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4月26日(木)
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疾患

  • 定義・概念
  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血小板に対する自己抗体(自分の体を攻撃する免疫物質)の出現により(その発現機序は不明)、主に脾臓において血小板の破壊が進んで、血小板が減少する自己免疫性疾患です。
    血小板が減少することで、さまざまな出血症状(点状出血、皮下出血、鼻血など)が現れます。通常は、赤血球や白血球系の異常や、血小板の親となる細胞である骨髄巨核球の数の低下はみられません。血小板減少をもたらす明らかな基礎疾患や原因薬剤の関与も認められないため、「特発性」と呼ばれてきました。しかし成因に免疫異常が関与することから、最近では「免疫性血小板減少性紫斑病」とも呼ばれています。

    ※血小板…人間の血液は、「血球」と「血漿」から成り立っています。
    「血球」は赤血球、白血球、血小板で構成されています。血小板は、骨髄中にある骨髄巨核球から生まれた細胞で、血管が損傷した際、傷口をふさいで出血を止める作用を持ちます。通常は血液1μlあたり13万~40万あります。血液1μlあたり10万以下になった時、血小板減少と呼びます。
  • 疫学
  • 平成24年度末では推計24,100件の患者さんが特定疾患医療受給者証の交付を受けているそうです。
    有病者数は約2万人で、年間発症率は人口10万人あたり約2.16人と推計されています。

    病型は、急性型と慢性型にわけられますが、発症時に区別することが困難なこともあり、発症後6ヵ月を経過した時点で、6ヵ月以内に寛解したものを急性型、そうでないものを慢性型として分類しています。ただし6ヵ月以上かけて自然軽快する症例もあります。
    。急性型は小児に多く、上気道からのウイルス感染などの2~3週間後に血小板が減少します。急激に発症して、多くの場合3~6ヵ月以内に血小板数は正常に回復しますが、慢性型に移行するときもあります。男女差は見られません。

    慢性型は従来20~40歳台の若い女性に発症することが多いとされていましたが、最近の調査では20~40歳台の若い女性に加え、60~80歳で発症のピークが見られます。高齢者の発症には男女比に差はありません。
    (参照:厚生労働省、難病情報センター、「成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2012年版」)
  • 成因
  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の詳細な発症機序は不明です。「難病情報センター」のサイト(http://www.nanbyou.or.jp/entry/157)などによって説明します。
    自己血小板に対する抗体ができ(抗血小板抗体)、この抗血小板抗体と結合した血小板が網内系(特に脾臓)の食細胞であるマクロファージに捕捉・貪食されるため、脾臓で血小板が破壊され、数が減ってしまうと考えられているそうです。なぜ「自己抗体」が発現するかについては、まだはっきりとしたことはわかっていないのが現状です。

    ※脾臓について
    ・血液やリンパ液が多い臓器で、長さ10センチ、幅6.5センチ、厚さ3センチくらいのソラマメのような形をしています。
    働き:大食細胞が古くなった赤血球(ヘモグロビン)を破壊してビリルビンに形を変えて肝臓へ送ります。
    ヘモグロビンを壊したときにできた鉄分は骨髄へ送られ、赤血球を新たに作る材料になります。
    血を止める働きをする、血小板を貯めておく臓器です。血小板全量の3分の1が貯蔵され必要がある際に血液中に放出されます。
    脾臓が大きくなりますと血小板の貯蔵量が増しますので血液中の血小板数は減ります。
    その他、脾臓の中にあるリンパ球と形質細胞が抗体を作り、体内に侵入した異物を排除する免疫機能や、骨髄の病気で、骨髄で造血が出来なくなった際に、脾臓が造血作用を持ちます。
  • 臨床症状
  • 血小板減少に伴う出血傾向が認められます。
    出血症状は紫斑(点状出血および班状出血)が主な症状です。ぶつけた覚えもないのにあざが複数個あり、なかなか治らないときや、鼻血や歯茎からの出血が多い時は病院を受診しましょう(急性型は全身状態が良好な小児に突然、出血斑ができることで始まることが多く見られます)。
    口腔内出血(歯肉出血)、鼻出血、下血、血尿、性器出血(月経過多)があります。出血が多いときには鉄欠乏性貧血の症状が現れることがあります。
    なかには血小板が低下していても出血症状の自覚がなく、偶然健康診断などで血小板減少を指摘され、受診する場合もあります。

