香辛料、炭酸飲料などの制限、ストレス、不安の解消などの原因、発作の誘因となる因子を避けます。胆石症などの胆道系疾患を持つ患者様では、その治療が優先されます。
    腹痛が強いときは上記に加えて、たんぱく質も0.5~0.8g/kg体重に制限し、疼痛を避けるために一回の食事量を少量にして1日4~5回食べるようにします。調理法の工夫も必要です。

    (2)疼痛に対する薬物治療

    慢性膵炎にみられる疼痛(腹痛、背部痛)は頑固で持続性のことが多く、疼痛の軽減のため、鎮痙薬、経口蛋白分解酵素阻害薬、非ステロイド系抗炎症性鎮痛薬のほか、高度の疼痛に対してはオピオイド系鎮痛薬が必要な場合もあります。
    また食後の膵外分泌が過度に刺激されないようにするため、膵消化酵素薬を通常量の3倍以上投与することもあります。これは膵外分泌に対してネガティブフィードバックをかけることから膵の安静・庇護、さらには膵酵素分泌抑制による膵管内圧低下をはかる効果も期待されます。心因的に疼痛が誘発されることがあるので、マイナートランキライザーや抗うつ薬の投与が有効な場合もあります。

    ※ネガティブフィードバック…腸管内に存在する膵酵素のプロテアーゼ活性が、膵液分泌を抑制する調節機構です。

    1-1.急性再燃時の治療

    急性再燃時には、急性膵炎に準じた治療が必要になります。原則として入院の上、絶食・点滴輸液による膵の安静、プロテアーゼインヒビターや制酸薬の投与、疼痛管理等の治療が行われます。
    ※プロテアーゼインヒビター…プロテアーゼ(蛋白分解酵素)の 働きを阻害する物質
    2.非代償期の治療

    移行期を経て、膵の線維化が著しくなる非代償期では腹痛はむしろ軽減し、膵内外分泌機能障害が主体となりますから、消化吸収障害や膵性糖尿病に対する補充療法が必要になります。

    (1)膵石に対する非手術的治療

    慢性膵炎に伴う膵石の比較的新しい治療法として、体外衝撃波による膵石破砕法(ESWL)が知られています。ただ、ESWLによる結石破砕効果は十分にあるものの、膵管の狭窄を認めるものでは結石の排出が困難なため、乳頭切開術、経鼻的膵管ドレナージ、ステント留置など、内視鏡を使ったドレナージを併用する必要が出てきます。完全排石は約50%であり、長期的には症状、及び膵石の再発が約4分の1の症例にみられるものの、約90%で膵石症の病態改善に有効だったという報告もあります。手技、器具の改善により今後の発展が期待される治療法です。
    ※経鼻的膵管ドレナージ…内視鏡的経鼻膵管ドレナージ術(Endoscopic nasopancreatic drainage:ENPD)は内視鏡を挿入して細いチューブを主膵管に挿管して留置し、チューブの対側を鼻から外へ出し、膵液を一時的に体外に流し出す治療です。適応は,短期間のドレナージで病態が改善する症例です。
    ※ステント留置…内視鏡的膵管ステント留置術(Endoscopic pancreatic stenting:EPS)は内視鏡を挿入して透視下にガイドワイヤーを留置し、膵管ステントを留置します。主膵管狭窄を有する慢性膵炎例で膵液のうっ滞により腹痛や背部痛などの症状を有する症例に有効です。

    (2)膵内・外分泌機能低下に対する治療

    膵外分泌低下に伴う消化吸収不全に対しては低下した膵酵素を補う意味で消化酵素剤の大量投与(通常の3~10倍量の内服)を行います。PPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカーによる胃酸分泌抑制薬を膵消化酵素薬に併用するとより効率的に消化吸収不全に対する治療効果を上げることができます。また、膵内分泌低下による糖尿病を合併すれば、食事指導やインスリン投与をします。この膵性糖尿病の状態では、過度な食事制限は必須脂肪酸や脂溶性ビタミンなどの不足を助長することから、十分な膵消化酵素薬投与の上で、血糖コントロールを図ることが大切です。

