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2月24日(土)
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疾患

  • 定義・概念
  • 潰瘍性大腸炎は主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸、特に直腸のびまん性非特異性炎症です。その経過中に再燃と緩解を繰り返すことが多く、腸管外合併症を伴うことがあります。原因は不明で、免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられています。長期かつ広範囲に大腸を侵す場合には癌化の傾向があります。
    (参照:「エビデンスとコンセンサスを統合した潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン」
    難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班プロジェクト研究グループ(2006年1月)および「潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針」厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(渡辺班) 平成24年度分)
  • 疫学
  • 日本では1973年に厚生省・潰瘍性大腸炎調査研究班が発足し、その後現在の「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班」へと引き継がれました。患者数は、1970年代以降急速に増えつづけており、1980年に4406人だった特定疾患医療受給者証交付件数は1990年には23200人、2007年には10万人をこえ、2012年には143,733人と15万人近くになりました。

    世界的には欧米、特に西欧・北欧(スウェーデン、ノルウェー)に患者数が多く、白人・ユダヤ人が特に多く、アジア、南米、アフリカでは少ないとされています。

    男女比は1:1で性差は見られず、発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性で25~29歳とされていますが、子どもから高齢者まで幅広い年齢層で発症します。
  • 成因
  • 現在、潰瘍性大腸炎の原因はわかっていません。最近の研究では、特定の素因を持つ個体が抗原物質に刺激を受けそれに対して体の免疫が過剰反応し大腸にただれが起こる、あるいはその免疫の過剰反応を抑える免疫機構が弱くて炎症を起こす物質が多量に生産される、など、免疫の異常の結果起こると推定されています。
    他にも、食生活の変化や腸内細菌の関与が原因とする説もあります。
    大きくは、遺伝的な原因と環境的な原因が複雑に絡み合い、免疫の異常を引き起こした結果、起こる病気だと考えられています。
  • 喫煙との関係
  • 喫煙は潰瘍性大腸炎に関して抑制的に働くという説があります。
    文献的には、潰瘍性大腸炎に関して、喫煙は発症を予防し、病態を改善するという意見があります。Osborneら(J R Soc Med 1992)によると、喫煙者する潰瘍性大腸炎患者は、禁煙により病態が増悪するそうです。また、禁煙中だったとき、喫煙を再開すると病状が軽減するそうです。他にもニコチンを経皮投与した群のほうが、そうでない群より寛解率が高かったという研究もあります。
    しかし、喫煙による他の健康被害を考えると、潰瘍性大腸炎のために喫煙を行うことは勧められないのは明らかです。
  • 臨床症状
  • 潰瘍性大腸炎の病期には、血便を訴え、内視鏡的に血管透見像の消失、易出血性、びらんまたは潰瘍などを認める「活動期」があります。
    また、血便が消失し、内視鏡的には活動期の所見が消失し、血管透見像が出現する「緩解期」があります。
    病変範囲による分類
    直腸炎型病変が直腸に限局しているもの
    右側あるいは区域性大腸炎病変が右側大腸もしくは区域性に限局して認められるもの
    左側大腸炎型病変が脾彎曲部より肛門側に限局しているもの
    全大腸炎型病変が脾彎曲部を越えて口側に広がっているもの

    病気の分類
    活動期…血便を訴え、内視鏡的に血管透見像の消失、易出血性、びらん、または潰瘍などを認める状態。
    寛解期…血便が消失し、内視鏡的には活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状態。

    臨床的重症度による分類
    排便回数は1日4回以下で、血便はあってもわずかであり、全身症状を伴わない場合を「軽症」とします。
    排便回数1日6回以上で著明な血便や発熱、頻脈、貧血などの全身症状を伴う場合を「重症」とします。
    その中間が「中等症」です。

    潰瘍性大腸炎の重症度分類

    (厚生省下山班)
    重症中等症軽症
    (1)排便回数6回以上重症と軽症との中間 4回以下
    (2)顕血便(+++)(+)~(-)
    (3)発熱37.5℃以上なし
    (4)頻脈90/分以上なし
    (5)貧血Hb10g/dl以下なし
    (6)赤沈30mm/h以上正常
    注:重症とは(1)および(2)の他に全身症状である(3)または(4)のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目以上を満たすものとする。 軽症は6項目全てを満たすものとする。

    重症の中でも特に症状が激しく重篤なものを劇症とし、発症の経過により、急性劇症型と再燃劇症型に分ける。
    劇症の診断基準:以下の5項目を全て満たすもの
    (1)重症基準を満たしている。
    (2)15回/日以上の血性下痢が続いている。
    (3)38℃以上の持続する高熱がある。
    (4)10,000/mm3以上の白血球増多がある。
    (5)強い腹痛がある。

    活動期内視鏡的所見による分類
    炎症内視鏡所見
    軽度血管透見像消失/粘膜細顆粒状/発赤、アフタ、小黄色点
    中等度粘膜粗ぞう、びらん、小潰瘍/易出血性(接触出血)/粘血膿性分泌物付着/その他の活動性炎症所見
    強度広汎な潰瘍/著明な自然出血
    ※内視鏡的に観察した範囲で最も所見の強いところで診断します。内視鏡検査は前処置なしで短時間で施行し、必ずしも全大腸を観察する必要はありません。
    臨床経過による分類
    臨床経過と頻度
    再燃緩解型再燃、緩解を繰り返すもの。
    慢性持続型初回発作より6ヵ月以上、活動期にあるもの。
    急性劇症型
    (急性電撃型)
    急性劇症型(急性電撃型)はきわめて激烈な症状で発症し、中毒性巨大結腸症、穿孔、敗血症などの合併症を伴うことが多い。
    初回発作型発作が1回だけのもの。しかし将来再燃をきたし、再燃寛解型となる可能性が大きい。
  • 病変の肉眼所見による病型分類
  • 偽ポリポーシス型
    萎縮性大腸炎型

    (参照:「潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針」厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(渡辺班) 平成24年度分)
  • クローン病との違い
  • 潰瘍性大腸炎とクローン病は異なる病気ですが、一部は似ています。症状や組織学的所見でクローン病と潰瘍性大腸炎のどちらとも判定しにくい中間型大腸炎もあります。また、最初は潰瘍性大腸炎と診断されましたが、のちにクローン病に変わったケースもあります。

