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4月26日(木)
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疾患

  • 定義・概念
  • 再生不良性貧血(aplastic anemia;AA)は、末梢血で赤血球、白血球、血小板のすべてが減少(汎血球減少)し、血液を造りだす骨髄の細胞密度が低下(低形成)することを特徴する疾患です。骨髄に芽球や細網線維の増加がみられないことも診断に必須の条件です。ただ、実際にはこれらの検査所見を示す疾患がたくさんあるので、その中から概念がより明確な他の疾患を除くことによって、初めて再生不良性貧血と診断することができます。

    ※末梢血…上腕の静脈から普通の採血で得られる血液
    ※骨髄芽球…骨髄の造血幹細胞が成熟血球に分化、成熟する過程の若い細胞。白血病細胞は異常な芽球です。
    ※細網線維…細胞などの足場を作っている細い網目状の構造。線維性のコラーゲンによって形成されます
    (参照:「再生不良性貧血治療の参照ガイド(平成22年度改訂版)」(特発性造血障害に関する調査研究班作成、『難治性貧血の診療ガイド』(南江堂、2011年)に収録))
  • 疫学
  • 臨床調査個人票を用いた2006年の解析ではわが国の患者数は約11,000人で、年間新患者発生数は100万人あたり6人前後でした。女性が男性より約1.5倍多く、年齢別には男女ともに20歳代と60~70歳代にピークがありました。発生率は欧米諸国と比べ2~3倍ありますが、日系米国人での発生率は現地の白色人種のものと変わらないことから、この差は遺伝的素因ではなく環境の違いによるものと考えられています。
    (参照:「再生不良性貧血治療の参照ガイド(平成 22年度改訂版)」(『難治性貧血の診療ガイド』、P.12-13))
  • 自立率
  • 平成10年度の厚生省の推計(平成7年度の調査をベースに推計)によると、再生不良性貧血の患者数は9,762人。このうち自立している方は86.0%、一部介助の方は10.6%、全面介助の方は3.4%という割合になっています。
    (難病対策研究会監修『平成19年度版難病対策提要』太陽美術、P.414)
  • 成因
  • 再生不良性貧血は、成因によって「先天性」、「後天性」に分けられます。
    先天性の再生不良性貧血のうち最も頻度が高いのがFanconi貧血です。Fanconi貧血は常染色体劣性の遺伝性疾患で、骨髄低形成に加えて骨格系の奇形、低成長、性腺機能不全などが特徴で、悪性腫瘍を合併しやすいことが知られています。通常は14歳までに発症しますが、中には30歳過ぎに発症する例もあります。また、ほとんど奇形を認めない例もあるため、小児の再生不良性貧血の診断にはFanconi貧血を否定すべく、染色体の検査が必要になります。
    後天性の再生不良性貧血には、原因不明の特発性(一次性)と、様々な薬剤・放射能被爆・化学物質(ベンゼンなど)による二次性があります。
    これまでの研究により、特発性では造血幹細胞が減少する機序として、造血幹細胞自身の質的異常と免疫学的機序による造血幹細胞の傷害の2つが重要と考えられています。
    特殊な再生不良性貧血には、肝炎後に発症する「肝炎後再生不良性貧血」と発作性夜間ヘモグロビン尿症に伴うもの(再生不良性貧血-PNH症候群)があります。

    ※発作性夜間ヘモグロビン尿症…赤血球が血管内で補体により破壊されておこる溶血性貧血で、早朝のヘモグロビン尿を特徴とします。
    (参照:「再生不良性貧血治療の参照ガイド(平成 22年度改訂版)」(『難治性貧血の診療ガイド』、P.13-15))
  • 臨床症状
  • (1)自覚症状
    労作時の息切れ・動悸・めまい等の貧血症状、皮下出血斑・歯肉出血・鼻出血等の出血傾向が主な症状です。好中球減少が強い例で感染症を合併した場合には発熱がみられます。軽症・中等症例でゆっくり発症した場合には無症状のこともあります。
    ※好中球…白血球の一種。末梢血中の白血球の中で最も数が多く、白血球の4~6割を占めます。