    通常13~40万ある血小板が10万/μl以下に減少しますが、赤血球・白血球は正常であることが多いようです。血小板数が30,000/μl以上では、健常者と比較して生命予後に大きな差がないことがわかり、無治療で経過を観察するようになってきています。

    他に血小板減少を起す疾患が数種類あったり、全身性エリトマトーデスやエバンス症候群などの合併症として血小板減少が起こることもあり、特発性血小板減少性紫斑病と診断して治療する前に、他の疾患と鑑別するために骨髄検査などを実施します。
  • 診断
  • 認定基準
    (厚生労働省「血液系疾患調査研究班(血液凝固異常症)」により作成された認定基準により診断されています。下記に示します)

    1 自覚症状・理学的所見
    出血症状がある。出血症状は紫斑(点状出血及び斑状出血)が主で、歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、月経過多などもみられる。関節出血は通常認めない。出血症状は自覚していないが血小板減少を指摘され、受診することもある。

    2 検査所見
    (1) 末梢血液
    ① 血小板減少
    血小板100,000/μl以下。自動血球計数のときは偽血小板減少に留意する。
    ② 赤血球及び白血球は数、形態ともに正常。
    ときに失血性又は鉄欠乏性貧血を伴い、また軽度の白血球増減をきたすことがある。
    (2) 骨髄
    ① 骨髄巨核球数は正常ないし増加
    巨核球は血小板付着像を欠くものが多い。
    ② 赤芽球及び顆粒球の両系統は数、形態ともに正常。
    顆粒球/赤芽球比(M/E 比)は正常で、全体として正形成を呈する。
    (3) 免疫学的検査
    血小板結合性免疫グロブリンG(PAIgG)増量、ときに増量を認めないことがあり、他方、特発性血小板減少性紫斑病以外の血小板減少症においても増加を示しうる。

    3 血小板減少をきたしうる各種疾患を否定できる。※

    4 1 及び2 の特徴を備え、更に3 の条件を満たせば特発性血小板減少性紫斑病の診断をくだす。除外診断に当たっては、血小板寿命の短縮が参考になることがある。

    5 病型鑑別の基準
    ① 急性型:推定発病又は診断から6カ月以内に治癒した場合
    ② 慢性型:推定発病又は診断から経過が6カ月以上遷延する場合
    小児においては、ウイルス感染症が先行し発症が急激であれば急性型のことが多い。


    ※ 血小板減少をきたす他の疾患
    薬剤又は放射線障害、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、発作性夜間血色素尿症、全身性エリテマトーデス、白血病、悪性リンパ腫、骨髄癌転移、播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、脾機能亢進症、巨赤芽球性貧血、敗血症、結核症、サルコイドーシス、血管腫などがある。感染症については、特に小児のウイルス性感染症やウイルス生ワクチン接種後に生じた血小板減少は特発性血小板減少性紫斑病に含める。先天性血小板減少症としては、Bernard-Soulier 症候群、Wiskott-Aldrich症候群、May-Hegglin 症候群、Kasabach-Merritt 症候群などがある。
  • 治療
  • 小児の患者さんの場合は、ピロリ菌の関与はほとんどないと考えられていますが、成人の場合は急性、慢性を問わず、尿素呼気試験や便中ピロリ抗原などのピロリ菌検査を行います。
    その結果、陽性だった場合にはピロリ菌除菌療法として、プロトンポンプ阻害薬、クラリスロマイシン、アキモシシリンの3剤を1日2回、7日間服用します。除菌終了後4~8週の間に尿素呼気試験、あるいは便中ピロリ抗原検査を行い、除菌が成功したかどうか判定します。失敗していた場合には二次除菌療法を行い、除菌に努めます。除菌に成功した場合、約6割に血小板増加反応が見られます。除菌の効果は1年以上持続し、血小板減少性紫斑病に対する他の治療を中止できるようになり、再発はほとんど見られません。
    なお、血小板数が10,000/μl未満の場合には、副腎皮質ステロイド療法や免疫グロブリン大量療法などで血小板数10,000/μl以上に増加させてから、除菌治療を行います。