    診断の際に潰瘍性大腸炎と異なっているとされるのは、病変部位と炎症の深さがあげられます。
    潰瘍性大腸炎で侵されるのは直腸から大腸ですが、クローン病では消化管のすべてに病変が見られます。また、裂肛や肛門潰瘍、痔ろうなど肛門病変を合併することが多くなっています。クローン病の病変は非連続的な飛び飛びに現れる傾向がありますが(スキップ病変)、潰瘍性大腸炎では直腸から連続的に現れがちです。
    潰瘍性大腸炎では粘膜が侵されますが、クローン病では粘膜下や筋層はもとより、腸管の壁を通り越して周囲の臓器とくっついて膣瘻や膀胱瘻を形成してしまうことがあります(全層性病変)。
  • 診断
  • 1. 潰瘍性大腸炎の診断基準(厚生労働省渡辺班)
      次の(a)のほかに,(b)のうちの1項目、および(c)を満たし、下記の疾患が除外できれば、確診となる。
    (a) 臨床症状:持続性または反復性の粘血・血便、あるいはその既往がある。
    (b)-(1) 内視鏡検査:i)粘膜はびまん性におかされ、血管透見像は消失し、粗ぞうまたは細顆粒状を呈する。さらに、もろくて易出血性(接触出血)、粘血膿性の分泌物が付着しているか、ii)多発性のびらん、潰瘍、あるいは偽ポリポーシスを認める。その他、ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・短縮が認められる。
    (b)-(2) 注腸X線検査:i)粗ぞうまたは細顆粒状の粘膜表面のびまん性変化、ii)多発性のびらん、潰瘍、iii)偽ポリポーシスを認める。その他、ハウストラの消失(鉛管像)、腸管の狭小・/短縮が認められる。
    (c) 生検組織学的検査:活動期では粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤、陰窩膿瘍、高度な杯細胞減少が認められる。いずれも非特異的所見であるので、総合的に判断する。寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐)、萎縮が残存する。上記変化は通常直腸から連続性に口側にみられる。

    b) c)の検査が不十分、あるいは施行できなくとも、切除手術または剖検により、肉眼的および組織学的に本症に特徴的な所見を認める場合は、下記の疾患が除外できれば、確診とする。

    除外すべき疾患:は、感染性腸炎(細菌性赤痢、アメーバ赤痢性大腸炎、サルモネラ腸炎、キャンピロバクタ腸炎、大腸結核、など)、クラジミア腸炎などの感染性腸炎が主体で、その他にクローン病、放射線照射性大腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ瀘胞増殖症、虚血性大腸炎、腸型ベーチェット、などがある。
    (「潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針」より
    生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(渡辺班) 平成24年度分)
  • 治療
  • 治療原則としては、重症度や罹患範囲、QOL(生活の質)の状態などを考慮して治療を行います。活動期には寛解導入治療を行い、寛解導入後は寛解維持治療を長期にわたり継続します。
    重症例や全身障害を伴う中等症例に対しては、入院のうえ、脱水、電解質異常(特に低カリウム血症)、貧血、低蛋白血症、栄養障害などに対する対策が必要です。また、内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイミングなどを誤らないようにします。
    劇症型は急速に悪化し生命予後に影響する危険があるため、内科と外科の協力のもとに強力な治療を行い、短期間の間に手術の要、不要を決定します。
    小児例では、短期間に全大腸炎型に進展しやすい、重症化しやすいなどの特徴があり、成長障害にも配慮した治療が必要です。
    高齢者では、免疫抑制効果の強い治療薬剤による副作用(カリニ肺炎などの日和見感染など)により致死的となることがあるため、治療効果判定など早期に行い、必要に応じて他の治療法や外科治療を選択する必要があります。
    中等症以上の症例では、ステロイド治療が必要となることが多く、ステロイド剤は重症度や治療歴などをもとに適正な用量で治療を開始し、漫然とした長期投与や減量中止後短期間における繰り返し投与は副作用や合併症につながることがあるので注意が必要です。通常、ステロイド使用時の初期効果判定は1~2週間以内に行い、効果不十分な場合は他の治療法の追加や切り替えを検討します。
    腸管外合併症(壊疽性膿皮症など)の難治例も手術適応となることがあります。
    また、ステロイド抵抗例などの難治例や重症例では、血球成分除去療法やシクロスポリン点滴静注・タクロリムスの経口投与・インフリキシマブの点滴静注などの選択肢があります。特に強い免疫抑制を伴う治療の重複使用においては、感染症などのリスクを考慮し慎重に行います。
    B型肝炎ウイルス感染者(キャリアおよび既感染者)に対し各種の免疫を抑制する治療を行う場合、de novoのB型肝炎を発症する可能性が考慮されます。このため抗TNF-α抗体療法の導入に際しても、「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班」の示す“免疫抑剃・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン(改訂版)”に基づいた医療的対応が必要です

    ※免疫を抑制する治療としては、副腎皮質ステロイド(中等量以上)、アザチオプリン、6-MP、シクロスポリン、タクロリムス、抗TNF-α抗体製剤が該当します。
    薬物療法
    薬物療法は、主として重症度と罹患範囲に応じて薬剤を選択します。寛解導入後も、再燃を予防するため寛解維持療法を行います。
    治療継続中に急性増悪を起こした場合や寛解維持療法中に再燃を起こした場合には、前回の活動期と同一の治療法が効かなかったり、より重症化することが多いので、これらの点を参考にして治療法を選択します。
    寛解導入療法

    1. 直腸炎型
    5-ASA(5-アミノサルチル酸)製剤(ペンタサR・サラゾピリンR・アサコールR)による治療を行います。これで改善がなければ、製剤(経口剤、坐剤、注腸剤)の変更や追加、あるいは成分の異なる局所製剤への変更または追加を行います。

    局所製剤: 5-ASA製剤では、坐剤としてはサラゾピリンR坐剤1日1~2gあるいは注腸剤としてはペンタサR注腸1日1gを使用します。
    ステロイドを含む製剤ではリンデロンR坐剤1日1~2mgまたはステロイド注腸(プレドネマR注腸1日20~40mg、 ステロネマR注腸1日3~6mg)を使用します。
    経口剤: ペンタサR錠1日1.5~4.0g<注1>またはサラゾピリンR錠1日3~4g<注2>、あるいはアサコール錠R1日2.4~3.6gを使用します<注1>。
    上記の治療法が効果を示した場合にはリンデロンR坐剤、ステロイド注腸を減量した後にこれらを中止し、寛解維持療法に移行します。