    (2)他覚症状
    顔面蒼白、下まぶたの眼球側の結膜(眼瞼結膜)の貧血様所見(白っぽくみえる)、皮下出血、歯肉出血が見られます。また、血小板の減少が大きい時には、眼底出血を認めることがあります。
  • 診断
  • 再生不良性貧血の診断基準(平成22年度改訂)

    1. 臨床所見として、貧血、出血傾向、ときに発熱を認める。

    2. 以下の3項目のうち、少なくとも二つを満たす。
       ①ヘモグロビン濃度;10.0g/dl未満 ②好中球;1,500/μl未満 ③血小板;10万/μl未満

    3. 汎血球減少の原因となる他の疾患を認めない。汎血球減少をきたすことの多い他の疾患には、白血病、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、巨赤芽球性貧血、癌の骨髄転移、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、脾機能亢進症(肝硬変、門脈圧亢進症など)、全身性エリテマトーデス、血球貪食症候群、感染症などが含まれる。

    4. 以下の検査所見が加われば診断の確実性が増す。
     1) 網赤血球増加がない。
     2) 骨髄穿刺所見(クロット標本を含む)で、有核細胞は原則として減少するが、減少がない場合も巨核球の減少とリンパ球比率の上昇がある。造血細胞の異形成は顕著でない。
     3) 骨髄生検所見で造血細胞の減少がある。
     4) 血清鉄値の上昇と不飽和鉄結合能の低下がある。
     5) 胸腰椎体のMRIで造血組織の減少と脂肪組織の増加を示す所見がある。

    5. 診断に際しては、1.、2.によって再生不良性貧血を疑い、3.によって他の疾患を除外し、4.によって診断をさらに確実なものとする。再生不良性貧血の診断は基本的に他疾患の除外によるが、一部に骨髄異形成症候群の不応性貧血と鑑別が困難な場合がある。
  • 治療
  • 1.支持療法
    病気の根本的な治療ではなく、その症状を改善するための治療を指し、具体的には以下のような治療が行われます。

    (1)輸血
    貧血や血小板減少の程度が強い場合、あるいはそれに伴う中等度以上の臨床症状を認める場合に輸血が行われます。
    [1]赤血球輸血
    患者の自覚症状に応じて、ヘモグロビンを7g/dl以上に維持するように白血球除去赤血球を輸血します。
    [2]血小板輸血
    予防的な血小板輸血は抗HLA抗体の産生を促すため、明らかな出血傾向がなければ血小板数が1万/μl以下であっても通常輸血は行いません。
    [3]顆粒球輸血
    好中球数が500/μl以下で感染症を併発している場合には好中球を増加させる「顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)」の投与が行われますが、全く反応が見られない劇症型再生不良性貧血では沈静化のために顆粒球輸血が検討されます。顆粒球の採取を目的として健常人に「G-CSF」を投与することは保険適用外であり、また採取にあたっては日本造血幹細胞移植学会が認定した施設で行われることが望ましいとされています。

    (2)造血因子
    好中球数が500/μl以下の場合には重症感染症の頻度が高いので「G-CSF」の投与が行われますが、効果は通常一時的です。一部の例で赤血球輸血の頻度を減らす効果があると示されている「エリスロポエチン」(赤血球を増やすホルモン)は保険適用外です。

    (3)鉄キレート療法
    支持療法として赤血球を頻繁に輸血されている患者さんの場合、血中に余分な鉄が蓄積されて、ヘモクロマトーシスを発症するおそれがあります。鉄過剰症の治療には経口鉄キレート剤が用いられます。2008年より使用が可能となった「デフェラシロクス」は10~30mg/kgを1日1回内服するだけで数10mgの余剰鉄が便中に排泄され、鉄過剰症が効率よく改善されます。
    ※ヘモクロマトーシス…鉄の代謝異常による疾患であり、全身の臓器に鉄が過剰に沈着して臓器障害をきたす病気。