    ピロリ菌に感染していない場合、あるいはピロリ菌を除菌しても血小板が増えない場合、血小板数によって、その後の治療は異なります。
    (1) 血小板数が30,000/μl以上で、出血症状もない場合には、無治療で経過観察します。
    (2) 血小板数が20,000~30,000/μlで、出血症状がない場合は原則的には注意深い経過観察を行います。
    (3) 血小板数が20,000未満の場合、あるいは重篤な出血症状や多発する紫斑、点状出血、粘膜出血がある場合、また血小板数が20,000~30,000/μlであっても出血傾向の有無に関わらず、60歳以上、あるいは高血圧症、あるいは肉体労働など激しい運動をする人の場合には、いくつかの一般的な対応に加え、積極的な治療を行います。
    まず一般的な対応として、出血傾向がある場合は肉体労働や運動などを避け、安静を保ちます。高血圧症などの合併症がある場合は、合併症ののコントロールも並行して行います。また、動脈硬化などに対して処方される抗血小板薬や抗凝固薬は出血症状を悪化させるため、それぞれの患者の状態に合わせて、慎重に対応します。

    治療としてはまず副腎皮質ステロイド療法を行います。治療の目的は抗血小板抗体の産生を抑制すること、脾臓における血小板取り込みを抑制することです。

    ステロイド療法によって、約8割の患者さんは血小板数が30,000/μlに増加し、なかでも5割以上が血小板数10万/μl以上になります。血小板が増加したときはステロイドを少しずつ減らし、可能なら中止します。ステロイドを中止できるのは10~20%程度と報告されています。多くの患者さんはステロイド量を漸減すると再び血小板が減少します。血小板30,000/μlを維持できる程度の副腎皮質ステロイドを飲み続ける維持療法が必要です。
    しかしステロイドを長期間飲み続けると、骨粗鬆症、糖尿病、顔が丸くなる(ムーンフェイス)などの副作用が、一部の患者さんで見られますので治療中には十分な観察が必要です。

    ステロイド治療で効果が見られなかったり、ステロイドの副作用が強く、十分な治療が行えない場合、血小板を壊している脾臓を手術で取る(脾摘)ことがあります。脾摘の施行時期に関しては、診断後6~12ヵ月以降とされています。
    最近では腹腔鏡手術で行われるようになり、開腹手術より傷が小さいため出血のリスクも小さくなります。副脾を残さないようにします。入院期間も短縮されて1週間程度の入院で済みます。有効率は高く、約80%の患者さんに効果を認めますが、約20%が再発し、永続的効果は60%ていどです。

    ステロイド治療も無効で、脾臓摘出手術(脾摘)での効果もない場合、また脾摘を希望しない、あるいは脾摘が医学上困難である場合には、各種の薬物療法を行います。そのひとつ、平成23年度に保険適用となったトロンボポエチン受容体作動薬は特発性血小板減少性紫斑病の病気を治す薬ではなく、血小板を増加させる薬なので、薬を継続して用いる必要があります。またトロンボポエチン受容体作動薬によって、血栓症や血栓塞栓症になる危険もあるので、注意が必要です。
    その他、保険適応外ですが、ダナゾール、ビンカアルカロイド緩速点滴静注療法、デキサメタゾン大量療法、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン)、シクロスポリン療法、リツキシマブ、アザチオプリン、シクロホスファミドなどが効果を示す場合もあります。

    血小板が急激に減少し、全身の出血傾向が強い場合や外科手術時、分娩時などは、一過性ですが効果的に血小板を増加させることができるガンマグロブリン大量療法やステロイドパルス療法を行います。重篤な出血が疑われる場合は血小板輸血も行う場合があります。