    ※ ステロイドを含む製剤は、長期投与で副作用の可能性があるので、症状が改善すれば少しずつ減らすことが望ましいとされています。
    ※ 以上の治療を最大限行ったにもかかわらず、寛解導入に至らない場合には、左側大腸炎・全大腸炎の中等症に準じますが、副腎皮質ステロイド剤の全身投与(特に大量投与)は安易に行うべきではありません。また、軽度の症状が残る場合、追加治療のメリットとデメリットを考慮し、経過観察するという選択肢もあります。
    ※ 小児では短期間に全大腸炎型に進展しやすいとされています。


    2. 左側大腸炎型・全大腸炎型

    A.軽症
    ペンタサR錠1日1.5~4.0g<注1>またはサラゾピリンR錠1日3~4g<注2>、あるいはアサコール錠R1日2.4~3.6g<注1>を経口投与します。ペンタサR注腸を併用すると効果の増強が期待できます<注3>。左側大腸の炎症が強い場合はステロイド注腸の併用が有効な場合があります。
    2週間以内に明らかな改善があれば引き続きこの治療を続け、可能ならステロイド注腸は少しずつ減らしていって中止します。寛解導入後は後述の寛解維持療法を行います。
    改善がなければ以上に加えて中等症(1)【プレドニゾロン経口投与】の治療を行います。
    ※ 左側大腸炎型は罹患範囲が脾彎曲を超えないものと定義されています。
    注1 寛解導入療法としてペンタサR錠は国内外の報告より、高用量の効果が高いことから、1日4g投与が望ましいとされています。またアサコール錠Rでは1日3.6gが望ましいとされています。小児でも高用量の効果が高いことが知られています。
    注2 サラゾピリンR錠は発疹のほか溶血や無顆粒球症、肝機能障害なども起こり得るので、定期的に血液検査や肝機能検査を行います。また、男性の場合は精子の抑制作用も報告されています。
    注3 ペンタサR錠経口投与とペンタサR注腸を併用する場合には、経口4gと注腸1gの併用が望ましいとされています。

    B. 中等症
    基本的には軽症に準じてよいが、
    (1)  炎症反応や症状が強い場合は、軽症の治療に加えてプレドニゾロン1日30~40mgの経口投与を初期より行ってもよいとされています。
     また軽症に準じた治療で2週間以内に明らかな効果がない場合や途中で増悪する場合もプレドニゾロン1日30~40mgの経口投与を併用します。
     これで明らかな効果が得られたら、20mgまで漸次減量し、以後は2週間毎に5mg程度ずつ減量します。ステロイド注腸はプレドニゾロンの経口投与を中止するまで続けても良いとされています。その後は軽症に準じて治療継続を原則とします。
    (2) プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が起こり離脱も困難な場合(ステロイド依存例)は、難治例の(2)の【ステロイド依存例】の治療を行います。
    (3) プレドニゾロンの経口投与を行っても、1~2週間以内に明らかな効果が認められない時は、原則として入院させ重症の(1)、(2)または難治例の(1)の【ステロイド抵抗例】の治療を行います。

    C. 重症
    (1) 入院のうえ全身状態の改善に対する治療を行います。常に手術治療の適応に注意し、必要に応じて外科医等と連携して治療に当たります。
    (2)
    薬物療法としては、当初よりプレドニゾロン1日40~80mg(成人においては1~1.5mg/kgを目安とします)の経口投与あるいは点滴静注を追加します。さらに症状や状態に応じてペンタサR錠1日1.5~4gまたはサラゾピリンR錠1日3~4gの経口投与やアサコール錠R1日2.4~3.6g、及び注腸剤を併用してもよいとされています。
    これで明らかな効果が得られたら、プレドニゾロンを漸次減量し40mgで寛解導入を期し、その後は30mg、20mgと2週間以内を目安に病態に応じて減量し、以後は中等症の(1)【プレドニゾロン経口投与】、(2)【ステロイド依存例】に準じた治療を行います。必要と思われる症例には、当初より難治例の(1)の【ステロイド゙抵抗例】の治療を行ってもよいとされています。

    (3) 前項の治療を行っても1~2週間程度で明らかな改善が得られない場合(ステロイド抵抗例)は、劇症の(1)に従いステロイド゙大量静注療法、あるいは難治例の(1)に従い、血球成分除去療法・シクロスポリン(サンディミュンR)静注療法・タクロリムス(プログラフR)経口投与・インフリキシマブ(レミケードR)の点滴静注のいずれかの治療法を行います。
    なお、これらの選択肢のうち一つの治療法で効果が不十分な場合に安易に次々と別の治療法を試さず、慎重に検討し、外科治療も考慮します。
    (4) 以上の治療でも明らかな改善が得られない、または改善が期待できない時は、すみやかに手術を考慮します。

    D. 劇症型 (急性劇症型または再燃劇症型)
    劇症型は、急速に悪化し生命予後に影響する危険があるため、外科医との密接な協力のもと、緊急手術の適応を考慮しつつ、次のように取り扱います。
    (1) 大量静注療法を行います<注4>。この際、経口摂取を禁じ、経静脈的栄養補給を行います。大量静注療法の効果判定は、外科医等と連携の上、手術時機を失することの無いよう早期に行います。
    (2) 以上の治療で激烈な症状のほとんどが消失した場合は、この時点から重症の(1)、(2)に従いステロイド大量投与による治療に移行します。
    (3) (1)の治療を行っても症状が悪化する場合、あるいは早期に症状の明らかな改善が得られない場合は血球成分除去療法<注5>、シクロスポリン持続静注療法<注6>を試みてもよいのですが、改善の無い例または改善が期待できない例では時期を失することなく緊急手術を行います。
    ※重症例、特に劇症型では中毒性巨大結腸症や穿孔を起こしやすいので、腹部所見(膨隆、腸雑音など)に留意し、適宜腹部単純X線撮影などによる観察を行います。
    注4 ステロイド大量静注療法
    ①全身状態の管理。
    ②水溶性プレドニゾロン40~80mg(成人では1~1.5mg/kgを目安とします)。
    小児では水溶性プレドニゾロン1日1.0~2.0mg/kgを目安とし,最大で1日60~80mg程度とします。
    ③小児ではメチルプレドニゾロンのパルス療法が選択されることもあります。
    ④ステロイド大量静注療法の効果判定は、手術時機を失することのないように速やかに行います。