    2.造血回復を目指す療法

    (1)免疫抑制療法
    造血幹細胞を傷害しているリンパ球を抑えて造血を回復させる治療法です。抗胸腺細胞グロブリン(ATG)とシクロスポリン(CsA)いう薬が使われます。

    (2)蛋白同化ステロイド療法
    主に造血幹細胞に直接作用してその増殖を促すと考えられている蛋白同化ステロイドを投与します。

    (3)造血幹細胞移植
    骨髄移植は、患者さんの骨髄細胞を他の人の正常な骨髄細胞と取り換える治療法です。白血球の型のあった兄弟姉妹あるいは骨髄バンクの骨髄提供者から骨髄細胞をもらい末梢血管から投与します。
    臍帯血移植は、出産時に排出される胎盤の血に含まれる造血細胞を移植します。骨髄移植では患者さんとドナーの白血球にある6個の抗原(HLA抗原)が全て一致することが求められますが、臍帯血移植では4~6抗原一致のドナーからでも提供が受けられます。ただ、これまでの国内外での移植成績は悪く、その多くが生着不全(拒絶の一種とも考えられます)に終わっています。よってまずは免疫抑制療法あるいは骨髄移植による治療が優先され、何らかの理由でこれらの治療が無効あるいは受けられない場合に考慮されます。
    (参照:日本さい帯血バンクネットワークHP「さい帯血移植を知っていますか」)
    末梢血幹細胞移植は最近開発された移植法で、末梢血から造血細胞を取り出して移植します。処理血液量を増やすことによって十分な移植細胞数を確保できるメリットから、使用頻度が増えつつあります。しかし、骨髄移植に比べると生存率が低い傾向がみられることから、日本造血細胞移植学会では(1)ドナーの骨髄採取が困難な場合、(2)ドナーの体重が患者体重と比較して著しく軽い場合、(3)移植後早期に重症感染症を発症する可能性が極めて高い場合、などを除き、再生不良性貧血に対する移植には末梢血幹細胞ではなく骨髄を用いるべきであるという見解を示しています。
    (参照:日本造血細胞移植学会「造血細胞移植ガイドライン 再生不良性貧血(成人)(2010)」)

    再生不良性貧血の治療は重症度(ステージ)によって、きめ細かく行われます。

    再生不良性貧血の重症度基準は以下の通りです。
    ・ステージ1(軽症)
    下記以外

    ・ステージ2(中等症)
    以下の2項目以上を満たす
    網赤血球;60,000/マイクロリットル未満
    好中球;1,000/マイクロリットル未満
    血小板;50,000/マイクロリットル未満

    ・ステージ3(やや重症)
    以下の2項目以上を満たし、定期的な赤血球輸血を必要とする
    網赤血球;60,000/マイクロリットル未満
    好中球;1,000/マイクロリットル未満
    血小板;50,000/マイクロリットル未満

    ・ステージ4(重症)
    以下の2項目以上を満たす
    網赤血球;20,000/マイクロリットル未満
    好中球;500/マイクロリットル未満
    血小板;20,000/マイクロリットル未満

    ・ステージ5(最重症)
    好中球200/マイクロリットル未満に加えて、以下の1項目以上を満たす
    網赤血球;20,000/マイクロリットル未満
    血小板;20,000/マイクロリットル未満