    (参照:「難病情報センター」(http://www.nanbyou.or.jp/entry/157)、「成人突特発性小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2012年版」)
  • 経過・予後
  • 急性型の多くは自然寛解します。慢性型には10%程度が移行します。
    慢性型においては20%の患者さんがステロイド治療で寛解します。
    ステロイドに不応症例で脾臓の摘出が行われた場合約60%が寛解します。
    寛解しても再発する場合があるので長期に亘る経過観察が必要になります。
    また、どんな治療法にも抵抗を示す難治例は約10~20%みられます。
    (参照:疾病対策研究会編「難病の診断と治療指針」東京六法出版、平成十七年、P117)
  • ケア
  • 血小板の数が上昇するまでは運動は避け、出血を伴うケガをしないように注意しましょう。
    打撲をした時は患部を冷やし、内出血を止めましょう。
    鼻血が出た場合は出血している場所を鼻の上から押さえたり、氷で冷やしましょう。顔を上に向けると、出血した血液が胃に流れて嘔吐しやすくなるのでやめましょう。
    鼻血が出て、止まらないときは救急車を呼び、隊員の方に「特発性血小板減少性紫斑病」であることを告げてください。
  • 手術
  • 特発性血小板減少性紫斑病では、ステロイド抵抗性や、副作用のためステロイド治療が継続できないにも関わらず出血が続く場合には、外科手術で脾臓を摘出(脾摘)します。

    脾臓は自己抗体による血小板破壊が起こる場所であるため、摘出することで症状が改善されます。脾摘の施行時期は、診断後6ヵ月以降、γ-グロブリンなどを大量投与して血小板を増加した後が一般的です。手術を行う際は、出血が多くなりすぎないよう気をつけるとともに、血小板輸血を行うことがあります。最近では出血の量を減らすために、腹腔鏡下手術が増えているようです。

    また、生命を脅かす危険のある脳出血や重症消化管出血などが起こった場合にも、外科手術が必要となります。
    結果は他の治療法より寛解率が高いようですが、寛解後2年以内に10~20%が再燃するとの報告もあります。
  • 検査
  • 血液検査
    末梢血を採取します。赤血球と白血球は数や形が正常です。貧血はみられませんが、慢性的に出血が続くと鉄欠乏性貧血となることがあります。
    MPV(平均血小板容積)は高値です。また、抗血小板抗体であるPAIgG(血小板関連免疫グロブリンG)も増加します。
     ・血小板数が減少していないかを確認します。
     ・抗血小板抗体の有無を確認します(特発性血小板減少性紫斑病の場合、血小板に対する抗体ができるためです)
     ・凝固検査(PT、APTT)で血液の固まる時間を調べます。血液が固まるためには、血小板以外にも多くの因子が必要ですから血小板以外の因子に異常がないかをこの検査で調べます。特発性血小板減少性紫斑病だった場合、血小板以外は正常なので、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)などの血液凝固系に異常はみられません。
     ・特殊検査 網状血小板、血中トロンボポエチン、抗GP II b/ III a抗体、エリスポット検査も有用ですが、特殊な検査のため、必ずしも多くの施設で行われていません。

    画像検査
    腹部超音波検査などで肝臓や脾臓の腫大の有無などを確認します。

    ピロリ菌検査
    尿素呼気試験(UBT)、便中ピロリ抗原で、ピロリ菌がいるかどうか判定します。最近、ヘリコバクター・ピロリ菌が特発性血小板減少性紫斑病を引き起こす自己抗体の産生を促していると見られており、その場合ピロリ菌除菌が第一選択の治療になります。

    骨髄検査
    診断のために骨髄穿刺・生検は必ずしも必要ではありません。しかし白血病や他の血小板減少を伴う疾患でないことを鑑別する必要があるときは、胸骨や腸骨で骨髄穿刺を行うことが必要です。

    病理検査
    骨髄穿刺・生検検査で、巨核球の数は、正常からやや増加を示します
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