    注5 血球成分除去療法
    アダカラムRを用いて顆粒球・単球を吸着除去する顆粒球除去療法(GMA)とセルソーバRを用いて顆粒球、単球、リンパ球を除去する白血球除去療法(LCAP)があります。
    中等症では計10回、重症・劇症では計11回まで保険適応できます。通常週1回行いますが、症状の強い症例などでは週2回行ったほうが効果が高いです。治療中に増悪する症例や無効と判断した症例は、手術や他の治療法へ変更します。重症例に行う場合には、比較的早い時期から併用すべきであり、有効性の判定も早期(2週間程度)に行なうべきです。なお、本治療は専門施設で行うのが望ましいとされています。
    注6 シクロスポリン持続静注療法(保険適応外)
    シクロスポリン1日量2~4mg/kgを24時間持続静注投与で開始し、血中濃度を頻回に測定しながら、400ng/mL前後に維持するよう投与量を調節します。改善が見られないときや病状が増悪したり、重篤な副作用(感染症、腎不全)が出現したりする際は、手術や他の治療法へ変更します。
    投与後1週間以内に明らかな改善効果を認めた場合は、最大14日間まで静注を継続します。静注中止後は、原則としてアザチオプリンあるいは6-MP(保険適応外)の経口投与を直ちに開始し寛解維持療法に移行します。
    本治療は、血中濃度の厳密な管理が必要であること、重篤な感染症や腎不全の副作用がありうることから、専門施設で行うのが望ましいとされています。

    E. 難治例
    適正なステロイド使用にもかかわらず、効果が不十分な場合(ステロイド抵抗例)と、ステロイド投与中は安定しているものの、ステロイドの減量に伴い、再燃増悪するステロイド依存例等があります。難治例の治療に当たっては、これまで投与した薬物による副作用、病態や治療による患者QOLの状態などによる手術適応を考慮し、それぞれのメリット・デメリットなどを患者と相談の上で治療法を選択します。
    (1) ステロイド抵抗例
    ステロイドによる適正な治療にもかかわらず、1~2週間以内に明らかな改善が得られないケースです。
    重症度が中等症以上では血球成分除去療法やタクロリムスの経口投与<注7>・インフリキシマブの点滴静注<注8>・シクロスポリンの持続静注が選択可能です。
    中等症で重症度が高くない例では白血球除去療法が推奨されます。重症度が高く経口摂取が不可能な劇症に近い症例ではシクロスポリンの選択が推奨されます。これらで寛解導入された場合は寛解維持療法の項に示すようにアザチオプリンや6-MPによる寛解維持療法に移行します。なお、インフリキシマブの点滴静注で寛解に導入された場合は8週毎の投与による寛解維持療法が選択可能です。
    ステロイド抵抗例のなかに、クロストリジウム感染やサイトメガロウイルス感染の合併による増悪例が存在します。サイトメガロウイルス腸炎の合併症例に対しては抗ウイルス剤の併用が有効な場合があります。

    ※ サイトメガロウイルス感染合併例の典型的内視鏡所見として下掘れ状の円形潰瘍を形成します。診断には末梢血による診断(アンチゲネミア:C7-HRP等によるウイルス感染細胞数の測定)、生検病理所見による核内封入体の証明や免疫染色によるウイルス抗原の同定、あるいはPCRによるウイルスの検出が行われますが判断基準は議論があります。

    (2)
    ステロイド依存例
    プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が起こり離脱も困難なケースです。通常、免疫調節薬であるアザチオプリン(イムランRなど)50~100mg/日または6-MP(ロイケリンR)30~50mg/日を併用します<注9>。これらの効果発現は比較的緩徐で、1~3ケ月を要することがあります。
    これが有効で副作用がない時は、上記の免疫調節薬を開始して1~2ケ月後に経口プレドニゾロンを徐々に減量、中止します。寛解導入後は副作用に注意し適宜採血などを行いながら寛解維持療法としての投与を続けます。
    上記で効果不十分あるいは免疫調節薬不耐例で活動期には、血球成分除去療法<注5>やタクロリムス経口投与<注7>やインフリキシマブの点滴静注<注8>も考慮します。

    (3) これらの治療で効果が不十分、QOL(生活の質)の低下した例では手術を考慮します。

    (4) 小児では成長障害がみられる例においても手術を考慮します。

    注7 タクロリムス経口投与
    タクロリムスを用いる際は当初は高トラフを目指す(10~15ng/mL)がその後は低トラフ(5~10ng/mL)にします。寛解導入後は、アザチオプリンや6-MP(保険適応外)による寛解維持療法に移行します。腎障害・手指振戦などの副作用に注意します。なお、本治療は専門病院で行うのが望ましいとされています。

    注8 インフリキシマブ点滴静注
    インフリキシマブは初回投与後さらに第2週、第6週に投与し、有効な場合は維持療法として以後8間の間隔で投与が可能です。事前に感染症のチェック等を十分行い、投与時反応に対する処置が可能な状態で5mg/kgを3時間以上かけて点滴静注します。なお、投与時反応が無ければ3目以後は、点滴速度を最大で1時問あたり5mg/kgまで短縮することができますが、副作用の発現に注意します。投与時反応とは、投与中あるいは投与終了後2時間以内に出現する症状で、アナフィラキシー様の重篤な時は投与を中止し、全身管理を行います。インフリキシマブの副作用として、免疫抑制作用による結核菌感染の顕性化、敗血症や肺炎などの感染症、肝障害、発疹、白血球減少などが報告されています。
    なお、本治療は専門施設で行うのが望ましいとされています。

    注9 アザチオプリンや6-MP(保険適応外)の副作用として、白血球減少、胃腸症状、膵炎、肝機能障害、脱毛などが起こり得ます通常アザチオプリンでは50mg/日程度、6-MP(保険適応外)では30mg/日程度より開始し、副作用や効果をみながら適宜増減します。
    上記のような副作用は投与開始後早期に起こることがあるため、投与開始早期は頻回に血液検査を行い(投与開始後1~2週間を目安にし、その後は数週間おき)、白血球数減少やその他の異常が発現した場合程度に応じて減量、または一時中止します。