    (3)外科的治療

    内科的治療によりコントロールできない頑固な疼痛のあるものや膵嚢胞や胆管の通過障害など合併症のある場合は外科的治療も考慮されます。外科的治療は、主膵管ドレナージによる膵管減圧術、膵切除術、神経切除、及び合併症に対する治療に大別することができます。
    具体的には、びまん性に主膵管が拡張した症例には膵管空腸側々吻合術が、病変の主座が膵頭部にほぼ限局した症例には幽門輪温存膵頭十二指腸切除術、十二指腸温存膵頭切除術が、主膵管の拡張を認めない症例に対して膵神経叢切除術、大内臓神経切離術が、膵嚢胞、膿瘍に対しては超音波(US)下穿刺ドレナージ術、嚢胞消化管吻合術が、胆道結石に対しては胆嚢摘出術や内視鏡的胆管結石採取術等が行われています。
    ※膵管減圧術…膵液流出障害を改善し、膵管内圧を低下させる目的で行います。
    ※膵管空腸側々吻合術…膵管のほぼ全長にわたり膵管を縦に切開し、膵石を可及的に摘出した後に空腸と膵管の側々吻合を行います。
    ※幽門輪温存膵頭十二指腸切除術…幽門部のリンパ節郭清の際に血流および神経を温存し、幽門輪を含む胃全体を残します。術後のQOLや栄養状態が改善し、膵機能も温存されます。
    ※大内臓神経切離術…疼痛対策のため、膵臓の痛覚神経と脊髄後根の中間にある大内臓神経を切断して、頑固な疼痛除去に努めます。
    ※超音波(US)下穿刺ドレナージ術…超音波(US)画像の誘導の下、チューブを挿入して嚢胞液や膿汁を吸引・ドレナージします。
    ※嚢胞消化管吻合術…炎症性の仮性嚢胞の発生部位により嚢胞胃吻合術、嚢胞空腸吻合術、嚢胞十二指腸吻合術が選択されます。
    (参照:『難病の診断と治療方針1改定版』疾病対策研究会 2001、P.502-505)
  • 経過・予後
  • 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班が1994年、膵炎の経過、社会復帰度、死亡率に関する全国調査を行っていますが、これまでの膵炎の経過を軽快、不変(再燃反復を含む)、悪化に3大別して検討したところ、軽快57%、不変40%、悪化3%という結果になりました。
    また、94年に登録された患者(1,373人)を対象に、2006年に追跡調査したところ、生存438人、死亡99人、転医・不明583人、回答無し及び対象から削除した者271人という結果になりました。生存した人について糖尿病の合併率を調べると、94年に38.2%だったのが、06年には54.3%に達しています。
    1994年から2006年の間に死亡が確認された患者364人についてみると、死亡時年齢は67.3プラスマイナス11.6歳で、男性67.2プラスマイナス11.1歳、女性68.7プラスマイナス14.8歳と、男女差は認められませんでした。成因別に死亡時年齢を見ると、アルコール性は非アルコール性に比べて若く亡くなり、特に女性の場合(52.9プラスマイナス14.6歳)は男性のアルコール性に比べて13歳、女性の特発性に比べると20歳若く亡くなっています。
    慢性膵炎の主な死因は悪性腫瘍が43.1%、肺炎・感染症8.2%でした。悪性腫瘍の中では膵癌が22%と最も多くを占めましたが、肺癌など他の臓器の悪性腫瘍も多かったことから、膵臓だけではなく、全身臓器についても癌のスクリーニング検査を定期的に行う必要があります。最近では、慢性膵炎は膵癌の危険因子である認識が高まっています。
    (参照:『厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班研究報告書 平成7年度』P.10-13、厚生労働省特定疾患対策研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班主任研究者大槻眞『難治性膵疾患に関する調査研究 平成19年度総括・分担報告書』P.98-102)、『 慢性膵炎診療ガイドライン』CQ4-03、日本消化器病学会編、p180-182、科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2009年版、日本膵臓学会編集http://www.suizou.org/PCMG2009/index.html )
  • <ケア>
  • 慢性膵炎は進行性の病気なので完治することはありませんが、きちんと治療を続けていけば、直接死に至る病気ではありません。禁酒はもとより暴飲暴食、刺激の強い食べ物や飲み物、香辛料などは膵臓にとって負担が大きくなるので避け、腹8分目を心掛けて下さい。過労やストレスは臓器の働きを低下させるので避けた方がいいですが、気分転換や健康維持のために軽い運動をするようにしましょう。
    アルコール性では喫煙も増悪因子であり、禁酒とともに禁煙が望まれます。最近の知見では生命予後の観点から、禁酒よりも断酒の指導が強く望まれます。
    (参照:『膵臓の病気がわかる本』法研 2007、P114、P.154-163、『 慢性膵炎診療ガイドライン』CQ4-04およびCQ4-05、日本消化器病学会編、p183-189、膵機能障害を考慮した慢性膵炎治療の手順.CLINICIAN ’11 NO. 601:pp40-49
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