    (1)ステージ1、2の場合
    血球減少が進行せず、血小板数が50,000/マイクロリットル以上で安定している患者さんは、無治療で経過観察します。再生不良性貧血には自然治癒も起こりうるので、経過観察が望ましいのです。ただし、血球進行のない例でも、血小板減少傾向が優位であり、骨髄巨核球が減少しているタイプの場合、状況が許せば3~4ヶ月「シクロスポリン」(CsA、このステージでは保険適用外)を投与し、反応の有無をみることが勧められます。
    血球減少が進行するか、汎血球減少が安定していても血小板数が50,000/マイクロリットル以下に低下している患者さんには、シクロスポリン(このステージでは保険適用外)4~5mg/Kgまたは蛋白同化ステロイド「酢酸メテノロン」 (プリモボラン)10~20mg/Kgを投与します。患者さんがあえて治療を希望しない場合には、ステージ3まで無治療で経過をみてもいいですが、免疫抑制療法の場合、治療が遅れることによって治療効果が下がる可能性があることを患者さんに説明する必要があります。また、プリモボランには多毛、色素沈着、嗄声、無月経などの男性化作用があるため、女性への投与の際には十分な事前説明と同意が必要になります。

    (2)ステージ3以上の場合
    ステージ3~5の患者さんで40歳未満の場合、血縁者からの骨髄移植では生存率が86~100%なので、骨髄移植療法が第一選択の治療になります。白血球の型(HLA)の合う兄弟姉妹がいない場合には、ATGとシクロスポリンの併用療法が選択されます。ATGは、ヒトの胸腺細胞でウサギを免疫することによって得られた一種の血液製剤で、強力な免疫抑制作用があります。シクロスポリンと併用するとより高い効果が得られますので、血球数が回復傾向にある間は併用を続け、血球数の低下が見られなくなったらシクロスポリンの量を減らしていきます。
    ATGを使用する際には、異種蛋白に対するアレルギー反応を抑えるためにメチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンという副腎皮質ステロイドが短期間併用されます。
    なお、免疫抑制療法の場合には再発や、骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病への移行などの問題があります。
    40歳以上の患者さんでは、移植に伴う合併症のために生存率が40%にとどまっているため、免疫抑制療法が第一選択の治療法です。これによって約70%の患者さんが改善し輸血が不要となります。
    骨髄移植療法

    (1)ドナーの確保と骨髄液の採取
    骨髄提供者(ドナー)を選ぶにあたっては、まずHLAが一致する兄弟姉妹がいるかどうか調べます。患者と提供者のHLAが一致する確率は、兄弟姉妹で1/4、あかの他人で1/100~1/数万といわれています。血液型は違っても提供は可能です。ドナーの健康状態が良好ならば、全身麻酔下で骨髄採取を行います。この後の処理は血液型の一致、HLAの一致の度合いによって若干異なります。

    (2)移植前処置
    移植を受ける前に、患者さんの造血組織を根絶する必要があります。我が国では、抗がん剤シクロホスファミドの投与と全身リンパ節照射の組み合わせが多く用いられます。

    (3)免疫抑制剤の投与
    骨髄移植によって提供されたドナーのリンパ球が患者さんの全身組織を攻撃しないように、あらかじめ患者さんに免疫抑制剤が投与されます。

    (4)骨髄液の注入(幹細胞輸注)

    (5)ドナー細胞の生着
    移植された骨髄は10日から2週間で正常な血液を作り始めます。

    (参照:「再生不良性貧血治療の参照ガイド(平成22年度改訂版)」(『難治性貧血の診療ガイド』に収録))
  • 経過・予後
  • 軽・中等症の中には、汎血球減少があってもまったく進行しない例や自然に回復する例があります。かつては、重症例は汎血球減少が進行して、支持療法のみでは半年で50%が死亡するとされていました。最近では、抗生物質、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、血小板輸血などの支持療法が発達し、免疫抑制療法や骨髄移植が発症後早期に行われるようになったため、約7割が輸血不要になるまで改善し、9割近くに長期生存が期待できるようになりました。ただし、好中球数0の劇症型で感染症がコントロールできない成人患者さんでは、免疫抑制療法が施行できないまま感染症で亡くなるケースが多いです。
  • ケア
  • 好中球が少ない時は感染に、血小板の少ない時には出血に注意します。
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