    F. 中毒性巨大結腸症
    重篤な症状を伴って、結腸、特に横行結腸の著明な拡張を起こした状態です。直ちに緊急手術を行うか、外科医の協力のもとに短期間劇症の強力な治療を行い、所見の著明な改善が得られない場合は緊急手術を行います(外科療法の項参照)。
    ※ 仰臥位腹部単純X線撮影で、横行結腸中央部の直径が6m以上の場合は本症が考えられます。
    寛解維持療法
    以下の5-ASA製剤の経口剤投与または局所治療の単独または併用を行います。直腸炎型の寛解維持では局所治療の単独あるいは併用も有用です。
    経口剤: ペンタサR錠1日1.5~2.25g<注10>またはサラゾピリンR錠1日2gあるいはアサコール錠R1日2.4gを投与します。
    局所治療: ペンタサR注腸1日1g<注10>またはサラゾピリンR坐剤1日0.5g~1gを使用します。
     なお、ステロイド抵抗例や依存例などでの難治例では原則として免疫調節薬による寛解維持治療を行います。また、インフリキシマブで寛解導入を行った例では8週ごとのインフリキシマブ投与による寛解維持療法を行っても良いとされています。
    ※ ステロイドには長期の寛解維持効果が乏しいことが知られています。

    <注10> ペンタサR錠1日1.5~2.25gによる寛解維持の場合、コンプライアンスを改善するために1日1回投与が望ましい。2g1日1回投与は1g1日2回投与よりも有用という海外のエビデンスがあります。また、ペンタサR錠とペンタサR注腸1日1.0gの2~3日に1回の間欠投与や週末2日間の併用投与も有用です。
    小児ではペンタサR錠30~60mg/kg/日を、ペンタサ注腸Rは1日1.0gを使用します。

    外科治療
    手術については特に基準や目安はなく、個々のケースと主治医の判断になります。しかし、近年、内科的治療法が非常に進歩して寛解導入や維持ができるようになりました。
    実際は病変が進行しているのに不適切な治療を長く続けていたために、発ガンしていたという可能性も考えられます。外科治療を決断する機会を失わないためにも、内科的治療から外科的治療への適切な見極めが必要です。寛解が持続していても、2、3年に1回は定期的な検査を受けるようにしましょう。

    また、中毒性巨大結腸症といって、腸管が筋層以上まで侵されて、腸が動かなくなり、結腸が大きくなることがあります。全身状態が悪化し腸から様々な細菌が入ってくる状態になり、穿孔や敗血症を起こす可能性があります。ステロイド動注療法を試みることもありますが手術をしなければなりません。
  • 手術の適応
  • 治療薬の進歩により、従来であれば外科治療が必要なケースでも手術が回避されることができるようになってきましたが、手術を考えなければいけないケースもあります。

    手術の適応には絶対的適応と相対的適応があります。
    絶対的適応には大量出血、腸の穿孔、重症発作、大腸がんの合併、中毒性巨大結腸症などの場合があります。
    相対的適応は、難治で内科的な治療に反応せずなかなか寛解導入へのコントロールが難しい例(入院と退院を繰り返してQOLが低下している)、腸管内(外)合併症があるとき、ステロイドなど薬の副作用(長期間服用していると、骨がもろくなったり、小児の患者さんには成長障害が起こることもあります)や合併症が発生したときなどです。
  • 潰瘍性大腸炎の術式
  • 主な術式は下記の5種類で、現在の標準術式は(1)、(2)です。術式は患者の全身状態、年齢、腸管合併症、治療薬剤の副作用などを考慮して選択します。

    (1) 大腸全摘、回腸嚢肛門吻合術 ( IAA : Ileoanal anastomosis )
    直腸粘膜抜去を行い病変をすべて切除し、回腸で貯留嚢を作成して肛門(歯状線)と吻合する術式で、根治性が高い。通常は一時的回腸人工肛門を造設します。
    (2) 大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術 ( IACA : Ileoanal canal anastomosis )
    回腸嚢を肛門管と吻合して肛門管粘膜を温存する術式です。回腸嚢肛門吻合術と比べて漏便が少ないが、肛門管粘膜の炎症再燃、 癌化の可能性については今後の研究課題です。
    (3) 結腸全摘、回腸直腸吻合術
    直腸の炎症が軽度の症例、高齢者に行うことがあります。排便機能が良好であるが、残存直腸の再燃、癌化の可能性があるので術後管理に留意します。
    (4) 大腸全摘、回腸人工肛門造設術
    肛門温存が不可能な進行下部直腸癌例だけでなく、肛門機能不良例、高齢者などに行うことがあります。
    (5) 結腸亜全摘、回腸人工肛門造設術、S状結腸粘液瘻、またはHartmann手術
    侵襲の少ないのが利点であり、全身状態不良例に対して肛門温存術を行う前の分割手術の一期目として行います。
    ※分割手術としてHartmann手術を選択する場合は直腸閉鎖部の縫合不全による骨盤腹膜炎併発の危険性や、次回直腸切除の際の炎症性癒着により剥離が困難とならないようにするため、原則として腹腔内で直腸を閉鎖するほうがよいとされています。
    ※小児成長障害に関しては思春期になる前の手術が推奨されます。成長障害の評価として成長曲線の作成や手根骨のX線撮影などによる骨年齢の評価が重要で、小児科医と協力し評価することが望ましいとされています。
    ※高齢者は予備力が低く、免疫抑制効果の強い治療(ステロイド、シクロスポリン、タクロリムス、インフリキシマブなどの継続投与)によって感染性合併症(日和見感染による肺炎など)を併発して重篤な状態になることが少なくありません。安全な手術、手術前後の合併症の予防のためには治療効果判定を早期に行い、効果が認められない症例には他の内科治療の選択は十分慎重に考慮して、時期を失することなく外科治療を選択することが重要です。
    ※本症に対する腹腔鏡補助下手術や小開腹による手術は通常の開腹術に比べて整容性の点で優れていますが、重症で腸管の脆弱な症例や全身状態が不良で短時間での手術が必要な症例などでは適応を慎重に考慮します。本治療は専門施設で行うのが望ましいとされています。

    回腸嚢肛門管吻合術(IACA) は、直腸の一番下1~2センチの粘膜部分を残し、小腸の回腸末端と肛門をつなぎます。大腸切除後は便を貯留する機能が無くなりますので、代わりに小腸を用いてパウチを作成します。直腸の一番下を残しておくのは肛門機能を温存しておくためですが、そのためにそこが再燃する可能性やガン化の可能性も残ります。
    直腸粘膜切除・回腸嚢肛門吻合術(IAA) は、直腸の一番下の部分も含めすべて大腸を全摘します。小腸の回腸末端を使ってJ型のポーチを作って直腸の変わりにするのはIACAと同じです。肛門をとってしまったので下痢が多くなったり漏便などが生じることがありますが、再発や大腸ガンの心配は取り除かれます。
    根治性と術後の排便機能を考えると、どの術式もそれぞれ一長一短があります。

    これらの手術は、1回で行うこともありますが、2~3回に分けて行うこともあります。
    内科的治療でステロイドが多量に投与されていると、小腸を肛門に1回で繋ごうとしても上手く繋がらず、縫合不全を起こすリスクが高くなるので、2回に分けて繋ぐ手術や、1回で繋いだのち、その繋いだ部分を保護するために一時的な人工肛門を造設する手術を行います。
  • 腹腔鏡下手術
  • 潰瘍性大腸炎は若年の患者さんが多いため、10~20代の女性の患者さんの多くは、美容上お腹の傷が目立たない手術のほうが適しているでしょう。
    腹腔鏡下手術は下腹部に4~5㎝の傷をつけるだけで、全大腸切除術が行え、手術時の傷跡を最小限に抑えることができます。
  • 手術後の合併症
  • 潰瘍性大腸炎の手術は、患者さんがステロイド剤を使用していたことで、感染の頻度が通常の手術よりも高くなるそうです。
    縫合部の感染は生命に危険が及ぶということはありませんが、入院期間が延びてしまいます。感染を防ぐために、手術開始前から抗生物質を投与する、手術中に汚染が起こらないよう、細心の注意を払うことなどが重要になります。

    腹腔内膿瘍……腸管の吻合部がうまくつながらず、腹腔内に便がもれたりして感染を起こしたり、手術時に便がお腹の中に漏れて細菌が残ってしまたりして膿がたまり、発熱や腹痛を起こします。39度台の高熱が続く時には検査をしたほうが良いでしょう。

    縫合不全……縫合した部分が破れて中身がもれてしまうことです。
    IAA(大腸を全摘し直腸粘膜も全て切除する)は外科医の手によって吻合しますが、IACA(大腸を全摘し肛門管の一部粘膜を残す)は器械で吻合します。IAAは、腸と腸を縫う場合と違い、腸と皮膚(肛門管)を縫い合わせることになるため、つながりにくいことがありますから、原則として一時的にストーマ(人工肛門)をつけます。
    縫合不全の原因は、栄養状態が良くない。腸の組織がもろい、ステロイドの影響(創傷治癒を妨げる)、腸をつないだところの血のめぐりが悪いなどがあります。

    癒着……本来は離れているはずの組織面が、炎症や外傷によってくっついてしまうことです。術後のベッドの上で体を動かしたり院内を散歩するなど、積極的に体を動かすことによって防止できます。施設によっては手術の際に癒着防止材のフィルムを使用することもあります。

    腸閉塞……癒着は機械的イレウスですが、機能的イレウスという腸閉塞もあります。これは麻酔や手術の影響などで腸の機能が低下してしまったためで、薬剤を使って腸の動きを促します。潰瘍性大腸炎の手術に限らず、手術を受けた患者さんには腸閉塞の合併症の可能性があります。

    ステロイド離脱症候群……手術前にステロイドを大量に服用している患者さんはなるべく減量したいのですが、無理に減らすこともできません。手術は体にとって大きなストレスなので体はステロイドを出して守ろうとします。そのとき、長期にステロイドを服用されていた患者さんは副腎機能不全を起すことがあります。軽症であれば関節の痛みや皮膚の乾燥、食欲不振などの症状でおさまります。重症になると高熱が出たり血圧が下がることもあります。全身倦怠、頻脈、血圧低下、頭痛、発熱、電解質異常なども出現します。

    尿管結石・胆石症
    誤嚥性肺炎……飲み込んだものが肺に侵入して起こる肺炎のことです。麻酔で正常な反射が鈍っていたりするような場合に起こりやすくなります。
    悪心(吐き気)、嘔吐
    感染症……ステロイドには免疫抑制作用があるため、細菌やウイルスなどに感染しやすくなります。
    脱水症状……頻回の下痢、大腸の切除、経口摂取の禁止、術前の飢餓状態、消化吸収障害、腸閉塞の場合に水分と電解質のバランスを崩しやすくなります。
    肺梗塞……下肢の静脈などにできた血栓が、肺の血管に詰まることを肺塞栓といいます。これは、高齢の方だけでなく、太り気味の方も注意が必要で、手術前に足がむくんでいる患者さんには検査が必要なことがあります。

    その他……人工呼吸用の管を抜き差しする際に舌、唇などが傷ついたり、歯が抜けたり欠けたりすることがあるので、自分の情報(義歯、ぐらつき、口が開きにくいなど)を事前に知らせておくことです。また、人工呼吸用の管を入れたことにより、数日間のどの痛み、声のかすれが起こり得ます。
    また、高齢者のかたですと、心筋梗塞などが起こったり、肺炎や尿路感染が起こったり、肝臓や腎臓の機能が悪化することがあります。
  • 市販薬との併用
  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬。一般的に解熱鎮痛薬として使用される)は再燃の増悪因子ではないというデータも出ていますので、風邪薬のように短期間服用する場合にはほとんど問題ないと思います。念のため、服用する前には一度医師に相談するようにしましょう。
    むしろ、病状が悪化する多くの原因は、患者さんが「服薬しなくなること」です。具合が良い人は、長い時間をかけて良くなっているのですから、医師の指示と了解のもと、しっかりと薬を飲み続けるようにしましょう。
    5─ASA製剤の内服遵守率と寛解維持効果は比例しています。5─ASA製剤をきちんと内服していない患者さんは再燃率がかなり高いことがはっきりしているのです。
  • 経過・予後
  • 10年以上経過しても、90%以上の人は正常な社会生活を送っていると報告されており、潰瘍性大腸炎の長期予後は一般のかたと差はありません。
    再燃と緩解をくりかえして行きますが、経過とともに病気の活動性や再燃率は次第に低下するともいわれています。長期的な予後は良好と考えてよいでしょう。

    全大腸炎型では発症して10年以上経過すると大腸ガンが発生する確率が高くなることが知られており、特に全大腸炎型で7年~8年以上経過している患者さんは定期的な大腸内視鏡検査(サーベイランス)が必要になります。
    激症例は予後不良ですから強力な治療を行ない、手術が必要かどうかを見極めなくてはいけません。

    大腸を摘出してしまう外科治療後の予後としては、
    大腸全摘+回腸嚢肛門吻合術または回腸嚢肛門管吻合術の経過は良好です。
    回腸嚢肛門(管)吻合術後の排便回数は1日5~6回であり、漏便を認める場合があります。
  • 顆粒粒吸着療法
  • 血液を一旦体外に連続的に取り出し、白血球の中の特に顆粒球を選択的に除去する医療用具(顆粒球の吸着器:アダカラム)に通し、その後血液を体内に戻すものです。
    この様に血液を体外に取り出す治療法は体外循環療法(血液浄化法)と言い、日本や欧米ではいろいろな疾患や難病で数多く行われています。
    なお、顆粒粒吸着療法に用いる顆粒球の吸着器「アダカラム」のメーカー「JIMRO」のサイトに、解説ページ「顆粒球吸着療法とは」と、PDFでダウンロードできる「顆粒球吸着療法ガイドブック」があります。

    本療法の保険適用の対象
    活動期の潰瘍性大腸炎の重症、劇症患者さんと難治性の患者さんです。
    重症・劇症・難治性には厚生労働省の基準があります。

    また、栄養療法及び既存の薬物治療が無効又は適用できない、大腸の病変に起因する明らかな臨床症状が残る中等症から重症の活動期クローン病患者の寛解促進に使用することも2009年からできるようになりました。主治医と良く相談してください。

    予期される効果と副作用
    顆粒球吸着療法を行うと、下痢や血便、発熱などの症状、また、内視鏡的にも改善される結果となっています。治験の結果では、症状が改善された方が約60%で、副作用は頭痛・嘔気・めまい等、体外循環特有の症状が約3%の患者さんに見られましたが、いずれも一過性で軽度であったと報告されています。ただし、充分な効果がない方や、効果の低い方も40%程度認められたとの結果になっています。【参考文献:下山 孝 他.日本アフェレシス学会雑誌 18:117-131,1999】

    顆粒球吸着療法を受けるには
    患者さんご自身の病状をよくご存知の、かかりつけの病院で受けるのが一番と思いますので、主治医に顆粒球吸着療法を受けてみたいという意思を伝えてみるのが良いと思います。なお、この治療は入院でも外来でも受けることができます。
    また、顆粒球吸着器アダカラムの製造販売元である株式会社JIMROのホームページにも本治療が受けられる病院の一覧が出ていますが、紹介状を用意して頂いてから病院にコンタクトを取ることをお勧めします。

    白血球除去療法
    白血球除去療法(LCAP療法)とは、血液を一旦体外に連続的に取り出し、白血球除去器に通し炎症に関わる白血球(顆粒球、単球、リンパ球)と血小板を除去した後、血液を体内に戻す、体外循環療法と言われる治療方法です。活動期の潰瘍性大腸炎の治療法として、従来の薬物療法や手術療法とも異なる新しい治療法として注目されています。

    白血球除去療法(LCAP療法)の保険適用の対象
    厚生労働省の基準で定められた活動期の潰瘍性大腸炎の重症、劇症および難治性の患者さんです。
    白血球除去療法ができる病院の検索サイトはこちらです。

    予想される治療効果と副作用
    臨床試験の結果では、潰瘍性大腸炎活動期の症状として、血便:約6割、腹痛:約7割、内視鏡所見:約5割の改善率が報告され、この結果、白血球除去療法(LCAP療法)の有効率は、約7割と報告されています。副作用は頭痛・吐気・めまい等、体外循環特有の一過性で軽度なものであったと報告されています。
    【参考文献:Current Pharmaceutical Design, 9 : 307-321, 2003】
  • 血液検査の値
  • 血液検査それぞれの項目について、意味をご存知でしょうか。白血球数、CRP、赤血球沈降速度、血小板では炎症の程度が評価できます。患者さんの症状がそれほどでもないのに、血液検査の数値が異常値の場合には膿瘍など感染症が考えられます。
    赤血球数、ヘモグロビン、アルブミン、コレステロール、鉄などでは貧血や栄養状態を評価できます。そして、GOT、GPT、ALP、GTP、アミラーゼでは合併症や薬剤の副作用をチェックすることができます。

    白血球
    基準値を上回っている場合は炎症反応が強い、あるいは何らかの感染症があることが考えられます。下回る場合は免疫調整剤の効果によるもの、あるいは他の薬剤の副作用を考えます。

    赤血球
    身体中に酸素を運び、不要となった二酸化炭素を心臓まで運びます。基準値を下回る場合は病変からの出血や、栄養障害による貧血の可能性を疑います。

    ヘモグロビン
    赤血球中のタンパク質です。下回る場合は貧血と思われます。鉄イオンのため赤色をしていて、鉄が不足しているとヘモグロビンが十分に作られなくなり、値も低下するので鉄欠乏性貧血と診断されます。

    ヘマトクリット
    血液全体に占める赤血球の容積の割合。貧血の指標です。

    MCV
    ヘマトクリットを赤血球数で割った値です。値が高ければ大球性、小さければ小球性とされます。鉄欠乏により低値を示すことが多いようです。

    MCH
    ヘモグロビンを赤血球数で割った値でMCVと同じように指標として使います。

    血小板
    血液細胞のひとつです。炎症性腸疾患では活動性が高くなると高値を示します。出血部位に集まり、止血栓を形成して、出血を止める働きがあります。

    赤血球沈降速度(血沈)
    赤血球の1時間の沈み具合を表したものです。炎症の程度を反映し、早く沈む(値が大きい)ほど炎症が強いことがわかります。しかし炎症以外の状態に左右されることがあるので、指標としての特異性には欠けるでしょう。

    CRP
    炎症により産生された物質の刺激で、肝臓で産生されるタンパク質です。炎症があると高値になりますが、CRPの上昇と患者さんの自覚症状が一致しないこともあります。

    総タンパク
    血中のタンパク質の総量です。値が低ければ栄養状態が悪いと判断されます。

    アルブミン
    血清中で栄養や薬剤の運搬などをするたんぱく質です。この値が低いと栄養状態が悪いか、肝臓障害を疑うことになります。

    総コレステロール
    コレステロールの総量です。栄養状態の良し悪しの評価に用いられます。

    GOT・GPT
    アミノ酸を代謝する酵素です。肝臓が何らかの原因で壊れると肝臓内から流出し、血液中で値が上昇します。薬剤の副作用で上昇することがあるので肝機能の状態を評価できます。

    ALP・γ-GTP
    胆道系酵素で、胆道に障害を生ずると上昇します。薬剤性肝障害や胆石症で異常値を示すことがあります。

    血清鉄
    血液中の鉄分の量なので、低値だと鉄分が不足していることになります。慢性的な出血や炎症があると鉄分が足りなくなるのです。

    フェリチン
    体の鉄分の貯蔵量を示します。鉄分が不足すると低値になります。炎症や腫瘍がある場合は、鉄の貯蔵量があっても十分に利用できないため逆に上昇することがあります。

    アミラーゼ
    膵臓で合成される消化酵素です。膵炎の合併症や薬剤による膵炎の発生を評価するために重要な項目です。

    尿素窒素
    尿素に含まれる窒素量です。下痢による脱水や消化管出血で値が上昇します。クレアチニンと同様に、腎臓から尿中に排泄されるため、腎臓機能の評価に用い、腎機能障害があると高値を示します。

    クレアチニン
    クレアチンリン酸というたんぱく質が脱リン酸化したものです。腎臓より排泄されるので、腎機能の評価に用いられます。脱水の影響は受けません。栄養障害で筋肉量が落ちると低値を示します。

    ナトリウム・カリウム・クロール
    血液中の主な電解質の濃度です。下痢や極端な食欲不振などで異常値を示しますので、そのときは点滴が必要です。

    カルシウム
    血液中のカルシウムの量です。血中でアルブミンと結合するため、低栄養でアルブミンが低値の際には血液中のカルシウム量も低値を示します。
  • 検査
  • 腹部単純X線撮影
    初診、再燃を問わず、治療を開始するときにまず第一番に行われることが多い検査です。
    X線には物質を透過する性質があり、透過性の違いで小腸、大腸にガスが溜まっているかどうかを写すことができます。一般的には息を吐いた状態で撮影すると消化管内のガスは黒くみえ、骨は白く写ります。撮影体位は仰向けと、立った状態での撮影になります。造影剤を使わないX線撮影を、造影剤を使う造影X線写真に対比して単純X線写真と呼びます。
    潰瘍性大腸炎では、お腹のガスがどうなっているのか、また、増悪時にみられる中毒性巨大結腸症の診断に有効です。
    物質を透過するからX線撮影時に衣服を着ていても良いと思い勝ちですが、繊維のシワが重なったりするとその影が写ってしまうこともあり、誤って病変部と思われるかもしれません。原則として脱衣や病院指定の検査衣を着て、検査を受けるようにしましょう。

    超音波エコー
    人間の耳には聞こえない高周波の超音波を体内に発射して身体の中を診る検査です。
    超音波は臓器や組織の境目で反射します。反射してきた超音波を画像として再構成して断面図を作成、その像を見て診断を行います。空気は超音波を通しにくいので、内側が空洞の胃腸などの臓器の観察には適しませんが、炎症性腸疾患では炎症により厚くなった腸管壁を計測することで炎症の評価を行うことができます。X線より安全な検査で、苦痛もなく、CTやMRIより費用が安いというメリットがあります。

    CT検査
    人体を透過したX線をコンピュータで計算処理し輪切りにした断層写真を撮影する検査です。
    X線の吸収が多い、骨の部分は白く写り、吸収が少ない空気などの部分は黒く写ります。目的によっては、ヨード造影剤を使用してよりわかりやすく病変部を撮影します。

    大腸造影検査
    大腸にバリウムと空気を注入して大腸を造影する検査です(最近は診断のためにはやらない傾向になりました)。腸全体の形や粘膜の状態がX線フィルムに撮影できます。肛門から大腸に造影剤を注入するため「注腸」ともいいます。肛門からチューブを挿入し、造影剤を腸内に入れ、空気を入れます。大腸の粘膜すみずみまでバリウムが塗られるように、検査中、患者は撮影台の上で左右に体を回転し体位変換する必要があります。空気が入るため、腹部が張った感じがします。
    腸管の動きを抑制するため、副交感神経遮断剤を使用するときは、虚血性心疾患や緑内障、前立腺肥大症がある患者さんへの注意が必要です。
    前処置として腸内を洗浄するため前日は低残渣食(検査食)を摂るとともに下剤を使用します。

    大腸内視鏡検査
    肛門から、自由に曲がる細長い内視鏡をいれ、直腸から盲腸まで大腸全体を肉眼的に観察する検査です。
    よりよい画像を得るため前処置として腸洗浄液や下剤を服用し、腸管内を空虚にする必要があります。挿入時に患者はけいれん様の不快感や痛みを感じることがありますから施設や医師によっては、検査前に鎮静剤などを投与します(セデーションといいます)。
    内視鏡には器具を通す孔が空いており、診断のために組織をつまんで生検したり、ポリープの切除など簡単な処置をその場で行うことができます。

    大腸内視鏡検査の前処置
    大腸内視鏡検査などの前には、医師が観察しやすくできるよう、絶食したり、大腸のなかを洗浄しなければなりません。現在一般的に用いられている前処置法の経口腸管洗浄剤は塩化ナトリウム・塩化カリウム・炭酸水素ナトリウム・無水硫酸ナトリウムの顆粒を水で溶解して飲用するものです。これは、人間の体液と等張(浸透圧が同じ)に作られている薬ですから、消化管から吸収されず、水分を奪い取ることもありません。胃、小腸、大腸を通過する間に電解質のバランスを乱すことなく、そのままの状態で排出されます。飲用した量が、そのまま腸の中を洗浄するという仕組みの薬です。
    また、クエン酸マグネシウムという薬も飲むことがあります。これは人の体液よりも浸透圧が高い液体で腸の中をクエン酸マグネシウムが通過するとき、腸壁から水分が出てきます。
    前者は独特の味やにおい、そして大量に飲まなくてはいけないので、患者さんにとって受容性が低いものでした。
    しかし、現在ではリン酸二水素ナトリウム一水和物・無水リン酸水素二ナトリウムを錠剤で50錠服用する方法も開発されています。水だけではなくお茶など透明性のある水分であれば構わず、前日の食事制限もいらないそうです。
    どうしても液体の腸管洗浄剤が飲めないという患者さんには選択肢が増えたことになります。
  • 大学の医学部などが開設した、潰瘍性大腸炎の基本的な解説サイト
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